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2022年10月1日(土)に、令和4年度の鳥博セミナーをオンライン配信にて開催しました。今回は「カモとハクチョウの冬の暮らし」と題して、公益財団法人宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団の嶋田哲郎さんにお話しいただきました。

カモ科の鳥の仲間は体の大きさの異なる3つのグループにおおまかに分けることができます。小さいカモ類、中型のガン類、大型のハクチョウ類です。国内ではカモ類とハクチョウ類は比較的広い地域に渡来しますが、ガン類の飛来する地域は限定されます。今回は、カモ類とハクチョウ類の渡り、冬の暮らし、人とのかかわりについてお話しいただきました。

カモ科の鳥は公園の池などの身近なところにも飛来し、採食の行動をじっくり観察することができます。また、カモ類はカルガモを除き雌雄で羽の色が大きく異なり、冬につがいを形成することから求愛行動なども観察しやすいグループです。

冬に日本に渡来するハクチョウ類やカモ類は、どこからどのように日本にやってくるのでしょうか? 嶋田さんたちは、国内の越冬地で捕獲した鳥に発信機を装着し、彼らの繁殖地や渡りの経路を調査しました。その結果、オオハクチョウとコハクチョウでは繁殖地の緯度が異なり、前者はタイガ地帯の川の中流域、後者は北極海沿岸のツンドラ地帯で繁殖すること、両種の中継地や渡り経路はよく似ていることを発見されました。また、オナガガモやヒドリガモはマガモに比べて高緯度の地域まで渡りを行うことも確かめられました。

越冬期の生活についても、宮城県北部のフィールドで発信機を装着して調査を行われました。マガモやカルガモは昼間は沼で休息し、夜間になると周辺の水田や水路に飛んで行って採食すること、オナガガモでは年によっては給餌場所に夜も留まるものがいることがわかりました。オオハクチョウはハスの地下茎(レンコン)を好むため、一日中沼の中で採食していますが、水位が高くなってレンコンを採食しづらくなると、周囲の水田で落穂を食べることがわかりました。沼の水位が低く、多くのオオハクチョウがレンコンを食べた翌年夏には、ハスの群落が衰退し、沼の水質が改善したこともあったそうです。

湖沼の中に水草や魚などの餌があるかどうかが、その場所にいるカモ類の種構成を決めているため、沼のカモ類は環境の指標となります。伊豆沼では、カモ類のほとんどが沼の外で採食するマガモなどの種類で、沼の中で水草を食べるヒドリガモ、魚を食べるミコアイサの数は少ない状況が続いています。後者の個体数の減少には、外来生物であるオオクチバスによる小魚の捕食を通じた餌の減少が影響していると考えられており、実際に駆除によってオオクチバスが減ると、ミコアイサの個体数は回復に転じたそうです。

国内でも鳥インフルエンザへの対策のために、2000年代から感染リスクを増大させる野生の鳥への餌づけが制限されるようになりました。嶋田さんたちは、科学的な対策のために、餌づけが鳥たちにとってどのような影響を与えるのかを調査されました。給餌される餌のエネルギーと、鳥の個体数と体重から算出した代謝エネルギーの量を比較すると、厳冬期には餌づけだけでは消費カロリーをまかなえていないことがわかりました。このデータをもとに、餌づけの量をおよそ8割削減して餌場からの分散を促し、消毒などの措置を併せて実施することで、鳥インフルエンザの対策を行っているとのことです。

講演のあとには、カモがハクチョウの糞を食べる際の周辺の状況や、コロナ禍における観光客の減少による餌づけ量の変化、農耕の歴史とカモ類の個体数の変化などについて質問が寄せられ、嶋田さんにお答えいただきました。
今回の鳥学講座は、最大同時に88人の方にご視聴いただきました。お話しいただいた嶋田さん、ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。

今回の講演は10月15日(土)まで、鳥の博物館のYoutubeチャンネルにて見逃し配信を行っています。ご興味があるけれど見逃した方や、もう一度見たい方は以下のリンクからご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=o5glB9aM1Q8

