null
△サギの仲間のダイサギ。

2月17日に、2024年2月の鳥のサイエンストークを実施しました。これまでと同様にYoutube liveを用いたライブ配信で行いました。今回は、山階鳥類研究所研究員の岩見恭子さんに「鳥の学術標本作り・中級編2」と題してお話しいただき、学術標本の製作の実演もしていただきました。このようなライブ配信は、2021年7月、2022年12月に行った試みに続いて3回目となりました。

まず、鳥の標本を集める目的や保管方法などについてお話しいただきました。標本は、ある時代の実物の資料を保存することで、タイムカプセルの機能を果たします。そのため、時代ごとにできるだけ多くの標本を作って保存していくことが望まれます。標本を博物館で保存することで、より多くの人が利用できるようになります。また、利用の可能性を高めるため、採集場所や日時などの標本に関連した情報も併せて保存することが重要です。

このお話のあと、さっそく実際の製作を見せていただきました。今回は、首の長い水鳥であるダイサギを材料に、皮むきから縫い合わせるまでの一連の流れを見せていただきました。手元を写したカメラを使って、作業上のポイントを見せていただきながら解説していただいたので、どのように標本が作られているのかがよくわかりました。

基本的な手順はこれまでに配信したアカショウビンやウミネコと大きく変わりませんが、首の長い鳥では皮を剥く手順や芯の作り方に工夫が必要です。頭部を内側から返せない鳥では後頭部を切開して頭部の処理を行う必要があります(今回のダイサギではそのままひっくり返せました)。
通常の鳥では、首をまっすぐに伸ばし、芯になる1本の棒を頭骨から脚まで貫通させて形を整えます。しかし、サギのような首の長い鳥の場合、首を伸ばして標本の形を作ってしまうと収納スペースがかさんだり、破損しやすくなってしまいます。そのため、首を緩やかに体に反って曲げた形に作られます。このためには首の芯に針金を入れるか、ひもを頭骨から胴体の芯まで通し、固めに綿を巻き付けて柔らかく曲げる方法をとります。今回は、後者の方法での実演を見せていただきました。

講演のあとに、視聴者のみなさんとチャット機能を用いて質疑応答が交わされました。最後に標本に巻く紙の印刷面の向き、防腐剤の種類や塗り方、鳥の皮膚が乾燥してしまった場合の対処方法などについて、岩見さんにわかりやすくお答えいただきました。

今回のオンライン講演は、最大同時に122人の方に視聴いただきました。ご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。今回のライブ配信の見逃し配信は行いませんので、ご了承ください。

次回、2024年3月のテーマトークは、3月16日(土)に、山階鳥類研究所の齋藤武馬さんに、近年メボソムシクイから別種に分割されたオオムシクイの国内の繁殖地についてお話しいただきます。配信方法などについては、山階鳥類研究所・我孫子市鳥の博物館ウェブサイトで改めてご案内します。次回もぜひご視聴ください。