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△首に発信機を装着されたコクガン

5月20日に、2023年5月の「鳥のサイエンストーク」を実施しました。これまでと同様にYoutube liveを用いたライブ配信で行いました。今回は、山階鳥類研究所の澤 祐介さんに、「ガン類はどんな環境を使っているか 〜発信器でわかること〜」と題してお話しいただきました。

澤さんたちのグループでは、日本に渡ってくるガン類の渡りルートの解明のため、発信機を装着して個体の追跡を行っています。2017年からコクガンの追跡を開始され、2023年現在は日本に渡来する6種の追跡プロジェクトを進められています。

これらの追跡プロジェクトでは、国をまたぐようなダイナミックな渡りの動きだけではなく、いつ、どのような環境を利用したのか?という詳細なデータを分析することもできます。今回は、コクガンの追跡データを用いて明らかになったことについてお話しいただきました。

コクガンは、小型のガンの仲間で、日本国内では唯一、沿岸域を主な生活の場とする種類です。これまで澤さんたちが行ってきた調査で、日本で越冬するコクガンは、春にはオホーツク海を縦断してオホーツク海北岸の中継地で短期間過ごしたあと、陸地の上を一気に飛んで北極海沿岸の繁殖地まで渡ることが分かりました。また、秋には沿岸沿いに東側に移動したのち、カムチャッカ半島の東側を少しずつ移動して日本に戻ってくることが分かり、中国まで渡っているものがいることが分かりました。

これらの渡り経路のうち、いくつかの渡来地はこれまで知られていない、または情報が非常に乏しいものでした。そこで、澤さんたちは現地の研究者と協力して、ロシアのノボシビルスク諸島が14000羽ほどが利用する換羽地であること、オホーツク海北岸の湿地が春の中継地であること、中国の山東半島先端部の沿岸域が越冬地であることを突き止められました。中国の越冬地は1990年代に一度確認されただけで、それ以来の再発見となりました。

春と秋の重要な中継地として利用されている野付半島の位置する道東地域では、季節的な環境利用の違いや周辺の渡来地との行き来などを解析されました。秋の渡り時期には捕獲場所である野付半島を中心に風連湖や国後島と行き来する個体が多い一方、春には風連湖をあまり利用せず、野付半島と国後島を行き来する個体が多いこと、遅い時期ほど国後島側を利用する個体の割合が高くなることが分かりました。

さらに、野付半島では、基本的に春・秋ともに昼間は浅い場所を、夜には深い場所を利用する傾向がありましたが、秋には夜に干潮になった場合に浅い場所を利用することが多いことが分かりました。これは、秋には渡りのエネルギー蓄積の為に短時間にたくさん採食する必要があることと関連していそうだとのことでした。

野付湾の鳥獣保護区は、コクガンが秋の渡り時期に使っていた範囲の74%(日中は84%、夜間は64%)をカバーしていました。現状の保護区に3劼離丱奪侫,鮴澆韻襪函△海離バー率は95%に向上するそうです。このような生息地の利用環境範囲の情報を、今後の保全に証拠として活用していきたいとのことでした。

このように渡りルートを解明し、重要生息地を洗い出し、その生息地の利用状況を詳しく解析することで、渡り鳥の適切な保全を進めていきたいとのお話で、講演を締めくくられました。

講演のあとに、コクガンの春と秋の渡り経路が違う理由や、アジアと北米の越冬地間での分散があるかどうかなどについて、視聴者の皆さんからのご質問をいただき、澤さんにお答えいただきました。

今回のオンライン講演は、最大同時に48人の方に視聴いただきました。ご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。今回は、6月3日(土)まで見逃し配信を行います。配信したURLと同一の以下のリンクよりご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=7Cealax4hkM

次回、6月の鳥のサイエンストークは、山階鳥類研究所の仲村さんに、埼玉鴨場におけるカモ類の標識調査からわかったことについてお話しいただきます。配信方法などについては、山階鳥類研究所・我孫子市鳥の博物館ウェブサイトで改めてご案内します。次回もぜひご視聴ください。

参考情報:
東アジアのガン類の最新情報については、2023年1月に行われた国際シンポジウムの講演をyoutubeでご視聴いただけます。
https://www.youtube.com/watch?v=x0A9V3W369E
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4月15日に、2023年4月の「鳥のサイエンストーク」を実施しました。これまでと同様にYoutube liveを用いたライブ配信で行いました。今回は、山階鳥類研究所の浅井芝樹さんに、「白い羽色異常はどういう仕組みで起きる?」と題してお話しいただきました。この講演は、2018年8月に鳥の博物館で開催した対面の講演会「テーマトーク」でお話ししたものの再演です。