企画展「手賀沼の鳥 ―環境と水鳥 いま・むかし―」では、今回ご紹介いただいたカモ科の鳥を含む手賀沼の水鳥たちの個体数の移り変わりについて展示しています。11月27日(日)までの開催ですので、ぜひ鳥の博物館にもお越しください。


参考資料
・今回の講演のレジュメ(PDF直リンク)
https://www.city.abiko.chiba.jp/bird-mus/gyoji/event/index.files/torihaku_seminar202210.pdf

・知って楽しいカモ学講座 −カモ、ガン、ハクチョウのせかい−
https://www.midorishobo.co.jp/SHOP/1598.html
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投稿者: odaya
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△捕獲許可を得て巣から取り出したモズの卵

8月20日に、2022年8月の「鳥のサイエンストーク」を実施しました。これまでと同様にYoutube liveを用いたライブ配信で行いました。今回は、山階鳥類研究所専門員の千田万里子さんに「鳥にまつわる法律のハナシ」と題してお話しいただきました。今回のお話は、2016年7月に対面の催しでお話しした内容の再演です。

落ちている鳥の羽を拾う、けがをしている鳥を保護する、巣を撤去したい、など「この行為はやってもいいのかな?」と迷うような具体的な事例を挙げていただき、その背景となる法律について解説していただきました。

日本で鳥の保護や管理にかかわる法律は大きく分けて3つあります。
(1)鳥獣保護管理法
鳥獣保護法では、野鳥は勝手に捕獲してはいけないこと、巣や卵の捕獲行為には許可申請が必要なことが定められています。狩猟の期間や対象となる鳥獣について定められているのもこの法律です。傷ついた野鳥を保護したりする場合は、まず都道府県等の担当部署に連絡をして許可を得ることが望まれます。

(2)種の保存法
国際的に野生動物の取引を規制するワシントン条約の国内法です。この該当種の羽毛を拾った場合、他の人に譲ったりすると違法となってしまいます。該当する種の死体などを見つけた際には、死因の究明などのため、担当する環境省の地方環境事務所に連絡してほしいとのことでした。

(3)文化財保護法
この法律によって天然記念物または特別天然記念物に指定されている種を捕獲したり、対象種の巣を撤去したりする場合には、文化庁の許可が必要となります。

加えて、各地方自治体などが独自に条例で保護を定めている場合もあるそうです。また、対応の方法が微妙に異なることもあるので、詳しくは該当する市町村や都道府県の担当部署に問い合わせるのが最も確実とのことです。
講演のあとに、防鳥ネットに鳥がかかってしまっている場合の対応方法、狩猟期間に捕獲した鳥獣を飼養することの問題点などについて、視聴者の皆さんからのご質問をいただき、千田さんにお答えいただきました。

今回のオンライン講演は、最大同時に106人の方に視聴いただきました。ご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。今回は、9月3日(土)まで見逃し配信を行います。配信したURLと同一の以下のリンクよりご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=BnTMegXBink&t=6s

