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8月17日に、2019年8月のテーマトークを開催しました。今回は、山階鳥類研究所自然誌研究室研究員の岩見恭子さんに、「鳥類標本の作り方 ―いろんな標本をつくってみよう―」と題してお話しいただきました。

鳥類に関する標本というと、まずは剥製(はくせい)を想像しますが、そのほかにも部分的な翼、羽毛、骨格、卵、巣、胃内容物やヒナなどの液浸標本など、さまざまな種類があります。山階鳥類研究所のこれらを合わせておよそ8万点の鳥類標本が保管されており、アジアではトップクラスの収蔵数を誇っています。その多くが研究用の仮剥製(かりはくせい)です。

山階鳥類研究所では、一般の方から提供される野外で拾われた鳥の死体、動物園や野生動物保護センター等からの提供資料を合わせて年間約800羽ほどの鳥の遺体資料を受け入れて標本を収集されています。

これらの標本は、同じ場所から何点も集められることがありますが、なぜ沢山集める必要があるのでしょうか? その理由のひとつとして、北海道におけるオジロワシの食物を、標本の羽毛の安定同位体比から調べた研究をご紹介いただきました。100年前に採集された標本と現代の標本を比べてみると、昔に比べて食物の内容や採食域が多様になり、シカの狩猟残渣なども食べるようになった可能性があることが分かったそうです。私たちは過去にさかのぼって標本を収集することはできません。この時代を代表する資料は今保存しておかなくてはならないのです。

続いて、ホールの前に集まっていただき、実物の標本を回覧しながらお話しいただきました。オオミズナギドリやコシジロウミツバメなどの独特な羽毛の臭い、ギンザンマシコの嘴に付いた松ヤニの臭いをかいだり、実物の標本から分かることをご紹介いただきました。

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▲ぬいぐるみを用いた剥製標本の作り方の解説

岩見さんが剥製の作り方を説明するために自作されたぬいぐるみ「かけすちゃん」を用いて、剥製標本がどのように作られるかを分かりやすく説明いただきました。続けて、ニワトリの卵を使って、卵標本の作り方を実演していただきました。卵の側面に穴をあけて60℃くらいのぬるま湯に浸けると中身が効率よく取り出せるそうです。最後に、実物のアカショウビンの翼を使って翼標本をどのように作るかについても実演していただきました。

今回は、34名の方にお集まりいただきました。ご参加いただいたみなさま、お話しいただいた岩見さん、ありがとうございました。
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7月20日に、2019年7月のテーマトークを開催しました。今回は、山階鳥類研究所保全研究室研究員の仲村昇さんに、「渡り鳥のふしぎ:春と秋で違うルートを使う種類がいるのはなぜ?」と題してお話しいただきました。

鳥の行う渡りとは、繁殖地と非繁殖地の間の往復の移動のことを指します。そのほかの移動、たとえば、日々の餌場と休息場所の間の移動や、生まれた場所からの分散は、渡りとは区別されます。この渡りルートの往復を、同じルートで行き来する種と、違うルートを使う種の両方が知られています。このような渡りの形態を、loop migration(ループ型移動)といいます。

loop migrationを行うかどうかは、季節によって異なる中継地での餌の有無、渡りに適した風が吹くかどうかなどが関係していると考えられています。近年の衛星追跡やデータロガーの開発によって沢山の鳥の移動経路が分かって来ましたが、その中からループ型移動を行うことが判明した種の渡り経路の研究成果をご紹介いただきました。

日本で繁殖するハチクマは、インドネシアなどの越冬地まで渡りをしますが、その経路は春と秋で異なることが知られています。秋は日本列島を南下した後、九州の西端から飛び立って東シナ海を横断して大陸に入りますが、春の渡りでは、越冬地から北上したのち朝鮮半島の北側まで回り込み、対馬を通って日本に帰ってきます。これは、複数個体の追跡によって判明した固定した渡り経路で、たまたま1個体がこのように往復したというだけではありません。

アラスカで繁殖するオオソリハシシギやムナグロは、それぞれニュージーランドや太平洋の島々で冬を過ごしますが、彼らは大規模なループ型移動を行います。繁殖を追えた成鳥は、アラスカから一直線にどこにも立ち寄ることなく越冬地を目指します。オオソリハシシギの渡りはこれまでに知られている動物のノンストップの移動としては最も長いもので、およそ11,000kmを8日間で飛んだ記録があります。一方、春の渡りは北西に飛んで日本や中国などの東アジアを目指します。そこでしばらく栄養補給をした後、再び繁殖地のアラスカを目指して一気に渡ります。