鳥の羽毛の様々な色は、色素と構造色によって形作られています。鳥の持つ色素は主に2つで、鳥の体内で合成されるメラニン系(黒系のユーメラニンと褐色系のフェオメラニン)と食物由来で取り込まれるカロテノイド系の主な2系統に分けられます。構造色は、羽枝やメラニンの配列の構造によって発色する青や緑の羽色を形作っています。今回は、主にメラニン系の様々な異常によって羽色が白くなるメカニズムについて、大きく分けて以下の6つの仕組みをご紹介いただきました。(2)〜(6)の名称の訳語は浅井さんによるものです。

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(1)Albino アルビノ
遺伝的にメラニンを作る酵素を持たず、2種のメラニンをともに合成できないもの。全身が白く、眼も赤い。体の一部にメラニン由来の色が出ているものはアルビノではなく、しばしば「部分アルビノ」といわれるものは定義上存在しない。眼に入る光を遮ることができないので、飛翔に視力が重要な鳥では、野外での生存は難しいと考えられている。

(2)Leucism 色素配分異常
メラニン芽細胞の異常が原因で、色素細胞が正しく分布しないことによる羽毛の白化。2種のメラニンに影響し、左右対称な白化になりやすい。白化する羽毛は真っ白になり、中途半端にかすれた色にはならない。眼は黒い。

(3)Progressive greying 進行性灰色化
年齢とともに羽色が白くなる現象で、遺伝的でないものもある。病気などが原因で、換羽によってもとの正常な色に戻ることもある。左右対称でないことが多い。眼は黒い。

(4)Brown 褐色変異
メラニンのうち、ユーメラニンの構造が変化することによって起こる異常。フェオメラニンには影響せず、鳥の本来黒い部分が褐色に変化する。紫外線によって脱色されやすく、かなり白っぽくなることがある。眼は黒い。

(5)Dilution 淡色化
メラニンの量が減少することによって起きる異常。2種のメラニンがともに減少して全体に白くなるPastelと、ユーメラニンだけが減少して褐色になるIsabelの2つのタイプがある。Brownと同様に脱色されやすい。眼は黒い。

(6)Ino 色素欠損
2種のメラニンの構造が大規模に変形することによって、もとの黒色は褐色に、褐色は極めて薄くなる異常。淡色な個体は眼の色素も減少して赤っぽくアルビノに似るが、羽毛にはメラニン由来の色素がわずかに見えることで区別できる。しかし、野外だと脱色してしまっていることがある。眼はアルビノよりはずっとよく見えるので、野外でもアルビノよりは生存しやすい可能性が高く、野外で見られるアルビノのような個体の多くはInoである可能性がある。

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白い羽色異常の鳥を見ると、ついついアルビノと言ってしまいそうになりますが、実際には真のアルビノは野外ではほとんど見られないことや、眼が赤く見える場合もアルビノとは限らないことなど、白い羽色異常の鳥の呼び方には注意が必要というお話でした。

実際に野外で白い羽色異常の鳥をご覧になった際には、眼の色が赤いかどうか、白い異常な羽毛は完全に白いか、異常な白化部分は左右対称かどうか、褐色みは残っているかなどに注目すると、この6つの仕組みのいずれが原因となっているか絞り込めるかもしれません。
白い羽色異常は珍しいことですが、どのような特徴が生じているかによってその原因が異なることや、鳥の羽色がどのように形作られているかの仕組みまで想像できることはとても興味深いと感じました。

講演のあとに、異常な色の白い羽毛は換羽しても同じように生えてくるのかや、白い羽色異常では構造色はなぜ生じないのかなどについて、視聴者の皆さんからのご質問をいただき、浅井さんにお答えいただきました。

今回のオンライン講演は、最大同時に63人の方に視聴いただきました。ご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。今回は、4月29日(土)まで見逃し配信を行います。配信したURLと同一の以下のリンクよりご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=uuOZjwSZPzs

次回、5月の鳥のサイエンストークは、山階鳥類研究所の澤さんに、発信機を用いて明らかになったガン類の環境利用についてお話しいただきます。配信方法などについては、山階鳥類研究所・我孫子市鳥の博物館ウェブサイトで改めてご案内します。次回もぜひご視聴ください。

参考資料:
今回のお話のもとになった論文(英語)

van Grouw H (2013) What colour is that bird? The causes and recognition of common colour aberrations in birds. British Birds 106: 17-29.

