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投稿者: odaya
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 11日4日(土)に、我孫子市生涯学習センター「アビスタ」のホールで第33回JBF鳥学講座を開催しました。今回は、「小笠原諸島の海鳥は、増えたり、減ったり、海を越えたり、越えなかったり」と題して、森林総合研究所鳥獣生態研究室長の川上和人さんにお話しいただきました。

 川上さんは、小笠原諸島をフィールドに、島の鳥の生態系の中での機能や保全管理について研究されています。今回は、長年取り組んでいらっしゃる小笠原諸島の海鳥を題材に、その進化から保全にいたるまでの様々な研究成果を中心にお話しいただきました。

 小笠原諸島はこれまでに一度も日本本土とつながったことのない海洋島で、在来の陸上の捕食者がいませんでした。そのため、海鳥の高密度のコロニーが形成され、21種の海鳥の繁殖記録があります。
 海鳥は高密度でたくさん繁殖します。そのため、島の中を歩き回ることによって森林の下層の植生の発達が妨げられること、地面に巣を作るためのトンネルを掘り、鳥の巣を好む昆虫に生息場所を提供すること、海で餌を食べて島で糞をすることによって窒素やリンを島の陸上に運ぶこと、植物の種を体に付けて島の間を運ぶことなどのさまざまな生態的な機能があることが分かってきました。

 小笠原で繁殖する海鳥の中には、世界でもここだけで繁殖するものがいます。それは、クロウミツバメ、オガサワラミズナギドリ、オガサワラヒメミズナギドリの3種です。クロウミツバメは世界で南硫黄島の山頂付近でしか繁殖していないウミツバメです。オガサワラミズナギドリは南硫黄島と東島だけで繁殖する鳥で、かつてセグロミズナギドリの1亜種とされていましたが、セグロミズナギドリのグループからは遺伝的にかなり異なっていることが分かり、別種とする提案が受け入れられています。オガサワラヒメミズナギドリは、ハワイで採集されていた標本をもとに2011年に新種として記載されたもので、2000年代にしばしば小笠原で見つかっていた小型の種不明のミズナギドリもこれと同種であることが判明しました。その後、父島列島の東島で営巣しているのが見つかり、現在まで世界でこの場所でしか繁殖地が見つかっていません。

 小笠原諸島に広く分布するアナドリという海鳥は、世界中の海に分布していますが、その個体群の間での系統的な違いなどはよく分かっていませんでした。川上さんは、ポルトガルの研究チームとの共同研究で、大西洋、ハワイ、小笠原の個体のそれぞれのDNA配列を比較し、小笠原の集団は、他のすべての集団から最も早く、約85万年前に分岐したことが分かりました。地理的な距離のより近いハワイの集団は、小笠原の集団よりも大西洋の集団により近縁だったのです。なぜこのような現象が起こっているのかははっきりとはわかっていませんが、小笠原とハワイの間には海鳥の食物の量の指標になる植物プランクトンの量が少ないこと、渡り経路が異なることなどが原因として考えられています。

 小笠原諸島に人間が入植したのは1800年代で、彼らによってネズミ類、ネコ、ノヤギなどの外来の哺乳類が持ち込まれました。島ごとに侵入した哺乳類の種数と現在の海鳥の繁殖種数を比較してみると、これには強い負の相関がありました。外来種の哺乳類は、海鳥の卵やヒナ、親鳥の捕食や、植物を食べて森林を草原に変えてしまったことで、海鳥の個体群の減少を引き起こしたのです。

 その後、小笠原では様々な自然再生事業が展開されるようになり、植生を破壊するノヤギの駆除は父島を除くすべての島で完了しました。その結果、クロアシアホウドリ、カツオドリ、オナガミズナギドリ、アナドリなどの海鳥については増加していることが分かっています。しかし、小笠原の過去の海鳥相はあまりよくわかっておらず、これらの在来種の増加は、回復と言ってよいのかどうかわかりません。