9月は鳥のサイエンストークはお休みです。次回、2022年10月の鳥のサイエンストークは、鳥の博物館の小田谷が、鳥の博物館が手賀沼周辺で行っている鳥類調査についてお話しします。配信方法などについては、山階鳥類研究所・我孫子市鳥の博物館ウェブサイトで改めてご案内します。次回もぜひご視聴ください。
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投稿者: someya
 7月30日の土曜日に事前申込制のイベント「手賀沼の魚をみよう」を実施しました。コロナ禍で定員は以前より少なく設定していますが、17名の方にご参加いただきました。夏場のイベントなので、館内であらかじめスケジュールや生き物のお話をしてから外に出ました。
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▲観察できる可能性のある魚と水草の今昔(昔:ガシャモク/今:ナガエツルノゲイトウ、オオバナミズキンバイなど)をお話しました
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▲手賀大橋をバックに釣りスタート
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▲短時間でモツゴ(写真左)、オイカワ(写真右)、タイリクバラタナゴが釣れました。
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▲次はあらかじめ仕掛けておいたもんどりを回収。桟橋の老朽化によりスタッフだけでの回収にしました
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▲もんどりにはたくさんの魚が入っていました
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▲モツゴ大漁。おっと、タモロコも混ざっていますね
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▲仕分けして特徴や見分けるポイントをお話しました。モツゴとタイリクバラタナゴが圧倒的に多く、タモロコ、スジエビなど、他にミニ手賀沼でカダヤシなどを採集しました。
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▲魚と遊んだら元の場所に返しました。また遊ぼうね。
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投稿者: someya
 7月の第4日曜日は「親子の日」です。親子の日に合わせて、今年は我孫子市でイベントが開催されました。鳥の博物館からはミュージアムショップと工作の2つのブースを出店しました。会場のアビスタは来場者で賑わっていました。暑い日で大変な中、鳥博スタッフも力を合わせて頑張りました。
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▲我孫子市では初めて開催された親子の日イベント
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▲鳥博ミュージアムショップのグッズを販売しました
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▲実物大のつばさうちわの工作ブース
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▲スタートと同時にたくさんの方が来てくれました。参加者総数は137名でした。混み合っている時は写真が撮れず、一段落してからの撮影です。
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▲掲示物を貼って鳥博をPR
 暑い中、鳥博ブースをのぞいてくださったみなさま、ありがとうございました。夏休み期間を利用して鳥の博物館にも遊びにきてくださいね。
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 鳥の博物館の目の前にある手賀沼親水広場内には手賀沼を模した「ミニ手賀沼」があります。毎年7月、ミニ手賀沼にどんな生き物がいるのか調べることと、手賀沼では絶滅してしまったガシャモクという水草を植えるイベントが開催されています。今年もお手伝いで参加してきました。
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暑い中、いざ生き物採集スタート
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私はみなさんが採集してきた生き物を預かり、種類ごとに仕分けました
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最後はミニ手賀沼内にガシャモクを植えました
 ミニ手賀沼にガシャモクを植えて繁茂することもありますが、いつの間にかなくなってしまいます。ガシャモクは透き通った黄緑色の葉が特徴のキレイな水草です。ガシャモクでいっぱいになったミニ手賀沼を楽しみに待ちたいと思います。
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△かつて南鳥島で繁殖していたカツオドリ。

7月16日に、2022年7月の「鳥のサイエンストーク」を実施しました。これまでと同様にYoutube liveを用いたライブ配信で行いました。今回は、山階鳥類研究所研究員の小林さやかさんに「明治期の標本が語る―南鳥島の話」と題してお話しいただきました。

南鳥島は小笠原諸島に属する日本最東端の島で、1896年(明治29年)から人が移住し、グアノ(鳥の糞が堆積してできたもので、リンが多く含まれるため肥料として使われていた)や鳥類の剥製・羽毛の輸出などが行われていました。しかし、1902年(明治35年)7月にアメリカの帆船「ワーレン号」が領有を目的にハワイから南鳥島に向けて出港しました。これを察知した日本政府は軍艦「笠置」を派遣して海軍兵を南鳥島に配置し、ワーレン号を退けました。これを南鳥島事件といいます。

山階鳥類研究所の収蔵庫からは、この時期に南鳥島で採集され、東京帝室博物館(現在の東京国立博物館)に寄贈された標本が合計26点見つかりました。これらは、南鳥島事件で派遣された海軍軍人の秋元秀太郎と、南鳥島で剥製業を営んでいた上滝七五郎が東京帝室博物館へ寄贈したものでした。秋元は「南鳥島事件」で派遣された1902年7月から8月に標本を入手し、上滝は南鳥島で剥製業を開始した1900年から、標本を寄贈する1902年10月までに標本を入手したと推定されます。