https://www.researchgate.net/publication/273348895_What_Colour_is_that_bird_The_causes_and_recognition_of_common_colour_aberrations_in_birds


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△通常の亜種エナガ(左)と、眉斑の薄いエナガ(右)

3月18日に、2023年3月の「鳥のサイエンストーク」を実施しました。これまでと同様にYoutube liveを用いたライブ配信で行いました。今回は、我孫子市鳥の博物館の望月みずきが、「眉の薄いエナガはどこにいる?」と題してお話ししました。

エナガは尾の長い小鳥で、ユーラシア大陸の温帯〜亜寒帯の地域に広く分布しています。日本では、南西諸島などを除く各地の森林や、里山や公園などの身近な環境にも生息しています。日本国内に分布するエナガは4つの亜種(地理的な羽色や大きさの変異)に分けられており、北海道には亜種シマエナガ、本州には亜種エナガ、四国と九州には亜種キュウシュウエナガ、対馬には亜種チョウセンエナガが分布しています。このうち、北海道に分布する亜種シマエナガは頭部に斑がなく、一様に白いのが特徴ですが、亜種エナガを含む他の3亜種は濃い眉のような模様(以下、眉とします)があるのが普通です。

ところが、2010年ごろから、千葉県北西部をはじめとする関東地方の一部の地域で、眉が薄かったり、時には亜種シマエナガのようになかったりするエナガが見つかるようになりました。このエナガは、シマエナガよりも全体的に羽色が濃く、体の羽毛の地色の白さがシマエナガに比べて乏しいことから、迷ってやってきたシマエナガではないと考えられました。また、眉の薄さには個体変異が大きいこともわかりました。しかし、このエナガがどのくらいの範囲に分布しているのか、なぜこのような羽色の個体が一部の地域だけに分布するのかはわかっていません。

そこで、千葉県とその周辺地域において、眉の薄いエナガがどこに分布しているのかをアンケート調査や文献、インターネット上に掲載された情報をもとに調べました。その結果、2006年から2022年の間に、眉の薄いエナガが35地点、通常のエナガが32地点で観察された情報が集まりました。眉の薄いエナガは、千葉県の中では北西部だけではなく全域に分布しており、東端の銚子市や南端の館山市でも見つかりました。また、渡良瀬遊水地や茨城県石岡市などの北部の地域、西側は埼玉県でも数例の目撃情報が得られたそうです。一方で、神奈川県や東京都の西部からは目撃情報が得られず、これらの地域には眉の薄いエナガは分布していない可能性が示唆されました。また、どの観察情報も、通常の濃い眉の個体の中に薄い眉の個体が混ざっているという状況で、眉の薄い個体のみの群れは記録されませんでした。

今後は、亜種シマエナガとの交雑の可能性を検証するための遺伝的な調査や、他の地域との形態や羽色の比較を行っていきたいとのことでした。

講演のあとに、眉の薄さに地理的な変異がみられるかどうかや、声の違い、頭部以外の羽色の違いがあるかどうかなどについて、視聴者の皆さんからのご質問をいただき、望月からお答えしました。

今回のオンライン講演は、最大同時に85人の方に視聴いただきました。ご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。今回は、4月1日(土)まで見逃し配信を行います。配信したURLと同一の以下のリンクよりご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=i-QhLiDK-tQ

次回、4月の鳥のサイエンストークは、山階鳥類研究所の浅井さんに、鳥類に見られる白い羽毛の羽色異常についてお話しいただきます。配信方法などについては、山階鳥類研究所・我孫子市鳥の博物館ウェブサイトで改めてご案内します。次回もぜひご視聴ください。

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△翼を開いて走り出すヤンバルクイナ

2月18日に、2023年2月の「鳥のサイエンストーク」を実施しました。これまでと同様にYoutube liveを用いたライブ配信で行いました。今回は、山階鳥類研究所副所長の尾崎清明さんに「ヤンバルクイナを真の遺産とするために」と題してお話しいただきました。

ヤンバルクイナは、世界で沖縄島だけに分布する飛べないクイナの仲間で、1981年に山階鳥類研究所の調査チームによって新種として記載されました。しかし、発見されてから10年ほど経って1990年代に入ると、ヤンバルクイナの分布域の南限附近から姿を消しはじめ、分布域が縮小していきました。これは、外来種の捕食者であるフイリマングース(以下、マングース)の北上に伴うもので、ヤンバルクイナはこの影響を強く受けていたと考えられています。2008年には、マングースの糞からヤンバルクイナの羽毛が見つかり、直接的な捕食の証拠が得られています。

