March25日Sunday: 鳥博セミナーを実施しました(2018.3/24)
3月24日に、鳥博セミナー「カンムリウミスズメは何羽いる?―ウミスズメ科鳥類の保全をめざして―」を開催しました。海鳥保全グループの大槻都子(くにこ)さんと、カンムリウミスズメ調査のために来日しているマイケル・パーカーさんにお話しいただきました。
最初に、大槻さんにカンムリウミスズメの分類や生態についてお話しいただきました。カンムリウミスズメは世界で5種いるウミスズメ属のうちの1種で、世界で日本の周辺にのみ分布しています。限られた地域にしか分布せず、個体数が減っているため、国際的な絶滅危惧種に指定されています。無人島に侵入したネズミなどの哺乳類、人間活動の影響で数を増やしたカラスによる捕食が現在では大きな問題になっているほか、重油の流出による油汚染や漁業による混獲も脅威であると考えられています。
野生動物を絶滅から守るためには、どこにどのくらいの数がいるのか、また、数が減っているのか増えているのかの情報を得ることが重要です。
カンムリウミスズメは無人島で3~5月に繁殖します。落石の多い急峻な崖で繁殖するため、人間が近寄ったり巣の数を数えるのも容易ではありません。そのため、カンムリウミスズメが世界に何羽いるのかは、これまで正確に分かっていませんでした。1995年にまとめられた報告では、25か所の繁殖地に最大3000つがいほどが分布しているとされていましたが、2017年に大槻さんたちがまとめた結果によると、41か所の繁殖地に2800-4100つがいほどが繁殖していると推定されるそうです。
一見数が増えているように見えますが、これは各地で調査が盛んになって新しい繁殖地が見つかっているためで、数が増えているかどうかは分かりません。しかも、2000年以降に繁殖が確認された島は41箇所のうち、25か所にすぎません。この25か所のうち、正確な個体数調査が行われているのはわずか4か所で、他の場所での推定値は非常にざっくりとしたものでした。
そこで、大槻さんたちはアメリカのセグロウミスズメの調査で開発された「スポットライトサーベイ」という調査手法を導入して個体数調査に乗り出しました。この手法は、夜間に繁殖地の岸近くの海上にウミスズメ類が集まることを利用し、船の上からスポットライトを使ってウミスズメの数を数えるものです。かなり多くの数がカウントでき、さらには繁殖地のすぐ前の海上に集まるので、新しい繁殖地を見つけるのにも適した方法です。
2011年から宮崎県と福岡県の繁殖地で調査を行い、セグロウミスズメと同様に、カンムリウミスズメでも個体数の推定が出来ることを確かめました。宮崎県の繁殖地では2012年には最少でも1700つがいが繁殖しているだろうという推定値を得ることが出来ました。今後は、この調査を行う時間帯や時期についても検討していくため、今シーズンからそれを検証するための野外調査を行うとのことです。
大槻さんたちの活動の成果の報告書は、海鳥保全グループのウェブサイトからダウンロードすることができます。
https://marinebird-restorationgroup.jimdo.com/
続いて、カリフォルニア環境科学研究所のマイケル・パーカーさんに、カリフォルニアのDevil's Sliderockという岩礁で繁殖するウミガラスの保全活動について紹介していただきました。
この場所では、1979年まで2500羽ほどのウミガラスが生息していましたが、1980年代に個体数が急激に減少しました。このころに刺し網漁に使用される糸の種類が変わり、多数のウミガラスが混獲されてしまったことが原因です。さらに追い打ちをかけたのが、1986年に起こった油の流出事故で、1990年代初めまでには全く繁殖しなくなってしまいました。油の流出事故を起こしたApex Houston社からの賠償を受けて、Devil's Sliderockへウミガラスを呼び戻す取り組みが90年代の半ばから始まりました。
集団で繁殖するウミガラスの生態を利用し、たくさんのウミガラスのデコイ(模型)と動いている個体がいるように見せかけるための鏡を設置し、さらに近隣のコロニーで録音された音声が岩の上から流されました。すると、誘引を開始した年から少数のウミガラスが戻ってきて、繁殖をはじめました。これらの取り組みのあとでウミガラスの数は急速に回復し、現在では年によって変動はあるものの、おおむね元の個体数と同程度まで戻すことに成功しました。この成功の要因としては、当初の誘引のデザインが良かったこと、近くに10万羽ほどが繁殖する大きなコロニーがあること、捕食者がもともと少なく、同所で繁殖するアオノドヒメウによって繁殖地が防衛されていることがあげられるそうです。