 そこで、川上さんたちは海鳥繁殖地である南島の鍾乳洞から海鳥の骨を発掘し、人間が入植する前の海鳥相を復元しました。その結果、現在は限られた島で少数が繁殖しているだけのシロハラミズナギドリ、オガサワラミズナギドリ、オガサワラヒメミズナギドリの3種の骨が非常に多く出土し、この3種だけで全体の約70%を占めることが分かりました。このうちいくつかの骨を年代測定してみると、いずれも数千年前から数百年前のもので、幼鳥の骨も出てきました。そのため、人間の入植前まではたくさん繁殖していたけれど、外来種の侵入によってこれらの種類は大きく減少したことが分かりました。すなわち、回復しているように見えている海鳥の個体群は、実は分布の狭い小型の固有種から、広域に分布するより大型の種に入れ替わってしまっていたのです。

 では、これまでの保全活動は失敗してしまったのでしょうか? 川上さんは、現在の状況は回復までステップの一つだと説明されました。まず、海鳥の生態系の中での機能が元に戻りつつあるのが現在の状態で、これから小型の固有種を含むかつての海鳥相に近づいていくために多様性の回復を進めていくことが重要とのことです。このように、かつてのあるべき姿がどのようなものであったかを復元し、目指すべき目標を定めていくことは、小笠原の海鳥に限らず、私たちの身近な生物多様性を保全していくために普遍的に重要なことではないか、というお話で講演を締めくくられていました。

 講演のあとには、「なぜ海鳥には保全対策で増える種と増えない種がいるのか」、「海鳥の繁殖場所の好みと分布の広さに関係はあるか」などについて来場者からの質問をいただき、川上さんにわかりやすくお答えいただきました。特に、「何のために希少な海鳥を保全するのか」というご質問に対しての、「生態的な機能や生態系サービスの有無にかかわらず、私たちの知的好奇心を刺激してくれることそのものが、その生物を守る意義ではないか」というお答えは、生物多様性を守っていきたいと考える多くの人を勇気づけるものだと感じました。
 今回の鳥学講座は、同時中継の別会場を合わせて198人の方にご参加いただきました。ご好評をいただいたため、会場の都合で入室をお断りせざるを得なかったみなさまにはお詫びいたします。ご講演いただいた川上さん、ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。

参考資料:
今回のお話しのもとになった論文の日本語プレスリリース

・オガサワラヒメミズナギドリの営巣地の発見
https://www.ffpri.affrc.go.jp/press/2015/20150324/index.html

・オガサワラミズナギドリの系統の研究
https://www.ffpri.affrc.go.jp/press/2018/20180125/index.html

・アナドリの系統の研究
https://www.ffpri.affrc.go.jp/press/2023/20230411/index.html

・鍾乳洞で見つかった骨からわかった海鳥相の変化
https://www.ffpri.affrc.go.jp/press/2022/20220720/index.html

今回のお話の内容と関係した川上さんの著書
「無人島、研究と冒険、半分半分。」
https://www.tokyo-shoseki.co.jp/books/81714/
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投稿者: someya
 我孫子市我孫子中学校の生徒さんが職場体験に来館されました。博物館ではどのような人が働いていて、どのような仕事をしているのか、知ってもらえる貴重な機会です。
 博物館での仕事は展示をするだけではありません。職場体験をきっかけに博物館に興味を持ってもらえたらいいなと思いながら取り組み、私にとってはあっという間の一日でした。展示室での作業、標本が収蔵してある収蔵庫での作業、イベントの準備など、様々な業務を体験してもらいました。
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▲本で調べながら分類順に標本をしまいました
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▲ミュージアムショップで販売業務を体験
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▲見やすいパネルって?解説で使うシートや案内表示をつくりました
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▲作品が完成しました
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投稿者: odaya
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△チュウジシギ雄成鳥の尾羽(20枚の個体)

10月21日に、2023年10月の「鳥のサイエンストーク」を実施しました。これまでと同様にYoutube liveを用いたライブ配信で行いました。今回は、鳥の博物館の小田谷が「ジシギの尾羽を調べてみたら」と題してお話ししました。

ジシギ類とは、チドリ目シギ科のうち、タシギ属とそれに近縁な数種を含むグループです。鳥の尾羽は12枚のものが多く、10枚や14枚のものもいますが、種の中での尾羽の枚数は比較的安定しています。ところが、ジシギ類は14枚以上の尾羽を持ち、近縁種の間でその枚数が異なること、種の中で様々な枚数を持つものがいることが知られています。しかし、その枚数ごとの頻度などに関する情報は乏しく、種によっては混乱が生じていました。