2006年に国際自然保護連合の専門家会議によって行われたシミュレーションによると、何の対策も行わなければ、2030年ごろまでにヤンバルクイナは絶滅してしまう可能性が高いものの、マングースを早期に排除できれば、当面の絶滅を回避できる可能性が高いとの予測がなされました。これに従って、2000年代からマングースの捕獲やフェンスの設置によるマングースの分布拡大の抑制の対策が始まり、現在までにやんばる地域におけるマングースの低密度化に成功しました。これにより、近年ではヤンバルクイナの個体数は回復傾向にあるそうです。

続いて、世界に分布する無飛翔性の絶滅危惧種のクイナ類の保全の例として、グアムクイナとロードハウクイナの例をご紹介いただきました。両種ともに、外来種の捕食者の影響で個体数を減らし、積極的な保全活動によって絶滅を免れているものです。これらの種の保全においては、外来種の捕食者のコントロールをしっかり行うことが重要だということが分かっています。

現在のヤンバルクイナの保全において大きな課題は、分布域が狭く生息可能な個体数が少ないことと、未だにマングースやネコなどの外来の捕食者の影響があることです。遺跡からの骨の出土や古い分布状況から、ヤンバルクイナのかつての分布域はより広く、沖縄島中部にも分布していたのではないかということが示唆されています。マングースを沖縄島全体から排除し、ヤンバルクイナをはじめとする固有の野生動物の生息可能な地域を拡大することが、やんばる地域の生態系を真の遺産として未来へ引き継いでいくことにつながるだろう、というお話で、講演を締めくくられました。

講演のあとに、無飛翔性の絶滅危惧種ではないクイナ科の鳥や、グアムクイナで行われているもともとの生息地ではない場所への再導入について、視聴者の皆さんからのご質問をいただき、尾崎さんにお答えいただきました。

今回のオンライン講演は、最大同時に58人の方に視聴いただきました。ご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。今回は、3月18日(土)まで見逃し配信を行います。配信したURLと同一の以下のリンクよりご覧ください。
https://youtube.com/live/QEZUUFC-VDs

次回、3月の鳥のサイエンストークは、鳥の博物館の望月が、関東地方でみられる眉斑の薄いエナガの分布についてお話しします。配信方法などについては、山階鳥類研究所・我孫子市鳥の博物館ウェブサイトで改めてご案内します。次回もぜひご視聴ください。
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△鳥島で繁殖するカンムリウミスズメ

1月21日に、2023年1月の「鳥のサイエンストーク」を実施しました。これまでと同様にYoutube liveを用いたライブ配信で行いました。今回は、山階鳥類研究所研究員の富田直樹さんに「アホウドリをはじめとした鳥島で繁殖する海鳥の近況」と題してお話しいただきました。

鳥島は、伊豆諸島南部に位置し、最も近くの有人島である八丈島からはおよそ300卞遒法東京からは600卞遒飽銘屬靴討い訐箜い量疑妖腓任后アホウドリの最大の繁殖地として広く知られていますが、他にも絶滅危惧種を含む多くの海鳥の繁殖が知られています。今回のご講演では、アホウドリをはじめとする海鳥の生息状況や、近年の個体数の変化、保全についてお話しいただきました。

アホウドリは、かつて伊豆諸島から台湾周辺の島々に広く、多数が分布していました。しかし、明治時代から行われた羽毛採取が目的の乱獲によって個体数が激減し、1949年には絶滅宣言が出されました。その後、1951年に鳥島で再発見され、長谷川博氏をはじめさまざまな人たちによって保全活動が進められてきました。山階鳥類研究所は1991年から調査・保全活動に参画しています。

鳥島内のアホウドリの繁殖地は現在3か所確認されています。島南東部の燕崎はアホウドリが再発見された場所で、急な傾斜の斜面にアホウドリが残されていました。この繁殖地は卵やヒナが転がり落ちたりして繁殖成功率が低く、噴火による影響も懸念されていました。そのため、島内の他の場所に音声やデコイを用いて周辺のアホウドリを誘引し、島の西部の初根崎に新しいコロニーを移動させる試みが1992年から行われました。その結果、2005年からは複数のヒナが巣立つようになり、2022年の秋にはおよそ670巣が確認されています。この数は旧コロニーである燕崎の数を上回るようになったとのことです。さらに、島南東部の子持山に自然に小規模なコロニーが形成されているとのことです。近年では島全体の産卵数も1000を超えるようになり、鳥島のアホウドリの回復は順調に進んでいるとのことでした。