他にも、ヨーロッパからアフリカに渡るカッコウや、北米から中米に渡るミドリツバメで、ループ型移動の例をご紹介いただきました。また、渡り鳥の高い定位能力や、本能的に備わっている渡りの衝動によってこうした渡りが行われていることもお話しいただきました。質疑応答では渡り鳥に関する沢山の質問が飛び交いました。

今回は、52名の方にお集まりいただきました。ご参加いただいたみなさま、お話しいただいた仲村さん、ありがとうございました。
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6月15日に、2019年6月のテーマトークを開催しました。今回は、山階鳥類研究所自然史研究室専門員の平岡考さんに、「万国共通な学名が図鑑によって違うわけ〜キジやコウノトリはどうなってる?」と題してお話しいただきました。

学名は、多くの図鑑に必ずといっていいほど掲載されています。和名の横にアルファベットの筆記体で書かれているのを覚えている方も多いと思います。スズメならPasser montanusが学名です。スズメの英名はTree Sparrowといいますが、この他にもそれぞれの言語で呼ばれている名前があり、それらは全て俗名で、学名ではありません。

現在世界中で使われている学名は、国際的な規約によって使い方が定められており、属名と種小名の2つの名前で表記されることから、2名法と呼ばれています。この方法はスウェーデンのリンネによって導入され、世界中の生きものの命名に用いられています。
しかし、学名はラテン語で書かれているため、多くの人にとってはその意味を理解できないものです。では、なぜ学名は図鑑に書かれているのでしょうか?

たとえば、以下の3つの鳥
スズメ Passer montanus
イエスズメ Passer domesticus
ウミスズメ Synthliboramphus antiquus
は、いずれも和名に「スズメ」と付きますが、ウミスズメはスズメの仲間ではありません。学名を見ると、ウミスズメだけ属名が違うことが分かるので、これだけが遠縁の鳥だということが分かります。学名を見ると、どの鳥とどの鳥が近いグループなのかを読み取ることができるのです。
また、読むことのできない言語で書かれた書物でも、学名さえ書かれていれば、何の種についての記述なのかを知ることができます。

図鑑に書かれている学名が、文献によって違っていることがしばしばありますが、これはなぜなのでしょうか。たとえば、コウノトリの学名は山階(1986)ではCiconia ciconiaと表記されていますが、日本鳥学会(2012)ではCiconia boycianaとなっています。これは、日本に渡来する東側の集団boycianaを亜種とするか、それとも独立した種として扱うかによります。かつては中央アジアからヨーロッパに分布するシュバシコウCiconia ciconiaと同種の亜種として扱うことが多かったのですが、最近では別種として扱っているため、このような変化が起こっています。

一方、キジでは、山階(1986)ではPhasianus versicolorとなっていますが、日本鳥学会(2012)ではPhasianus colchicusとされています。コウノトリの場合とは逆に、かつては別種として扱われていたものが、同じ種内の亜種として扱われるようになったためにこのように学名が変化しています。最近では日本産のいくつかのキジの亜種を大陸のものとは別種として扱うことが多くなりましたので、再び元に戻る可能性が高そうです。

世界共通の名前である学名も、分類の説が変化することによって変わることが分かりました。一見ややこしく思えますが、分類の説が1つに決まれば学名も決まるので、学名を見ればどのような分類を採用しているかがわかる便利なものということもできると感じました。

今回は、18名の方にお集まりいただきました。ご参加いただいたみなさま、お話しいただいた平岡さん、ありがとうございました。
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5月18日、鳥の博物館の職員通用口から3mほど離れた駐車スペースの脇に、見慣れない段ボール箱が置かれていました。中を見ると、弱り切ったフクロウの成鳥が入っていました。誰かが保護した、または違法に飼育していたフクロウを遺棄していったものと思われます。現在までのところ、拾得者から当館宛への連絡はありません。

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▲衰弱したフクロウ(強制給水の際に撮影)

千葉県における傷病鳥獣の保護は、保護した人が責任を持って行うことになっています。
https://www.pref.chiba.lg.jp/shizen/choujuu/syoubyou/hogo.html