そこで、ジシギ類の種ごとの尾羽の枚数の変異を整理し、その原因を調べるため、標識調査の際に捕獲した生きた鳥の尾羽の枚数を数え、その形態(長さ、太さ、羽色)を記録する調査を行いました。2012年から2023年まで、4種のジシギ類について合計1241羽の尾羽を調査し、その枚数ごとの頻度を調べました。その結果、種ごとに以下のことが分かりました。

・タシギでは変異の幅は12−16枚で14枚の個体が最も多い
・オオジシギでは変異の幅は14−20枚で、16枚と18枚の個体が多い
・チュウジシギでは変異の幅は16−22枚で、18枚と20枚の個体が多い
・ハリオシギでは変異の幅は22−28枚で、24枚と26枚の個体が多い

チュウジシギでは、多くの文献に「尾羽の枚数は20−22枚」と記載されていますから、このことは実際の頻度の分布と異なっていることが分かりました。このことからは、尾羽が18枚の個体について、オオジシギなのかチュウジシギなのかは、他の特徴も併せて判断する必要があるという事がいえます。

それでは、種内で見られる変異は何によって決まっているのでしょうか?この問いについて、オオジシギとチュウジシギを対象に、詳しく調べてみました。これまでに、この2種では、先行研究によって、性別によって尾羽の枚数が異なることが示されていました。私の研究では、オオジシギについては年齢にかかわらずサンプルを収集し、チュウジシギについてはサンプル数を増やし、枚数以外の形態についても分析を行いました。

オオジシギ、チュウジシギともに、雄のほうが雌よりも尾羽の枚数が多い傾向がありました。特に、チュウジシギの尾羽が18枚の個体は、そのほとんどが雌でした。チュウジシギは2つの個体群で尾羽の枚数の頻度に大きな違いはありませんでしたが、西側の個体群のほうが21−22枚の個体の割合が高い可能性があります。尾羽の長さは、どの種でも成鳥のほうが幼鳥よりも長く、雄のほうが雌よりも長い傾向がありました。また、チュウジシギの個体群の間では、西側の個体群のほうが尾羽が短い傾向がありました。

尾羽の幅は、中央から5番目の尾羽で、オオジシギのほうがチュウジシギよりも顕著に太いことが分かりました。羽色の点では、両種ともに幼鳥のほうが成鳥よりも外側尾羽の地色の暗色部が淡く、白色斑が多い傾向にありました。尾羽の形状や羽色の性差についてはまだ詳しく調査できていませんが、雄のほうが雌よりも外側尾羽の湾曲が大きく、羽色が暗い傾向があるようです。

以上の事から、尾羽の枚数には性別による違い、尾羽の形状には性別と年齢による違いがあることが分かりました。チュウジシギの地域によるこれらの違いについては、これから調査を進めていきたいと考えています。
これらの様々な種内の変異を踏まえることで、より正確な種の識別や生息分布域の把握につながっていくことが期待されます。

講演のあとには、尾羽の計測の方法や、ジシギ類の外側尾羽の形状の生態的な意味などについて質問が寄せられ、小田谷からお答えしました。

今回のオンライン講演は、最大同時に133人の方に視聴いただきました。ご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。今回のお話しは、11月4日(土)まで見逃し配信を行います。配信したURLと同一の以下のリンクよりご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=jnrWvyla7no

11月は鳥のサイエンストークはお休みです。次回、12月の鳥のサイエンストークは、山階鳥類研究所の水田さんに、アマミヤマシギの移動や寿命についての研究結果をお話しいただきます。配信方法などについては、山階鳥類研究所・我孫子市鳥の博物館ウェブサイトで改めてご案内します。次回もぜひご視聴ください。
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投稿者: mochizuki
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9月3日に鳥博セミナーをオンライン配信にて実施しました。
今回は北九州市⽴⾃然史・歴史博物館(いのちのたび博物館)学芸員の中原亨さんに「越冬地から切り拓くノスリ研究の新境地」と題してお話いただきました。

ノスリはカラスくらいの大きさの猛禽で、ネズミやモグラ、小鳥や昆虫などの小動物を食べます。日本にいるノスリ(学名Buteo japonicus)はかつてヨーロッパノスリ(Buteo buteo)の亜種とされていましたが、現在は別種扱いとなっています。日本には渡りをするものと渡りをしないものがいて、北日本にいるノスリは秋になると南に渡って越冬します。西日本で見られるノスリはほとんどが越冬個体です。