再発見されたこれらの標本には、採集地がラベルに記載されていないものが10点含まれていましたが、小林さんは、帝室博物館の台帳と照合することで、標本の採集情報を復元し、学術的な価値を高める研究に取り組まれました。また、種が不明だった9点についても再同定を行われました。

この調査の結果、帝室博物館の南鳥島産の鳥類標本には11種が含まれることがわかりました。この中にはコミズナギドリやシロアジサシなど、現在の日本に繁殖地が知られていない種や、オナガミズナギドリやカツオドリなど、現在は南鳥島では絶滅してしまった種の標本が含まれることもわかりました。これまで知られている他の調査結果と併せて、当時の南鳥島の鳥類相がいかに豊かだったかの証拠となる貴重な標本群であることが分かったそうです。

講演のあとに、鳥類の剥製は現地で製作されていたのかや、南鳥島で行われた他の調査がなかったかどうかなどについて、視聴者の皆さんからのご質問をいただき、小林さんにお答えいただきました。今回のオンライン講演は、最大同時に62人の方に視聴いただきました。ご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。今回は、7月30日(土)まで見逃し配信を行います。配信したURLと同一の以下のリンクよりご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=L0BtBomyb5g

次回、2022年8月の鳥のサイエンストークは、山階鳥類研究所研究員の千田万里子さんに、野生の鳥にまつわる法律についてお話しいただきます。配信方法などについては、山階鳥類研究所・我孫子市鳥の博物館ウェブサイトで改めてご案内します。次回もぜひご視聴ください。

参考資料:
小林さやか・加藤 克 (2022) 明治期の南鳥島産鳥類標本の情報復元.山階鳥類学雑誌 54(1): 103-139.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jyio/54/1/54_103/_article/-char/ja

*7/21に内容の修正を行いました。
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投稿者: odaya
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△標識足環を装着されるハマシギ(許可を得て捕獲されたものです)。

6月18日に、2022年6月の「鳥のサイエンストーク」を実施しました。これまでと同様にYoutube liveを用いたライブ配信で行いました。今回は、山階鳥類研究所研究員の齋藤武馬さんに「日本に渡ってくるハマシギはどこから来るのか?―DNA分析から繁殖集団を推定する―」と題してお話しいただきました。

ハマシギはチドリ目シギ科のうち小型の鳥で、日本では繁殖しておらず、渡りの途中で立ち寄ったり、越冬のためにやってくる渡り鳥です。国内で越冬しているシギ・チドリの中では最も数が多く、国内で3万羽程度が越冬していますが、その個体数は減少しているといわれています。ハマシギは北半球に広く繁殖分布し、10ほどの亜種に分けられています。そのため、それぞれの亜種がどこからどこに渡っているのかを調べることが、保全上の重要な課題となっています。

山階鳥類研究所では、環境省の委託を受けてシギ・チドリ類の渡り経路の追跡調査を進めています。これまでの研究で、日本国内で越冬するハマシギの多くはアラスカで繁殖する亜種キタアラスカハマシギであることがわかっています(参考資料の2019年5月のテーマトークの報告をご覧ください)。さらに、分布域からはユーラシア大陸で繁殖する別の3亜種(亜種ハマシギ、亜種カムチャッカハマシギ、亜種カラフトハマシギ)が渡来している可能性があることが指摘されています。しかし、ハマシギの亜種による羽色の違いは夏羽でしか明瞭ではないため、越冬期の国内での亜種の識別は容易ではなく、DNAを用いた解析が待たれていました。

国内や周辺地域で捕獲されたハマシギから採集されたサンプルについて、ミトコンドリアDNAのD-loop領域の配列を比較してみると、大きく分けて3つのグループに分けられました。(1)亜種キタアラスカハマシギのグループ、(2)亜種カラフトハマシギと亜種カムチャッカハマシギからなるグループ、(3)亜種カムチャッカハマシギと亜種ハマシギからなるグループです。このうち、国内で越冬していた多くの個体は(1)のグループに含まれましたが、渡り時期には(3)のグループに含まれる個体も見つかりました。(2)のグループに含まれる個体は、今回の解析では見つかりませんでした。