アホウドリに近縁なクロアシアホウドリも、鳥島で繁殖しています。2017年の時点で6000羽が繁殖していると推定されており、ヒナの数も2000羽以上が巣立っていると考えられています。繁殖コロニーはアホウドリのコロニーと同じ場所に加え、鳥島内の4か所に分散して繁殖しているとのことです。小型の海鳥であるオーストンウミツバメやカンムリウミスズメも、鳥島で繁殖が確認されています。しかし、これらの種は外来種であるクマネズミの影響を強く受けており、鳥島の繁殖個体群の絶滅が危惧されています。2017年に一部で殺鼠剤の散布が行われたものの根絶には至っておらず、今後の影響が心配されるとのことです。2009年には、オナガミズナギドリの繁殖が確認されました。オナガミズナギドリは日本では小笠原諸島などで見られますが、鳥島の繁殖地は北大西洋の集団の北限になります。2018年には126巣が確認されているとのことです。

今後の保全上の課題として、アホウドリには形態の異なる2種が含まれることから、それぞれ別の単位として保全を進める必要があること、アホウドリ以外の海鳥についても重要な生息地であると考えられることから、今後もモニタリング調査を継続していく必要があることをお話しされていました。

講演のあとに、クマネズミの駆除活動や、オオミズナギドリとオナガミズナギドリの繁殖分布、島での調査生活などについて、視聴者の皆さんからのご質問をいただき、富田さんにお答えいただきました。

今回のオンライン講演は、最大同時に79人の方に視聴いただきました。ご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。今回は、2月4日(土)まで見逃し配信を行います。配信したURLと同一の以下のリンクよりご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=mQY0rlKMLK4

次回、2月の鳥のサイエンストークは、山階鳥類研究所の尾崎清明さんに、ヤンバルクイナの保全についてお話しいただきます。配信方法などについては、山階鳥類研究所・我孫子市鳥の博物館ウェブサイトで改めてご案内します。次回もぜひご視聴ください。

参考資料:

佐藤文男 (2022) 日本の海鳥の現状と保全の課題―環境省モニタリングサイト1000海鳥調査から―.山階鳥類学雑誌 54(1): 3-53.(オープンアクセス)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jyio/54/1/54_3/_article/-char/ja/

上記論文の電子付録:日本のモニタリングサイト1000 対象海鳥の繁殖状況.(PDFへの直リンクです)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jyio/54/1/54_3/_supplement/_download/54_3_1.pdf

山階鳥類研究所の「アホウドリ 復活への展望」のページ
https://www.yamashina.or.jp/hp/yomimono/albatross/ahou_mokuji.html

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△カモメの仲間のウミネコ。

12月24日に、2022年12月の鳥のサイエンストークを実施しました。これまでと同様にYoutube liveを用いたライブ配信で行いました。今回は、山階鳥類研究所研究員の岩見恭子さんに「鳥の学術標本作り・中級編 ―中型の海鳥を作ろう―」と題してお話しいただき、学術標本の製作の実演もしていただきました。このようなライブ配信は、2021年7月に行った試みに続いて2回目となりました。

まず、鳥の標本を集める目的や保管方法などについてお話しいただきました。剥製を作る大まかな手順を説明いただいてから、さっそく実際の製作に入りました。今回は中型の海鳥であるカモメの仲間のウミネコを材料に、皮むきから縫い合わせるまでの一連の流れを見せていただきました。手元を写したカメラを使って、作業上のポイントを見せていただきながら解説していただいたので、どのように標本が作られているのかがよくわかりました。今回の材料は繁殖地に侵入したキツネによって殺されてしまったもので、体に残る傷も標本製作の際に記録していることをお話しいただきました。

基本的な手順は前回のアカショウビンと大きく変わりませんが、海鳥では個体によって脂肪の量が多いことが特徴です。長期保存に耐えうる標本を製作するには、しっかり皮から脂肪を除去することが重要であることを強調されていました。

講演のあとに、視聴者のみなさんとチャット機能を用いて質疑応答が交わされました。標本が昆虫の食害にあってしまった場合にどのように対応するか、剥製を作る際の衛生管理をどのように行うか、何点くらい作れば上手に作れるようになるかなどについて、岩見さんにわかりやすくお答えいただきました。

今回のオンライン講演は、最大同時に102人の方に視聴いただきました。ご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。今回のライブ配信の見逃し配信は行いません。