西日本で越冬するノスリはどのような環境で暮らしているのでしょうか?
中原さんたちの研究グループは、ノスリにGPSロガーを装着して、行動圏の広さや環境を調べてみました。行動圏の広さは地域や個体によってばらつきがあり、長崎の個体は福岡よりも狭い範囲を行動圏としていること、利用している環境は地域によって大きく異なることが分かりました。

また越冬地では、時々茶色いノスリが見られることがあります。普通のノスリは喉から腹にかけて白い色をしていますが、この部分が茶色いノスリの正体は一体何でしょうか。中原さんはこの茶色いノスリがユーラシア大陸の亜種(学名B. j. burmanicus)である可能性を考え、DNAの解析や繁殖地を探す追跡調査をはじめました。

九州で28個体のノスリを捕まえDNA配列を調べたところ、白い見た目のノスリ24個体は日本の亜種と一致し、茶色い見た目のノスリ 4個体は大陸亜種と一致する結果となりました。またGPSロガーの追跡調査では、茶色いノスリは全て朝鮮半島を渡ってロシアの方まで渡って行ったほか、白いノスリは北日本の方に渡っていったことが明らかになりました。
DNA解析とGPSロガーの結果から、茶色いノスリはユーラシア大陸の亜種であると言えるでしょう。
中原さんは、ノスリが上昇気流や追い風を利用して渡りをすることから、上昇気流の発生しない日本海を避けて渡りを行っている可能性を指摘し、大陸と日本の2亜種に分かれたのではないかと考察しています。

その他に、九州で越冬するノスリは基本的に1羽ずつの縄張りを持つことが多いのですが、まれに2羽が同じ縄張り内にいることを中原さんの研究グループは発見しました。一年中同じ場所にいる留鳥の地域では、つがいの2羽が冬も一緒にいる例はありますが、越冬地で2羽一緒にいることはとても珍しく、この2羽がつがいであるのか、どんな関係性なのかはよく分かっていませんでした。そこで、中原さんたちがこの”2羽どまり”を捕まえて追跡調査を行ったところ、この2羽は雌雄の組み合わせであったものの、繁殖期にはそれぞれ別の場所に渡って行ったことが分かりました。
2羽どまりのノスリは繁殖地が異なることから、おそらくつがいでは無いと考えられますが、兄弟などの血縁関係があるのか、浮気相手であるのか、冬だけの共同関係なのか、今後の調査で明らかにしていきたいそうです。

講演の後には、雌雄での行動圏の違いや調査方法についての質問が多く寄せられ、中原さんにお答えいただきました。
今回の鳥博セミナーは最大同時に252人にご視聴いただきました。ご視聴いただいた皆様ありがとうございました。

企画展「猛禽 −タカ・フクロウ・ハヤブサ−」では今回ご紹介いただいたノスリの他、様々な猛禽類の生態やからだの仕組みをご紹介しています。企画展は11月5日までの開催となっておりますので、ぜひ期間中にご来館ください。

今回の講演のレジュメはこちら

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投稿者: odaya
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8月19日に、2023年8月の「鳥のサイエンストーク」を実施しました。これまでと同様にYoutube liveを用いたライブ配信で行いました。今回は、山階鳥類研究所の山崎剛史さんに、「実は2種いたアホウドリ、名前はどうなる?」と題してお話しいただきました。

アホウドリは、北太平洋で最大の海鳥で、かつては伊豆諸島から台湾周辺の島々まで広く繁殖分布していました。アホウドリは繁殖地ではすぐに飛び立てず、人を恐れないため、羽毛の採取の為に乱獲され、絶滅の危機に瀕してしまいました。その後の保護活動によって個体数は回復していますが、現在の主な生息地は伊豆諸島の鳥島と尖閣諸島の2か所に限られ、小笠原諸島の聟島列島では再導入された個体群が少数繁殖しています。

山階鳥類研究所が継続してきた鳥島での標識調査と保全活動の際に、尖閣諸島生まれと考えられる足環のない個体がしばしば確認されてきました(鳥島生まれの個体は基本的にすべて足環が付けられているため)。こうした個体(以下、「尖閣系」)は体の大きさが小さく、嘴が細長い形態が鳥島で繁殖しているアホウドリ(以下、「鳥島系」)とは異なっていることが知られていました。何年もの間、保全活動の為に設置されたデコイに対して求愛行動を行った「デコちゃん」と名付けられた個体も尖閣系でした。

