July16日Sunday: 2023年7月の「鳥のサイエンストーク」を実施しました!
△巣箱で営巣したゴジュウカラの雛
7月15日に、2023年7月の「鳥のサイエンストーク」を実施しました。これまでと同様にYoutube liveを用いたライブ配信で行いました。今回は、山階鳥類研究所の油田照秋さんに、「ゴジュウカラってどんな鳥?」と題してお話しいただきました。
ゴジュウカラは、ヨーロッパからカムチャッカ半島まで、ユーラシア大陸に広く分布する鳥で、日本国内では北海道から九州にかけて分布しています。平地の林にも分布する北海道以外では、比較的標高の高い山地にのみ分布しており、あまりなじみのない鳥かもしれません。広葉樹や針葉樹との混交林を好み、夏には昆虫、冬には植物の種子を主に食べます。カラ類の混群に入り、木の幹を頭を下にして移動することができるなど、特徴的な行動をすることが知られています。
ゴジュウカラは、シジュウカラなどに比べて巣箱の利用率が低く、ヨーロッパ以外の地域ではあまり生態が研究されてきませんでした。日本国内では、それぞれ3〜4巣を調べた古い研究が2つあるだけで、その繁殖生態についてはまだよくわかっていませんでした。
油田さんたちは、シジュウカラの生態研究のために設置した巣箱に入ったゴジュウカラの繁殖生態を調査しました。2009年から2010年と2012年から2015年の6シーズンの繁殖期に、北海道大学の苫小牧研究林の中に300個の巣箱を設置し、5〜8月の繁殖期に巣箱内の繁殖状況を調べました。その結果、合計9回のゴジュウカラの繁殖が確認されたそうです。
ゴジュウカラの巣は、巣材にツルアジサイの樹皮を用い、巣箱の底に敷きつめます。シジュウカラなどで見られる獣毛を使った産座は作りません。さらに、泥を巣箱の中に運んできて、入り口の大きさを狭めたり、天井の隙間に塗り込んだりするそうです。
調べた9回の巣箱での繁殖では、最初の卵の産卵日は平均5月8日、一腹卵数は平均7.8個、抱卵期間は平均18.6日、巣内での育雛期間は平均20.4日だったそうです。これらの値をヨーロッパでの調査結果と比較すると、繁殖開始時期は遅く、一腹卵数は多め(最大9)とのことで、シジュウカラでも同様の違いがみられたそうです。また、抱卵期間が長く、育雛期間が短いそうで、これらはそれぞれ、北海道の低い気温と餌の豊富さと関係していそうだとのことでした。9回の繁殖のうち少なくとも1羽が巣立ちした巣は5巣で、繁殖失敗の要因としては、猛禽類やテンによる捕食などがあったそうです。
講演のあとに、巣箱がゴジュウカラにあまり利用されない理由や、雄と雌の違い、ヒナに給餌する昆虫の種類などについて、視聴者の方からご質問をいただき、油田さんにお答えいただきました。
今回のオンライン講演は、最大同時に71人の方に視聴いただきました。ご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。今回は、7月29日(土)まで見逃し配信を行います。配信したURLと同一の以下のリンクよりご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=MopkBkDhW54
次回、8月の鳥のサイエンストークは、山階鳥類研究所の山崎さんに、アホウドリの分類の変更と学名についてお話しいただきます。配信方法などについては、山階鳥類研究所・我孫子市鳥の博物館ウェブサイトで改めてご案内します。次回もぜひご視聴ください。
参考資料:
今回のお話の元になった論文
Yuta T & Nomi D (2019) Breeding Biology of the Eurasian Nuthatch Sitta europaea in Northern Japan. J. Yamashina Inst. Ornithol 51: 62‒67.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jyio/51/1/51_62/_article/-char/ja/
(英文ですが和文の要旨があります)
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