以上のことから、フラッグによる調査で分かっていた結果と同様に、国内で越冬するハマシギの多くは亜種キタアラスカハマシギである可能性が高いことが確認されました。また、亜種ハマシギや亜種カムチャッカハマシギも渡来の可能性があることがDNAによる解析結果からも示唆されました。しかし、今回調べた領域では、そもそも繁殖地で採取された同じ亜種のサンプルの中にも複数の遺伝子のタイプが見つかっているため、亜種についてははっきりとした結論を出すことができなかったとのことです。今後、さらに詳細な遺伝的な解析が進められれば、はっきりしたことがわかるかもしれません。

講演のあとに、遺伝的な解析手法や、亜種キタアラスカハマシギ以外の亜種の越冬する場所などについて、視聴者の皆さんからのご質問をいただき、齋藤さんにお答えいただきました。今回のオンライン講演は、最大同時に87人の方に視聴いただきました。ご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。今回は、主催者側の都合により見逃し配信は行いません。見られなかった方には申し訳ありませんが、ご理解いただけますよう、よろしくお願いいたします。

次回、2022年7月の鳥のサイエンストークは、山階鳥類研究所研究員の小林さやかさんに、日本最東端の島である南鳥島で採集された鳥類標本についてお話しいただきます。配信方法などについては、山階鳥類研究所・我孫子市鳥の博物館ウェブサイトで改めてご案内します。次回もぜひご視聴ください。

参考資料:
2019年5月のテーマトーク「日本に渡ってくるハマシギの亜種はどれ?」
http://strix.in/blog/index.php?itemid=685

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△発信器付き首環を装着されたカリガネ(右)とマガン

5月21日に、2022年5月の「鳥のサイエンストーク」を実施しました。これまでと同様にYoutube liveを用いたライブ配信で行いました。今回は、山階鳥類研究所研究員の澤 祐介さんに「潮目が変わる!?ガン類追跡の今」と題してお話しいただきました。

ガン類はカモ目カモ科のうち中型の鳥で、日本には越冬のためにロシアなどから飛来する渡り鳥です。日本を含む東アジアには9種が生息しており、日本にはそのうちマガン、ヒシクイ、コクガンが比較的広い範囲に渡来し、シジュウカラガン、ハクガン、カリガネが局地的に渡来します。サカツラガン、ハイイロガン、インドガンは国内で定期的に越冬する群れは知られていません。

澤さんたちが調査を始めるまでに、国内で越冬する個体の渡り追跡が行われてきたのはマガン、ヒシクイ、コクガンの3種で、首環や発信機による追跡調査によって繁殖地、中継地や春の渡り経路などが明らかにされてきました。これに加えて、近年では次の3つのポイントをきっかけに、日本国内でのガン類の渡り追跡の研究が大幅に進展しているそうです。

(1)追跡機器の進化
これまではガン類の追跡には衛星発信機が主に使用されてきましたが、これは衛星通信の使用料がかかり、少数の個体しか追跡できませんでした。近年では携帯電話の通信網を利用した発信機が普及しており、比較的安価に多くの個体を追跡することができるようになりました。また、アンテナが内臓されているため、ガン類に装着した発信機を壊されにくくなったこともメリットだそうです。

(2)中国の研究者による大規模追跡研究
近年、中国の研究者によって東アジアの各種の追跡研究が発表され(以下の参考資料をご参照ください)、これによって日本で取り組むべき課題(カリガネの日本での越冬個体群の追跡や、ユーラシア大陸ではほとんど越冬しないシジュウカラガンやハクガンの追跡)が明確になったそうです。