これとは別に、北海道大学の江田さんたちは、遺跡から出土した骨の形態やDNAの分析により、アホウドリの種内に2つのグループが存在することを明らかにしました。これらの違いは、「鳥島系」と「尖閣系」の違いと一致し、両者には生殖隔離が見られることも明らかになったため、現在のアホウドリには、種レベルの違いに相当する2つのグループが存在することが明らかになりました(これらの研究については第31回鳥学講座「センカクアホウドリ発見記」の報告で詳しく紹介しています)。

これらの研究によってアホウドリが2種に分かれることになりましたが、それぞれの学名をどうするのかは議論が必要です。山崎さんたちは、動物の学名の国際的なルールを定めた「国際動物命名規約」に基づき、この2つのグループにそれぞれどのような学名を付ければよいかを検討しました。種を記載するときに規準になる標本は、「タイプ標本」と呼ばれます。現在使われているアホウドリの学名であるPhoebastria albatrusのタイプ標本は、探検家のステラ―によって現在のオホーツク海で採集され、ドイツ人の博物学者であるパラスによって記載されました。しかし、この標本は、19世紀に廃棄されてしまっていたことがわかったのです。

そのため、山崎さんたちは、本来のタイプ標本と同じオホーツク海で採集され、サンクトペテルブルグ博物館に保存されていた標本を「ネオタイプ」に指定し、このネオタイプの嘴の形態を調べて「尖閣系」に該当することを明らかにしました。これらのことから、現在のPhoebastria albatrusという学名は尖閣系のアホウドリに引き継がれることになります。

それでは、「鳥島系」の学名はどのようになるのでしょうか? 実は、アホウドリには4つの異名が存在します。今後、これらに対応するタイプ標本を探し、「鳥島系」と「尖閣系」のどちらに一致するのかを検討していく必要があります。これらについて記載の年が古い順から確認をすすめ、タイプ標本が「鳥島系」の種であれば、その学名を鳥島系のアホウドリに用い、一致する標本が見つからなければ新しい名前を付けることになります。それぞれにどのような学名が適用されるのか、今後の研究で明らかになる事に期待しましょう。

講演のあとには、両種の交雑個体の有無と雑種の繁殖可能性、ネオタイプを1点に絞る理由などについて、多くの質問やコメントが寄せられ、山崎さんにわかりやすくお答えいただきました。

今回のオンライン講演は、最大同時に87人の方に視聴いただきました。ご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。今回のお話しは、9月2日(土)まで見逃し配信を行います。配信したURLと同一の以下のリンクよりご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=F4W_JGPKLY0

9月は鳥のサイエンストークはお休みです。次回、10月の鳥のサイエンストークは、鳥の博物館の小田谷が、ジシギ類の尾羽の枚数や形態についての研究結果をお話しします。配信方法などについては、山階鳥類研究所・我孫子市鳥の博物館ウェブサイトで改めてご案内します。次回もぜひご視聴ください。

今回のお話の元になった論文(英文):
Yamasaki T, Eda M, Schodde R & Loskot V (2022) Neotype designation of the Short-tailed Albatross Phoebastria albatrus (Pallas, 1769) (Aves: Procellariiformes: Diomedeidae). Zootaxa 5124(1): 081-087.
https://www.biotaxa.org/Zootaxa/article/view/zootaxa.5124.1.6
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投稿者: odaya
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△巣箱で営巣したゴジュウカラの雛

7月15日に、2023年7月の「鳥のサイエンストーク」を実施しました。これまでと同様にYoutube liveを用いたライブ配信で行いました。今回は、山階鳥類研究所の油田照秋さんに、「ゴジュウカラってどんな鳥?」と題してお話しいただきました。

ゴジュウカラは、ヨーロッパからカムチャッカ半島まで、ユーラシア大陸に広く分布する鳥で、日本国内では北海道から九州にかけて分布しています。平地の林にも分布する北海道以外では、比較的標高の高い山地にのみ分布しており、あまりなじみのない鳥かもしれません。広葉樹や針葉樹との混交林を好み、夏には昆虫、冬には植物の種子を主に食べます。カラ類の混群に入り、木の幹を頭を下にして移動することができるなど、特徴的な行動をすることが知られています。

