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▲構造色の羽毛をもつカワセミ

2月15日に、2020年2月のテーマトークを開催しました。今回は、山階鳥類研究所自然誌研究室・保全研究室研究員の森本元さんに、「鳥の色彩と構造色」と題してお話しいただきました。

鳥は、視覚とともに色覚の発達した生物であると考えられており、私たちに見えない紫外線も見えるため、4原色で世界を見ています。鳥の持つ色はさまざまで、カワセミのようにキラキラした青色の鳥もいれば、オオバンのように全身黒色の羽色を持つ鳥もいます。

鳥の多様な羽色を形作っている要素は2つに分けられます。光が当たった時に吸収されなかった色の光が反射して見える色素色(しきそしょく)と、細かい構造によって強調された色の光が見える構造色(こうぞうしょく)です。たとえば、牛乳の白は、脂肪分のコロイド粒子によって光の散乱が起こっていることで見える構造色です。構造色はさまざまな生き物で見られますが、たとえば昆虫ではカラスアゲハやタマムシなどのキラキラ光る翅の色は構造色です。

鳥の色素は、ほとんどがメラニン(黒・茶色系)とカロテノイド(黄・赤系)で構成されています。一方で、青や紫などのそれ以外の色は、ほとんどが構造色によって見えています。

鳥の羽毛の青色の構造色には、カワセミのようにキラキラ光る虹色の構造色と、コルリやイソヒヨドリのように非虹色のものがあります。これらにはなぜこのような違いがあるのかを、詳しく説明していただきました。

青色の構造色だけでも、羽毛の羽枝や小羽枝にある構造の種類によってさまざまなパターンがあるそうです。たとえば、カラス類やドバトの首の金属光沢は、ケラチンが形作る膜構造による干渉が原因ですが、カワセミの青色の羽毛は、スポンジ構造によって青色が強調されていることが原因であることが、電子顕微鏡での構造研究や光の研究から明らかになっているそうです。

また、色素であるメラニンの配置によって構造色が見える場合もあり、クジャクの青色の羽毛はそのような構造で作られているそうです。森本さんたちのグループは、そのような点に着目し、人工的にメラニンの配列を調整することで、様々な色の構造色を実際に作り出すことに成功されました。自然の性質を知ることで、新しい技術が生み出される可能性についても知ることができました。

今回は、40名の方にお集まりいただきました。ご参加いただいたみなさま、お話しいただいた森本さん、ありがとうございました。