次回、2023年1月のテーマトークは、1月21日(土)に、山階鳥類研究所の富田直樹さんに、伊豆諸島の鳥島で繁殖する海鳥についてお話しいただきます。配信方法などについては、山階鳥類研究所・我孫子市鳥の博物館ウェブサイトで改めてご案内します。次回もぜひご視聴ください。

December10日Saturday: 友の会展スタート

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投稿者: someya
 12月10日本日より「第91回企画展第18回友の会展」が始まりました。友の会の同好会には鳥凧同好会・鳥絵同好会・デジカメ同好会・みて歩こう会・万葉集同好会・しちじゅうにこうの会があり、それぞれの活動を楽しまれています。
 今回のテーマ展示ではマンホール蓋に描かれた鳥を紹介しています。担当したのは鳥絵同好会です。何ヶ月も前から打ち合わせを繰り返し、頑張って準備されていました。友の会の活動の成果を紹介する友の会展は来年の1月29日まで開催しています。お見逃しなく。
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▲テーマ展示「マンホール上の鳥たち」
 展示室内を見上げると鳥凧同好会の作品が
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▲デジカメ同好会
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▲鳥絵同好会
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▲鳥凧同好会
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▲万葉集同好会
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▲しちじゅうにこうの会
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▲みて歩こう会
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投稿者: odaya
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11日5日(土)に、第32回JBF鳥学講座を開催しました。今回は、我孫子駅南口にあるアビ―ホールで実施しました。「江戸の鳥の美食学―環境破壊や乱獲がもたらした野鳥食文化の衰退」と題して、東京大学東洋文化研究所教授の菅 豊さんにお話しいただきました。オンラインではない対面での開催は2019年ぶりとなります。

菅さんは、日本と中国をフィールドに、民俗学の視点から、地域社会における自然資源や文化資源の利用や管理のあり方について研究されています。今回は、2021年に出版された「鷹将軍と鶴の味噌汁 江戸の鳥の美食学」(講談社選書メチエ)の内容から、江戸における鳥食文化を中心にお話しいただきました。

日本の伝統的な食といえば刺身や寿司に代表される魚食の文化という印象がありますが、野生の鳥を食べる文化は、縄文時代から続いてきたことが、歴史資料や考古学的な調査からわかっています。特に、江戸時代にはその最盛期を迎え、社会的・政治的に重要な役割を担ったほか、大衆を含めた多くの人々に食べられていました。たとえば、江戸時代初期に著された「江戸料理物語」には、18種の野生の鳥の97以上のレシピが記述されています。
今回は、このような野鳥食文化を復活させようという主張ではなく、このような食文化がかつて社会や政治においてどのような役割を果たしていたのか、なぜ衰退してしまったのかについてご講演いただきました。

鷹狩りは、古代より天皇・貴族のたしなみとして行われており、中世からは武士の社会的な権威を示すための行事として行われてきました。江戸幕府を開いた徳川家康は、その重要性をよく理解しており、鷹狩りの獲物を贈答品として朝廷に献上したり、各地の大名に下賜したりして、政治的な道具として利用してきたそうです。江戸時代の江戸周辺には、将軍家やその分家である御三家が鷹狩りを行う「御拳場(おこぶしば)」や「御借場(おかりば)」があり、この鷹狩りの狩場を守るため、江戸周辺での狩猟や市中への野生の鳥の持ち込みは厳しく管理されていました。

第5代将軍徳川綱吉の時代になると、「生類憐みの令」によって鷹狩りや野生の鳥の取引は禁止されました。しかし、これは逆効果で、密猟が横行することによってかえって鳥の数が減る事態を招いたそうです。その後、徳川吉宗が第8代将軍の座に就くと、かつての鷹場の管理制度が復活し、鷹場の管理と流通の制限が復活しました。幕府に認められた10軒の鳥問屋が、野生の鳥の肉の取引を管理し、一般大衆の食卓にも野鳥の肉料理が上っていました。しかし、幕末期になると、江戸幕府が弱体化するとともに鷹狩りの分化は衰退し、1863年に行われたのを最後に、将軍家による鷹狩りは行われなくなってしまいました。