ゴジュウカラは、シジュウカラなどに比べて巣箱の利用率が低く、ヨーロッパ以外の地域ではあまり生態が研究されてきませんでした。日本国内では、それぞれ3〜4巣を調べた古い研究が2つあるだけで、その繁殖生態についてはまだよくわかっていませんでした。

油田さんたちは、シジュウカラの生態研究のために設置した巣箱に入ったゴジュウカラの繁殖生態を調査しました。2009年から2010年と2012年から2015年の6シーズンの繁殖期に、北海道大学の苫小牧研究林の中に300個の巣箱を設置し、5〜8月の繁殖期に巣箱内の繁殖状況を調べました。その結果、合計9回のゴジュウカラの繁殖が確認されたそうです。

ゴジュウカラの巣は、巣材にツルアジサイの樹皮を用い、巣箱の底に敷きつめます。シジュウカラなどで見られる獣毛を使った産座は作りません。さらに、泥を巣箱の中に運んできて、入り口の大きさを狭めたり、天井の隙間に塗り込んだりするそうです。

調べた9回の巣箱での繁殖では、最初の卵の産卵日は平均5月8日、一腹卵数は平均7.8個、抱卵期間は平均18.6日、巣内での育雛期間は平均20.4日だったそうです。これらの値をヨーロッパでの調査結果と比較すると、繁殖開始時期は遅く、一腹卵数は多め(最大9)とのことで、シジュウカラでも同様の違いがみられたそうです。また、抱卵期間が長く、育雛期間が短いそうで、これらはそれぞれ、北海道の低い気温と餌の豊富さと関係していそうだとのことでした。9回の繁殖のうち少なくとも1羽が巣立ちした巣は5巣で、繁殖失敗の要因としては、猛禽類やテンによる捕食などがあったそうです。

講演のあとに、巣箱がゴジュウカラにあまり利用されない理由や、雄と雌の違い、ヒナに給餌する昆虫の種類などについて、視聴者の方からご質問をいただき、油田さんにお答えいただきました。

今回のオンライン講演は、最大同時に71人の方に視聴いただきました。ご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。今回は、7月29日(土)まで見逃し配信を行います。配信したURLと同一の以下のリンクよりご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=MopkBkDhW54

次回、8月の鳥のサイエンストークは、山階鳥類研究所の山崎さんに、アホウドリの分類の変更と学名についてお話しいただきます。配信方法などについては、山階鳥類研究所・我孫子市鳥の博物館ウェブサイトで改めてご案内します。次回もぜひご視聴ください。

参考資料:

今回のお話の元になった論文
Yuta T & Nomi D (2019) Breeding Biology of the Eurasian Nuthatch Sitta europaea in Northern Japan. J. Yamashina Inst. Ornithol 51: 62‒67.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jyio/51/1/51_62/_article/-char/ja/
(英文ですが和文の要旨があります)
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投稿者: mochizuki
6月17日(土)に松戸市で行われたイベント「道合第二公園お楽しみ会」にてブース出展をしました!
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イベントでは3Dプリントで作った標本の模型を展示したほか、標本3Dデータを使ったほねほねサイコロを配布しました。

野外に本物の標本を持ち出すのは破損のリスクがあって難しいのですが、3Dプリントの模型は自由に見て触ってもらえるので、野外のイベントで大活躍でした。

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スズメとフクロウの頭の違いを説明しているところ。


今回展示した3Dプリント模型は、以下の7種類です。(同じ種類で大きさの違う物もあります)
カルガモ嘴、スズメ頭骨、フクロウ頭骨
ハヤブサ足、オオバン足、アカエリカイツブリ足、ゴイサギ足
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鳥の博物館ではこの数年、標本の3Dデータ化と、3Dプリントの標本模型の作成に取り組んでいます。
これまでに鳥の頭骨3種類、鳥の足7種類の3Dデータを作成、公開しました。
このデータはSketchfabのサイト(リンク)から見ることができるので、皆さまぜひご覧ください。
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投稿者: odaya
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△埼玉鴨場で放鳥されたオナガガモ。

6月17日に、2023年6月の「鳥のサイエンストーク」を実施しました。これまでと同様にYoutube liveを用いたライブ配信で行いました。今回は、山階鳥類研究所の仲村 昇さんに、「宮内庁埼玉鴨場での50年間のカモ類捕獲数の推移」と題してお話しいただきました。

