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4月17日に、2021年4月のテーマトークを実施しました。これまでと同様にYoutube liveを用いたライブ配信で行いました。

今回は、山階鳥類研究所保全研究室専門員の千田万里子さんに、「その足環、いつ付けた?鳥類標識調査でわかる長期生存」と題してお話しいただきました。

鳥の寿命を知ることは、生活史を知るための研究においては重要です。しかし、鳥は比較的長寿命であるため、それぞれの種について単一の研究プロジェクトで調査するには限界があります。

鳥類標識調査は、野生の鳥に足環をつけて渡りや寿命を調べる調査です。鳥に足環をつけて放鳥し、その鳥が再び発見されたときに、つけた時点からの経過期間をさかのぼることで、鳥が生存していた期間を知ることができます。これは厳密な寿命とは異なる場合が多いのですが、「少なくともいつからいつまで生きていた」という客観的な情報を得ることができます。

標識調査はすべての鳥を対象にして継続して行われているので、鳥の寿命を総合的に調べる唯一の方法といえます。今回は、1961年から行われている日本の鳥類標識調査において、2017年までに得られた長期生存の記録をまとめた吉安ら(2020)の内容をもとにお話しいただきました。

世界で最も長寿の鳥の記録は、ハワイのミッドウェイ環礁で繁殖しているコアホウドリのメス(ウィズダムと名付けられています)で、2021年春時点で70歳以上だそうです。日本の鳥類標識調査でも長寿の種は海鳥や大型の鳥に多く、確認された最も長期生存の記録はオオミズナギドリの36年8か月だったとのことです。日本における足環の回収記録は一般の市民からの回収によるところが大きく、今後も継続してご協力をお願いしたいと呼びかけられていました。

講演の後に、視聴者のみなさまからチャットに長寿記録を知りたい鳥のリクエストを書き込んでいただき、ツバメ、ハヤブサ、アホウドリなど30種以上の鳥の長寿記録についてその場でお答えいただきました。また、鳥の平均的な寿命や標識調査の鳥類への影響などについても質疑応答が交わされました。

今回のオンライン講演は、最大同時に145人の方に視聴いただきました。ご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。今回のライブ配信は、以下の同じURLから5月1日までご視聴いただけます。
https://www.youtube.com/watch?v=1g_YPiY5EAg

次回、5月のテーマトークは、山階鳥類研究所の澤祐介さんに、衛星追跡で明らかになったガン類の渡りについてのお話をしていただきます。視聴方法などについては、山階鳥類研究所・我孫子市鳥の博物館ウェブサイトで改めてご案内します。次回もぜひご視聴ください。

参考資料:
鳥類標識調査について(環境省ウェブサイト)
http://www.biodic.go.jp/banding/index.html

吉安京子・森本 元・千田万里子・仲村 昇 (2020) 鳥類標識調査より得られた種別の生存期間一覧.山階鳥類学雑誌.52(1): 21-48.

上記論文のプレスリリースは以下よりご覧いただけます。
http://www.yamashina.or.jp/hp/ashiwa/news/202011saichoju.html

ヨーロッパの鳥類標識調査における長期生存記録一覧
https://euring.org/data-and-codes/longevity-list

北米の鳥類標識調査における長期生存記録一覧
https://www.pwrc.usgs.gov/bbl/longevity/longevity_main.cfm)