では、江戸時代にこれだけ栄えた野鳥食分化は、なぜ衰退したのでしょうか? 戦後導入された欧米の養鶏技術によってニワトリの肉の生産量が大きく伸びたこともその理由の一つですが、菅さんは、野生の鳥の数の減少が大きな理由だと指摘されています。開発による生息環境の破壊、明治以降普及して無秩序に行われた狩猟などが減少の原因といえるでしょう。食文化が衰退すると、それを守る人もいなくなるという負のスパイラルに陥り、野鳥の食文化は現在ではごく一部の地域にしか見られなくなってしまいました。このように、資源の適切な管理を怠ったために食文化が消滅の危機に瀕していることは、現代におけるウナギなどの魚にも同じことが言えるでしょう。古くからある一皿の料理を失わないために、野鳥食文化の衰退の歴史を教訓とする必要があるだろう、というお話で講演を締めくくられていました。

講演のあとには、国内の鳥食文化の地域差や、宗教と鳥猟の関係などについて来場者からの質問をいただき、菅さんにわかりやすくお答えいただきました。今回の鳥学講座は、118人の方にご参加いただきました。お話しいただいた菅さん、ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。

今回の講演のレジュメは以下の山階鳥類研究所のウェブサイトに掲載されているリンクよりダウンロードできます。
https://www.yamashina.or.jp/hp/event/event.html#chogakukoza2022

今回のお話の内容が含まれる菅さんの著書
「鷹将軍と鶴の味噌汁 江戸の鳥の美食学」
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000354725
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投稿者: odaya
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10月15日に、2022年10月の鳥のサイエンストークを実施しました。これまでと同様にYoutube liveを用いたライブ配信で行いました。今回は、鳥の博物館の小田谷が「手賀沼の鳥を調べる ―個体数モニタリングと鳥類相―」と題してお話ししました。

鳥の博物館では、開館以来、様々な形で地域の鳥類の調査を続けてきました。今回は、手賀沼とその周辺で行っている個体数のモニタリングと鳥類相の調査についてお話ししました。

鳥の博物館の調査活動の軸となるのは、手賀沼内の鳥類の数を毎月カウントしている手賀沼鳥類センサスです。この調査は、1988年から現在に至るまで(途中5年間の中断をはさんで)継続されています。調査を開始してから現在までの間に減少した種としてカイツブリ・ハシビロガモ・ミコアイサ・コアジサシ、増加した種としてカワウ、ミサゴ、コブハクチョウを紹介し、その推定される原因についてお話ししました。

この調査のほかに、手賀沼のヨシ原の環境を代表する鳥類であるオオバンとオオヨシキリについては、それぞれ毎年4月下旬と5月下旬に、その個体数と分布を記録する調査を行っています。その結果、両種ともに繁殖個体数は減少傾向にあることが示唆されています。

センサス調査に加え、様々な方法を用いて地域の鳥類相の把握に努めています。今回は、標本収集と捕獲・標識調査によって明らかになった鳥類の記録についてご紹介しました。我孫子市で拾得されたオオマシコやニュウナイスズメの鳥の博物館所蔵の標本は地域の貴重な記録であり、標識調査によってマキノセンニュウやオガワコマドリなどのこれまで記録されていなかった鳥類の分布記録も得られました。
今後も、地域の鳥類の情報センターとしての役割を担っていくため、現在行っている調査を継続していきたいと考えています。

講演のあとに、「魚食性の鳥のうち小型の種が減り、大型の種の個体数が回復しているように見えるのはなぜか」「外来植物のナガエツルノゲイトウが鳥類に与える影響はわかっているか」などの視聴者のみなさんからのご質問にお答えしました。

今回のオンライン講演は、最大同時に46人の方に視聴いただきました。ご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。今回のライブ配信は、10月29日(土)まで以下のURLより見逃し配信を行います。
https://youtu.be/aIJn_tp4o98

11月のテーマトークはお休みです。次回、12月のテーマトークは、12月24日(土)に、山階鳥類研究所の岩見恭子さんに、鳥類標本の作製方法について、海鳥類を材料に解説していただきます。実施の日付は、今回に限り、従来の第3土曜日から変更となりますのでご注意ください。配信方法などについては、山階鳥類研究所・我孫子市鳥の博物館ウェブサイトで改めてご案内します。次回もぜひご視聴ください。

参考資料:
手賀沼鳥類センサスの結果
https://www.city.abiko.chiba.jp/bird-mus/info2/tyousakenkyu/teganumatyousa.html

我孫子市・手賀沼鳥類リスト(PDF直リンク)
https://www.city.abiko.chiba.jp/bird-mus/info1/kako.files/abiko_checklist.pdf

カテゴリ: General
投稿者: odaya
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2022年10月1日(土)に、令和4年度の鳥博セミナーをオンライン配信にて開催しました。今回は「カモとハクチョウの冬の暮らし」と題して、公益財団法人宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団の嶋田哲郎さんにお話しいただきました。