当館は動物病院でも救護施設でもありませんので、治療や飼育をするための設備もスタッフもおりません。今回のように傷病鳥獣を無責任に押しつけられるような事態はこちらとしては大変困ります。連絡をいただけず、拾得状況や拾得場所が不明な場合、治療に必要な情報が得られず、もし回復したとしても野外に放鳥することができません。

今回は、休日・祝日は千葉県の担当窓口が開いていないため、一時的に預かって給水等の処置を行ったあと、21日に千葉県の担当者を経由して動物病院に引き渡されました。18日にすぐに連絡をいただけなかったため、フクロウは大変衰弱しており、回復の見込みがあるかどうかは分かりません。今回のような方法での野生動物の保護は、保護される鳥にとっても百害あって一利なしと言えるでしょう。

これから多くの鳥が巣立つ時期になり、ヒナの誤認保護が増える季節です(ヒナの保護についてはこちら)。今後、このように無責任に当館に動物を遺棄された場合、警察に通報することも検討します。傷病鳥獣の保護を行われる方は、上記の千葉県のウェブサイトに書かれている手順を順守し、きちんと行っていただきますよう、お願いをいたします。


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5月18日に、5月のテーマトークを開催しました。今回は、山階鳥類研究所客員研究員の茂田良光さんに、「日本に渡ってくるハマシギの亜種はどれ?」と題してお話しいただきました。

茂田さんは、これまでに繁殖地のアラスカ、マガダン、サハリンなどのハマシギの繁殖地で調査をされてこられました。今回はその繁殖地での調査のご経験をもとに、国内に渡来するハマシギの亜種についてお話しをいただきました。

ハマシギCalidris alpinaは、小型のシギの仲間で、ユーラシア大陸と北アメリカ大陸の両方に広い繁殖分布をもっています。地域ごとに羽の色や体の大きさなどが異なる場合、種はいくつかの亜種に分けられることがありますが、ハマシギの場合、10亜種ほどに分けられています。これは世界のシギ科の鳥の中でも一番亜種の多い種のひとつです。日本国内ではハマシギは旅鳥または冬鳥ですが、いったいどの亜種が渡来するのでしょうか?

先月の千田さんのお話しでも紹介いただいたように、シギ・チドリのような渡り鳥の渡る道は、フライウェイと呼ばれ、カラーフラッグや衛星発信器など、様々な追跡手法によって調査が行われています。日本に渡来するハマシギについても、カラーリングやフラッグの調査によって調査が行われてきました。

日本鳥類目録第7版では、亜種ハマシギC. a. sakhalinaと亜種キタアラスカハマシギC. a. arcticolaの2亜種が記録されていることになっています。しかし、これには注意が必要です。実は、標識によって繁殖地からの渡来が確認されているのは、これまでのところアラスカの北西部で繁殖する亜種キタアラスカハマシギのみなのです。

亜種ハマシギと亜種キタアラスカハマシギはよく似ており、特に冬羽や幼羽では見分けることは困難です。そのため、亜種ハマシギは分布域からは渡来していると推測されるものの、確実な記録はありません。そのため、どのくらい日本に来ているのかについてはまだ謎のままです。亜種ハマシギの西側に繁殖分布する亜種C. a. centralisの渡来の可能性についても良くわかっていません。

これらの他にも、北アジアの比較的低緯度で繁殖する亜種が2つあります。亜種カムチャッカハマシギC. a. kistchinskiと亜種カラフトハマシギC. a. actitesです。これらは日本鳥類目録改訂第7版では検討中の種・亜種に含められていますが、日本は分布域に近いことから渡来している可能性が高いと考えられています。両亜種ともに国内でそれらしい観察例や捕獲例があるそうで、学術報告が待たれます。

まとめると、今のところ国内で確実な記録があるのは亜種キタアラスカハマシギのみ、そのほかにも3〜4亜種の渡来可能性がありそうだということでした。今後さらなる調査が進むことで、国内に渡来するハマシギの亜種がはっきりと分かることが期待されます。

今回は、26名の方にお集まりいただきました。ご参加いただいたみなさま、お話しいただいた茂田さん、ありがとうございました。

(5/23内容の修正を行いました。)
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5月6日に、あびこ自然観察隊「シギ・チドリに会いに行こう」を実施しました。22名の方にご参加いただき、シギ・チドリを探して、我孫子市東部の水田地帯を歩きました。