宮内庁では、埼玉県と千葉県に1か所ずつある鴨場で、伝統的なカモの引堀猟を保存・継承しています。この猟は、かつては狩猟の目的で行われていましたが、内外の賓客接遇の場としての役割に加え、1971年からは捕獲したカモ類に足環を付けて放鳥する鳥類標識調査が行われています。今回は、2020年までの放鳥記録からわかったことについてお話しいただきました。

鳥類標識調査は、固有の番号の刻まれた金属の足環を鳥の脚に装着し、鳥1羽1羽を区別して鳥の渡りや寿命を調べるものです。今回仲村さんが分析を行った埼玉鴨場では、50年間でマガモおよそ6800件、オナガガモ62000件の捕獲データが得られました。これらは、新しく足環を付けたもの(新規個体)と、前年以前に同所で標識したものが再度捕獲されたものの両方が含まれます。

越冬期ごとの捕獲個体数と新規個体の割合を調べたところ、マガモは1996年ごろから、オナガガモは2005年頃から捕獲個体数が減少していました。さらに、両種ともに、近年になって再捕獲個体の割合が増えていることが分かりました。ここで分析した再捕獲個体は確実に成鳥なので、このことからは、鴨場に渡来するカモのうち、幼鳥の割合が減少していることが示唆されます。また、マガモでは、捕獲される個体のうち、雄の割合が低くなっていることがわかりました。マガモでは高緯度ほど雄が多い傾向があることから、このことは越冬分布の変化とも関連している可能性が示唆されました。

個体数と幼鳥率の減少の要因として、(1)カモ類の繁殖率が低下している、(2)越冬分布が変化している、(3)周辺の環境が変化している、という3つの可能性が考えられ、今回明らかになった捕獲個体数や新規個体の割合の変化は、これらの要因のうち複数が関係している可能性が高いとのことです。

講演のあとに、鴨場での捕獲調査が現在どのように行われているかについて、視聴者の方からご質問をいただき、仲村さんにお答えいただきました。

今回のオンライン講演は、最大同時に46人の方に視聴いただきました。ご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。今回は、7月1日(土)まで見逃し配信を行います。配信したURLと同一の以下のリンクよりご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=T2ghxWfdAPo

次回、7月の鳥のサイエンストークは、山階鳥類研究所の油田さんに、ゴジュウカラの特徴や繁殖生態についてお話しいただきます。配信方法などについては、山階鳥類研究所・我孫子市鳥の博物館ウェブサイトで改めてご案内します。次回もぜひご視聴ください。

参考資料:

標識調査の年度別報告書(今回のお話は、令和4年度報告書に掲載されているものです)
https://www.biodic.go.jp/banding/report.html

環境省のガンカモ類の生息調査
https://www.biodic.go.jp/gankamo/gankamo_top.html

宮内庁ウェブサイト「鴨の捕獲・鴨場の接遇」
https://www.kunaicho.go.jp/about/gokomu/shinzen/gaikodan/gaikodan01.html
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投稿者: odaya
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△首に発信機を装着されたコクガン

5月20日に、2023年5月の「鳥のサイエンストーク」を実施しました。これまでと同様にYoutube liveを用いたライブ配信で行いました。今回は、山階鳥類研究所の澤 祐介さんに、「ガン類はどんな環境を使っているか 〜発信器でわかること〜」と題してお話しいただきました。

澤さんたちのグループでは、日本に渡ってくるガン類の渡りルートの解明のため、発信機を装着して個体の追跡を行っています。2017年からコクガンの追跡を開始され、2023年現在は日本に渡来する6種の追跡プロジェクトを進められています。

これらの追跡プロジェクトでは、国をまたぐようなダイナミックな渡りの動きだけではなく、いつ、どのような環境を利用したのか?という詳細なデータを分析することもできます。今回は、コクガンの追跡データを用いて明らかになったことについてお話しいただきました。

コクガンは、小型のガンの仲間で、日本国内では唯一、沿岸域を主な生活の場とする種類です。これまで澤さんたちが行ってきた調査で、日本で越冬するコクガンは、春にはオホーツク海を縦断してオホーツク海北岸の中継地で短期間過ごしたあと、陸地の上を一気に飛んで北極海沿岸の繁殖地まで渡ることが分かりました。また、秋には沿岸沿いに東側に移動したのち、カムチャッカ半島の東側を少しずつ移動して日本に戻ってくることが分かり、中国まで渡っているものがいることが分かりました。