(3)希少なガン類の個体数回復
カリガネ、ハクガン、シジュウカラガンの個体数はかつては非常に少ない状況が続いていましたが、特に後者2種は積極的な再導入活動や保全によって日本に渡来する個体数が大幅に回復しました。そのため、現実的に捕獲を行って追跡できる見通しが立ってきたとのことです。

このような状況を受けて、澤さんたちのグループでは2017年からコクガン、2020年からカリガネとマガン、2021年からハクガンとシジュウカラガンの追跡を開始しました。その結果、コクガンの繁殖地やこれまで知られていなかった黄海の越冬地の特定、カリガネの繁殖地や渡り経路の特定などの成果をあげられたそうです。ハクガンとシジュウカラガンは携帯電話の電波網の圏外に出たことによって現在の位置情報は不明となっていますが、秋になって電波の圏内に南下してくれば、繁殖地や渡り経路のデータが得られるだろうとのことです。これらの種の繁殖地や渡り経路が判明するのが結果がとても楽しみです。

講演のあとに、コクガンの黄海の越冬地での利用環境や、首環や発信機をかわいそうだと思う人にどのように説明しているかについて、視聴者の皆さんからのご質問をいただき、澤さんにお答えいただきました。今回のオンライン講演は、最大同時に101人の方に視聴いただきました。ご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。今回のライブ配信は、6月4日(土)まで以下のURLより見逃し配信を行います。
https://www.youtube.com/watch?v=gtD5C1kdFfY

次回、2022年5月の鳥のサイエンストークは、山階鳥類研究所研究員の齋藤武馬さんに、日本に渡来するハマシギの亜種について、DNAを用いて推定した研究についてお話しいただきます。配信方法などについては、山階鳥類研究所・我孫子市鳥の博物館ウェブサイトで改めてご案内します。次回もぜひご視聴ください。

参考資料:
希少ガンのシンポジウム(2021年1月30日に開催されたもので、Youtubeで視聴できます)
https://www.youtube.com/watch?v=7eQ9rCozLEI

Wildfowl 2020年特別号 東アジアのガンカモ類の渡り(それぞれの英語論文をどなたでも見ることができます)
https://wildfowl.wwt.org.uk/index.php/wildfowl/issue/view/300
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2022年5月8日(日)に、Enjoy手賀沼!と併せて、第33回バードウィーク手賀沼探鳥会を実施しました。この観察会は、山階鳥類研究所の後援をいただき、我孫子野鳥を守る会と我孫子市鳥の博物館が共催で開催しているものです。2020年と2021年*は新型コロナウイルスの感染防止のため残念ながら探鳥会は中止となりましたので、今回は3年ぶりの開催となりました。

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▲集合場所のようす。

前日までの雨は上がり、さわやかな天候の中、手賀沼沿いを歩いてバードウオッチングを楽しみました。5つの班に分かれて出発し、1時間コース(1班)と2時間コース(4班)に分かれて鳥を探しました。

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▲手賀沼遊歩道から観察を行いました。

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▲水田で餌を探していたセグロセキレイ

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▲空中で昆虫をとらえて巣に運んでいたスズメ

各班を合計して29種の鳥たちに会うことができ、我孫子野鳥を守る会のみなさんにサポートいただいたおかげで充実した観察ができたと思います。

今回の探鳥会には一般の方50名、我孫子野鳥を守る会の会員のみなさまの32名の参加がありました。ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。

今回は定員を50名に絞って申し込み制で開催しました。途中から申し込み者多数のためキャンセル待ちでの受付となってしまい、ご希望に添えなかったみなさまには申し訳ありませんでした。鳥の博物館では周年「てがたん」をはじめとする自然観察会を実施しておりますので、別の記載にぜひご参加いただければと思います。

*中止となった年の誤りを修正しました(5/18)
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▲岩棚に作られたオオトラツグミの巣(ビデオカメラにて無人で十分な距離を保って撮影されたもの)。