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新木駅に集合してから5分ほど歩くと、手賀川沿いの水田地帯に出ました。冬の間はカラカラだった水田に水が張られ、多くの水田で田植えが終わっていました。

さっそく、遠くの水田にムナグロがの群れが降りているのが見つかりました。良く見ると、少し背の低いキョウジョシギも入っています。ムナグロはきょろきょろしながら走って餌を捕っていたのに対して、キョウジョシギはひたすら下を向いて畔や田んぼの泥を嘴でひっくり返していました。

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△白と黒のコントラストが美しい夏羽になったムナグロ。

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△畔で採食するキョウジョシギ。

「ピューイ」と笛のような涼しげな声が聞こえると、灰色のシギが飛んできました。キアシシギです。田んぼの畦沿いを歩きまわって水生昆虫の幼虫を食べているようでした。

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△キアシシギ(左端)とムナグロ、キョウジョシギ(右端)の群れ。しばしば異なる種類が群れをつくっているのが見られます。

さらに歩いていくと、チュウシャクシギが飛んでいるのが見つかり、少し距離はありましたが田んぼの中に降りて餌を探しているところも観察することができました。手賀沼周辺で普通に見られるシギ・チドリの中では最も大きな種類で、アメリカザリガニなどを好んで食べます。

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△水田に降りて餌を探すチュウシャクシギ。

この4種類は、いずれも長距離を渡る種で、繁殖地の北極圏と越冬地のオーストラリアなどを毎年往復しています。その渡りの途中で日本に立ち寄り、渡りのために必要な栄養を補給しているのです。渡りの中継地として、日本の水田がとても重要な役割を果たしていると考えられています。

今回の観察会では、一部の方が見られたコチドリとタシギの2種を加え、併せて6種のシギ・チドリの仲間を観察することができました。
てがたんのコースとは異なる開けた農地の環境の中で、自然観察を楽しみました。ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。また鳥の博物館の自然観察会にご参加ください。
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投稿者: odaya
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4月20日に、4月のテーマトークを開催しました。今回は、山階鳥類研究所保全研究室専門員の千田万里子さんに、「フラッグ付きシギ・チドリの観察記録〜窓口担当者のよもやま話〜」と題してお話しいただきました。

千田さんは、保全研究室で鳥類標識調査のデータ管理の業務を担当されていますが、昨年からシギ・チドリのフラッグの記録のとりまとめの担当をされています。今回はシギ・チドリの追跡調査の概要や、その業務に関わるさまざまな発見などをお話しいただきました。

ロシアの東部やアラスカで繁殖するシギ・チドリの仲間は、日本を通過して、オーストラリアや東南アジアで越冬します。彼らが渡りの時に通過するルートをフライウェイといい、日本は「東アジア・オーストラリアフライウェイ」の中継地点として、シギ・チドリの保全上重要な位置を占めています。しかし、生息地となる湿地の開発などによって、シギ・チドリの個体数は急激に減少しており、保全する必要が出てきています。

シギ・チドリの渡りルートを調べて保全に役立てるため、各国でシギ・チドリの脚にフラッグと呼ばれるプラスチック製の標識を付けて渡りを調べる調査が行われています。フラッグは脚の色や組み合わせにより、装着した場所が分かるようになっています。最近では、フラッグの中に数字や文字が刻印されたフラッグも使われるようになり、より詳細な個体の移動データが蓄積されています。日本では環境省が山階鳥類研究所に委託して調査を実施しています。

フラッグを付けて放鳥された鳥は、一般のバードウオッチャーによる情報提供によって、その後の追跡がなされています。今回は千田さんが担当したいくつかの事例をご紹介いただきました。

南オーストラリアで放鳥され、その後茨城県と石川県で発見されたミユビシギ、カムチャッカ半島で放鳥され、その後国内で発見されたトウネン、また、同一のフラッグによって北海道から茨城県へ移動したミユビシギの例などをお話しいただきました。また、東京湾で一年中観察報告されるダイゼンの若鳥からは、成鳥と幼鳥で異なる渡りの生態を読みとることができたとのことでした
。また、最近ではウェブページやSNS上での報告もあるそうで、台湾からのアカアシシギの報告や、タイからのトウネンのフラッグの報告について対応したことをお話しいただきました。