カモ科の鳥の仲間は体の大きさの異なる3つのグループにおおまかに分けることができます。小さいカモ類、中型のガン類、大型のハクチョウ類です。国内ではカモ類とハクチョウ類は比較的広い地域に渡来しますが、ガン類の飛来する地域は限定されます。今回は、カモ類とハクチョウ類の渡り、冬の暮らし、人とのかかわりについてお話しいただきました。

カモ科の鳥は公園の池などの身近なところにも飛来し、採食の行動をじっくり観察することができます。また、カモ類はカルガモを除き雌雄で羽の色が大きく異なり、冬につがいを形成することから求愛行動なども観察しやすいグループです。

冬に日本に渡来するハクチョウ類やカモ類は、どこからどのように日本にやってくるのでしょうか? 嶋田さんたちは、国内の越冬地で捕獲した鳥に発信機を装着し、彼らの繁殖地や渡りの経路を調査しました。その結果、オオハクチョウとコハクチョウでは繁殖地の緯度が異なり、前者はタイガ地帯の川の中流域、後者は北極海沿岸のツンドラ地帯で繁殖すること、両種の中継地や渡り経路はよく似ていることを発見されました。また、オナガガモやヒドリガモはマガモに比べて高緯度の地域まで渡りを行うことも確かめられました。

越冬期の生活についても、宮城県北部のフィールドで発信機を装着して調査を行われました。マガモやカルガモは昼間は沼で休息し、夜間になると周辺の水田や水路に飛んで行って採食すること、オナガガモでは年によっては給餌場所に夜も留まるものがいることがわかりました。オオハクチョウはハスの地下茎(レンコン)を好むため、一日中沼の中で採食していますが、水位が高くなってレンコンを採食しづらくなると、周囲の水田で落穂を食べることがわかりました。沼の水位が低く、多くのオオハクチョウがレンコンを食べた翌年夏には、ハスの群落が衰退し、沼の水質が改善したこともあったそうです。

湖沼の中に水草や魚などの餌があるかどうかが、その場所にいるカモ類の種構成を決めているため、沼のカモ類は環境の指標となります。伊豆沼では、カモ類のほとんどが沼の外で採食するマガモなどの種類で、沼の中で水草を食べるヒドリガモ、魚を食べるミコアイサの数は少ない状況が続いています。後者の個体数の減少には、外来生物であるオオクチバスによる小魚の捕食を通じた餌の減少が影響していると考えられており、実際に駆除によってオオクチバスが減ると、ミコアイサの個体数は回復に転じたそうです。

国内でも鳥インフルエンザへの対策のために、2000年代から感染リスクを増大させる野生の鳥への餌づけが制限されるようになりました。嶋田さんたちは、科学的な対策のために、餌づけが鳥たちにとってどのような影響を与えるのかを調査されました。給餌される餌のエネルギーと、鳥の個体数と体重から算出した代謝エネルギーの量を比較すると、厳冬期には餌づけだけでは消費カロリーをまかなえていないことがわかりました。このデータをもとに、餌づけの量をおよそ8割削減して餌場からの分散を促し、消毒などの措置を併せて実施することで、鳥インフルエンザの対策を行っているとのことです。

講演のあとには、カモがハクチョウの糞を食べる際の周辺の状況や、コロナ禍における観光客の減少による餌づけ量の変化、農耕の歴史とカモ類の個体数の変化などについて質問が寄せられ、嶋田さんにお答えいただきました。
今回の鳥学講座は、最大同時に88人の方にご視聴いただきました。お話しいただいた嶋田さん、ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。

今回の講演は10月15日(土)まで、鳥の博物館のYoutubeチャンネルにて見逃し配信を行っています。ご興味があるけれど見逃した方や、もう一度見たい方は以下のリンクからご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=o5glB9aM1Q8

企画展「手賀沼の鳥 ―環境と水鳥 いま・むかし―」では、今回ご紹介いただいたカモ科の鳥を含む手賀沼の水鳥たちの個体数の移り変わりについて展示しています。11月27日(日)までの開催ですので、ぜひ鳥の博物館にもお越しください。


参考資料
・今回の講演のレジュメ(PDF直リンク)
https://www.city.abiko.chiba.jp/bird-mus/gyoji/event/index.files/torihaku_seminar202210.pdf

・知って楽しいカモ学講座 −カモ、ガン、ハクチョウのせかい−
https://www.midorishobo.co.jp/SHOP/1598.html
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