4月16日に、2022年4月の「鳥のサイエンストーク」を実施しました。これまで「テーマトーク」として2011年より実施してきましたが、より内容が分かりやすい名称に変更して多くの方に視聴いただくため、今月からタイトルを改称いたしました。
これまでと同様にYoutube liveを用いたライブ配信で行いました。今回は、山階鳥類研究所自然誌・保全研究ディレクターの水田 拓さんに「目に見えるものだけを信じるな―奄美大島の絶滅危惧種オオトラツグミの巣の特徴―」と題してお話しいただきました。

鳥の巣は、卵を生み、ヒナを育てる構造物で、その形や場所は鳥のグループや種によって様々です。巣は動くことのできない卵やヒナを襲うことができるため、捕食者によっては容易に手に入るよい食物となります。そのため、巣の捕食は鳥の繁殖失敗の主な要因の一つになっており、捕食を避けるための色彩や行動が進化してきました。このような巣の特徴を調べることは、進化の研究だけでなく、絶滅危惧種の保全に際しても重要となります。

オオトラツグミは、日本鳥類目録7版では、日本本土に広く分布するトラツグミZoothera daumaの亜種とされています。オオトラツグミの姿は本土のトラツグミとよく似ていますが、囀りは大きく異なり、マミジロに似た「キョローン」という声が特徴です。森林伐採や外来種の影響によって数を減らしていましたが、近年では個体数が回復傾向にあります。

水田さんの研究によって、オオトラツグミの好む環境は、大きなスケールでは、標高と林齢が高く、広葉樹林の面積が広い森林が適していることがわかりました。一方、小さなスケールでは、巣は木の又に作ることが多く、3メートルほどの低い位置に作られていることが多いことがわかりました。しかし、水田さんによれば、この結果は「ちょっと慎重さを欠いていた」とのこと。それはなぜなのでしょうか。

オオトラツグミの巣の見つかり方には大きく分けて、(1)偶然見つかる場合、(2)親の行動を追跡して見つかる場合の2つがあります。これまでに(1)では62巣、(2)では44巣が見つかっています。これらの見つけ方によって、見つかる巣のタイプを比較したところ、(1)の方法で見つかる巣はより低い位置にあり、木の又に作られている割合が高いことがわかりました。(2)の方法で見つかる巣は比較的高い場所にあり、折れた幹の上や岩棚にある割合が高かったのです。オオトラツグミにとって林内の枯死木は重要な資源であるということも、この再解析によって明らかになりました。

目につくところにある巣は見つかりやすく、目立たない巣は見つかりにくいという、当たり前かもしれないことですが、得られた結果だけを見ていると見落としがちになってしまいそうです。このように、目につきやすいものだけをみて物事を判断すると、誤った結論を出してしまう可能性があるという教訓でお話を締めくくられました。

講演のあとに、巣の場所ごとの繁殖成功率の違いがあるかどうかや、実際に存在する巣の場所を偏りなく見つけるためにはどんな方法が考えられるかについて、視聴者の皆さんからのご質問をいただき、水田さんにお答えいただきました。
また、鳥の巣を観察・撮影するときの一般的な注意点についてもお話しいただきました。鳥の巣に近づくと、親鳥が抱卵や給餌のために巣に戻ることができない、人間のにおいを付けて捕食を誘発するなどの悪影響が懸念されるので、必要がない場合には巣に接近せず、必要がある場合も影響を最小限にとどめるような工夫が必要とのことです。

今回のオンライン講演は、最大同時に94人の方に視聴いただきました。ご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。今回のライブ配信は、4月30日(土)まで以下のURLより見逃し配信を行います。
https://youtu.be/Au1X4QFEnPk

次回、2022年5月の鳥のサイエンストークは、山階鳥類研究所研究員の澤祐介さんに、ガン類の渡り追跡に関する最新の話題をお話しいただきます。
配信方法などについては、山階鳥類研究所・我孫子市鳥の博物館ウェブサイトで改めてご案内します。次回もぜひご視聴ください。
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