こうしたフラッグの報告の件数は渡りのピーク時には月120件を超えることもあったそうで、1つ1つにお返事を出すのはなかなか大変なことだったそうです。季節によって報告されるフラッグの種類が異なるそうで、たとえば、9月になると全国的にカムチャッカ放鳥のフラッグを付けたシギ・チドリが報告されるようになるそうです。こうした変化を一般の方にも感じてもらえるよう、将来的には放鳥時の情報やその後の追跡結果が共有できるようなウェブサイトの立ち上げを目指したい、とのことでした。
(参考:千田さんにご紹介いただいた台湾のシギ・チドリの標識個体が見られるウェブサイトhttp://resights.birdband.org/

今後も、フラッグ付きのシギ・チドリを観察、撮影されましたら、以下のウェブサイトにある案内の通りメールにてご報告をお願いしたいとのことでした。
http://www.yamashina.or.jp/hp/ashiwa/ashiwa_index.html#11

今回は、32名の方にお集まりいただきました。ご参加いただいたみなさま、お話しいただいた千田さん、ありがとうございました。次回のテーマトークは5月18日(土)に実施予定で、山階鳥類研究所客員研究員の茂田さんによるハマシギのお話です。詳細なご案内は近日中に鳥の博物館ウェブサイトに掲載いたします。
また、5月6日(月・祝)には我孫子市内でシギ・チドリの観察会を実施します。こちらもぜひ併せてご参加ください。
http://www.city.abiko.chiba.jp/bird-mus/gyoji/event/index.html
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3月16日に、3月のテーマトークを開催しました。今回は、山階鳥類研究所副所長の尾崎清明さんに、「ヤンバルクイナ野生復帰の現状と課題 〜放鳥の技術開発から〜」と題してお話しいただきました。

尾崎さんは、1981年のヤンバルクイナ発見の際から、チームの一員として研究や保全に携わってこられています。今回は、人工繁殖させたヤンバルクイナを野生に返すための試みについてお話しいただきました。

ヤンバルクイナはクイナ科ニュージーランドクイナ属のクイナの1種で、フィリピンやインドネシアに分布しているムナオビクイナに近縁な種です。この仲間は太平洋の島々に分布しており、飛べない種類が多く含まれています。そのため、人が持ち込んだネコやネズミなどの外来種に捕食されやすく、多くの種が絶滅してしまったり、絶滅が危惧されています。世界で沖縄島だけに分布するヤンバルクイナもその一つで、屋外にいるネコや、ハブの駆除のために持ち込まれたマングースなどによって捕食されたことによって数を減らし、すでに発見時から絶滅が危惧されていました。

ヤンバルクイナの個体数を回復させるため、野外でのマングースの駆除と合わせて、飼育下で個体数を増やすプロジェクトが2005年からスタートしました。飼育下での繁殖が成功し、個体数が増えてきたのと合わせて、2014年から試験放鳥がはじまりました。しかし、2017年までの放鳥では、40%以上の個体が1カ月以内に死亡してしまったそうです。尾崎さんたちが発信器で追跡したところ、その原因はほとんどがカラスやハブ、イヌ・ネコによる捕食でした。また、野外で捕獲して追跡した個体と比べて、捕食による死亡率が高いことも分かりました。人工繁殖で生まれた個体は、自然下であれば親から教わることのできる天敵の脅威を学習する機会がないためではないかと推測されました。

そこで、尾崎さんたちは飼育下で繁殖させたヤンバルクイナに天敵のハブの脅威を教える実験を始めました。具体的には、飼育ケージの中にハブの模型を入れて、同時に録音した親の警戒声をスピーカーで流すことで、ハブが危険な存在であるとヒナたちに学習させることを試みました。さらに、人工飼育個体は放鳥後に人工物の近くを好む習性があることから、ネコなどに捕食されてしまうリスクが高まっていると考えられるため、放鳥地をなるべく人工物の少ない2か所に絞って検証を行いました。

その結果、2018年に放鳥した個体はまだ全てが生存しているそうで、これらの試みは効果があったと考えられるとのことです。また、2018年に初めて、放鳥個体での野外での繁殖が確認されました。ヤンバルクイナの保全には、他にも交通事故など様々な課題がありますが、人工飼育個体の放鳥が野外の個体群の補強につながっているのは明るいニュースといえそうです。今後は、放鳥初期の生存率を高めるため、さらに野外の生活に馴らす技術の開発に取り組んでいきたいとのことでした。