これらの渡り経路のうち、いくつかの渡来地はこれまで知られていない、または情報が非常に乏しいものでした。そこで、澤さんたちは現地の研究者と協力して、ロシアのノボシビルスク諸島が14000羽ほどが利用する換羽地であること、オホーツク海北岸の湿地が春の中継地であること、中国の山東半島先端部の沿岸域が越冬地であることを突き止められました。中国の越冬地は1990年代に一度確認されただけで、それ以来の再発見となりました。

春と秋の重要な中継地として利用されている野付半島の位置する道東地域では、季節的な環境利用の違いや周辺の渡来地との行き来などを解析されました。秋の渡り時期には捕獲場所である野付半島を中心に風連湖や国後島と行き来する個体が多い一方、春には風連湖をあまり利用せず、野付半島と国後島を行き来する個体が多いこと、遅い時期ほど国後島側を利用する個体の割合が高くなることが分かりました。

さらに、野付半島では、基本的に春・秋ともに昼間は浅い場所を、夜には深い場所を利用する傾向がありましたが、秋には夜に干潮になった場合に浅い場所を利用することが多いことが分かりました。これは、秋には渡りのエネルギー蓄積の為に短時間にたくさん採食する必要があることと関連していそうだとのことでした。

野付湾の鳥獣保護区は、コクガンが秋の渡り時期に使っていた範囲の74%(日中は84%、夜間は64%)をカバーしていました。現状の保護区に3劼離丱奪侫,鮴澆韻襪函△海離バー率は95%に向上するそうです。このような生息地の利用環境範囲の情報を、今後の保全に証拠として活用していきたいとのことでした。

このように渡りルートを解明し、重要生息地を洗い出し、その生息地の利用状況を詳しく解析することで、渡り鳥の適切な保全を進めていきたいとのお話で、講演を締めくくられました。

講演のあとに、コクガンの春と秋の渡り経路が違う理由や、アジアと北米の越冬地間での分散があるかどうかなどについて、視聴者の皆さんからのご質問をいただき、澤さんにお答えいただきました。

今回のオンライン講演は、最大同時に48人の方に視聴いただきました。ご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。今回は、6月3日(土)まで見逃し配信を行います。配信したURLと同一の以下のリンクよりご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=7Cealax4hkM

次回、6月の鳥のサイエンストークは、山階鳥類研究所の仲村さんに、埼玉鴨場におけるカモ類の標識調査からわかったことについてお話しいただきます。配信方法などについては、山階鳥類研究所・我孫子市鳥の博物館ウェブサイトで改めてご案内します。次回もぜひご視聴ください。

参考情報:
東アジアのガン類の最新情報については、2023年1月に行われた国際シンポジウムの講演をyoutubeでご視聴いただけます。
https://www.youtube.com/watch?v=x0A9V3W369E
カテゴリ: General
投稿者: iwamoto
 2023年5月14日(日)に、「Enjoy 手賀沼!2023」で、第34回バードウィーク手賀沼探鳥会を実施しました。この観察会は、山階鳥類研究所の後援をいただき、我孫子野鳥を守る会と我孫子市鳥の博物館が共催で開催しているものです。今回はコロナ禍前の受付方法(当日、現地にて受付)に戻して開催しました。

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▲集合場所の様子

 前日の予報では降水確率がかなり高かったのですが、直前になって、午前中は降らない予報に変わりました。快適な天気の中、手賀沼沿いを歩いてバードウォッチングを楽しみました。
 1時間コース(1班)と2時間コース(3班)の4つの班に分かれて出発し、鳥を探しました。

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▲手賀沼遊歩道から観察を行いました。

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▲すぐ近くまで寄ってきたキジバト

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▲水田で餌を探していたアオサギ

 各班を合計して31種に会うことができ、我孫子野鳥を守る会の皆様にサポートいただいたおかげで重質した探鳥会となりました。

 参加者数は一般の方54名(一般40名、高大学生2名、小中学生12名)、我孫子野鳥を守る会の会員の皆様31名(一般30名、中学生1名)の参加がありました。ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

 鳥の博物館では「てがたん」をはじめとする自然観察会を執念で実施しておりますので、バードウォッチングに興味を持たれた方は、別の機会にもぜひご参加いただければと思います。
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