今回は、34名の方にお集まりいただきました。ご参加いただいたみなさま、お話しいただいた尾崎さん、ありがとうございました。
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投稿者: odaya
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2月17日に、あびこ自然観察隊「オーイ!冬鳥くん」を実施しました。29名の方にご参加いただきました。

まず、2グループに分かれて、手賀の丘の林の鳥の観察からスタートしました。鳥影は少なめでしたが、開始してすぐ、林の中を移動するカラ類の混群に出会うことができ、木の上の方を移動するシジュウカラやヤマガラ、それに混じるキクイタダキやコゲラも見られました。カラ類の警戒声がした後、林の上をかすめていくオオタカの姿も見ることができました。林の出口では、藪の中を移動するアオジや、草地の獲物を狙うモズなどを観察しました。

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▲大きい後羽(こうう)があるキジのメスの体羽を拾いました。

林を出ると、北西の風がかなり強く、厳しい観察条件となりました。そんな状況の中でも、ヨシ原に身を隠すマガモやカルガモなどのカモ類や沖に浮かぶカンムリカイツブリなどを観察しました。ヨシ原の小鳥は観察には厳しい条件でしたが、オオジュリンやアオジなどを少数観察できました。私たちに驚いて、キジの雄が飛び出してくる一幕もありました。

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▲ヨシ原から飛び出すマガモの群れ(下見時に撮影したもの)。

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▲ヨシ原の中で休息するアオサギ(下見時に撮影したもの)。

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▲水路の縁にカワセミのペリット(消化できない魚の骨などをまとめて吐き出したもの)を見つけました。

田んぼの中の道では、耕起された農地で餌をとるカワラヒワやヒバリを観察しました。ヒバリの中には、強風の中を舞いあがって囀る個体もいて、春の訪れを感じることができました。再び林に戻ると、桜の林の周辺でジョウビタキやエナガが見られました。

2グループ合わせて、45種の鳥を観察することができました。ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。また鳥の博物館の自然観察会にご参加ください。
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投稿者: saito
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 今日は、山階鳥類研究所コレクションディレクターの鶴見みや古さんに「3種のカワセミの謎〜山階鳥研のステンドグラス〜」をテーマにお話いただきました。
 山階鳥類研究所の前身の山階家鳥類標本館は、渋谷の南平台に1932年に建設され、その玄関には山階芳麿博士が研究対象と考えた動物地理区を現した3種のカワセミの仲間がデザインされたステンドグラスがはめ込まれました。そのデザインをよりどころに描かれたとされる小林重三(こばやししげかず)のイラストが、山階鳥類研究所報告の第1巻の表紙に使われ、それぞれの鳥の名前が記載されています。旧北区のアカショウビン、東洋区のヤマショウビン、オーストラリア区のシロガシラショウビンです。
 鶴見さんは、ステンドグラスにデザインされたヤマショウビンとシロガシラショウビンは、その種の特徴と異なることに気がつきました。これがなぜなのか調べてみた結果についてお話してくださいました。
 ヤマショウビンについては、単にデザイン上の問題で本来の特徴が省略されたとしか考えられなかったそうですが、シロガシラショウビンは現在のナンヨウショウビンの一亜種シロガシラナンウショウビンの姿でした。実は、ステンドグラスがつくられる前に、鳥類研究者の籾山徳太郎氏がサイパン島で採集した鳥をシロガシラショウビンという和名で記載し、これがステンドグラスに使われ、その名前がそのまま記載されたのだそうです。その後ニューギニア等周辺に生息する別の種をシラガシラショウビンと呼び、籾山徳太郎が記載した種をナンヨウショウビンと呼ぶようになったために、このような混乱が起こったとのことでした。
 和名は、学名とちがって使い方に統一されたルールがないため、しばしば混乱を招きます。しかし日本人にとっては便利なので、多くの人が共通した名前を使えるように、例えば日本鳥学会では日本鳥類目録に和名を記載しています。多くの人がこの名前を使い、これが標準和名となっています。
 また、鶴見さんは、ステンドグラスの原画を誰が描いたのか、またステンドグラスをよりどころに描いたとされる小林重三の絵がなぜ左右反転されているのかなど、このステンドグラスにまつわる未解決の疑問も示されました。
 日本の鳥類学の黎明期の頃の時代背景や山階鳥類研究所が創設された頃の様子もイメージできるお話でした。
 ご来場の皆様、お話してくださった鶴見さん、ありがとうございました。
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