パーカーさんのお話しのあと、アメリカでどのように刺し網漁が禁止されたのかや、ウミガラスでの成功例をどのようにカンムリウミスズメをはじめとするウミスズメ類の保全に応用できるかについて、質問や議論が交わされました。
今回は38名の方にご参加いただきました。お話しいただいた大槻さん、パーカーさん、ご来場いただいたみなさま、ありがとうございました。
最初に、大槻さんにカンムリウミスズメの分類や生態についてお話しいただきました。カンムリウミスズメは世界で5種いるウミスズメ属のうちの1種で、世界で日本の周辺にのみ分布しています。限られた地域にしか分布せず、個体数が減っているため、国際的な絶滅危惧種に指定されています。無人島に侵入したネズミなどの哺乳類、人間活動の影響で数を増やしたカラスによる捕食が現在では大きな問題になっているほか、重油の流出による油汚染や漁業による混獲も脅威であると考えられています。
野生動物を絶滅から守るためには、どこにどのくらいの数がいるのか、また、数が減っているのか増えているのかの情報を得ることが重要です。
カンムリウミスズメは無人島で3~5月に繁殖します。落石の多い急峻な崖で繁殖するため、人間が近寄ったり巣の数を数えるのも容易ではありません。そのため、カンムリウミスズメが世界に何羽いるのかは、これまで正確に分かっていませんでした。1995年にまとめられた報告では、25か所の繁殖地に最大3000つがいほどが分布しているとされていましたが、2017年に大槻さんたちがまとめた結果によると、41か所の繁殖地に2800-4100つがいほどが繁殖していると推定されるそうです。
一見数が増えているように見えますが、これは各地で調査が盛んになって新しい繁殖地が見つかっているためで、数が増えているかどうかは分かりません。しかも、2000年以降に繁殖が確認された島は41箇所のうち、25か所にすぎません。この25か所のうち、正確な個体数調査が行われているのはわずか4か所で、他の場所での推定値は非常にざっくりとしたものでした。
そこで、大槻さんたちはアメリカのセグロウミスズメの調査で開発された「スポットライトサーベイ」という調査手法を導入して個体数調査に乗り出しました。この手法は、夜間に繁殖地の岸近くの海上にウミスズメ類が集まることを利用し、船の上からスポットライトを使ってウミスズメの数を数えるものです。かなり多くの数がカウントでき、さらには繁殖地のすぐ前の海上に集まるので、新しい繁殖地を見つけるのにも適した方法です。
2011年から宮崎県と福岡県の繁殖地で調査を行い、セグロウミスズメと同様に、カンムリウミスズメでも個体数の推定が出来ることを確かめました。宮崎県の繁殖地では2012年には最少でも1700つがいが繁殖しているだろうという推定値を得ることが出来ました。今後は、この調査を行う時間帯や時期についても検討していくため、今シーズンからそれを検証するための野外調査を行うとのことです。
大槻さんたちの活動の成果の報告書は、海鳥保全グループのウェブサイトからダウンロードすることができます。
https://marinebird-restorationgroup.jimdo.com/
続いて、カリフォルニア環境科学研究所のマイケル・パーカーさんに、カリフォルニアのDevil's Sliderockという岩礁で繁殖するウミガラスの保全活動について紹介していただきました。
この場所では、1979年まで2500羽ほどのウミガラスが生息していましたが、1980年代に個体数が急激に減少しました。このころに刺し網漁に使用される糸の種類が変わり、多数のウミガラスが混獲されてしまったことが原因です。さらに追い打ちをかけたのが、1986年に起こった油の流出事故で、1990年代初めまでには全く繁殖しなくなってしまいました。油の流出事故を起こしたApex Houston社からの賠償を受けて、Devil's Sliderockへウミガラスを呼び戻す取り組みが90年代の半ばから始まりました。
集団で繁殖するウミガラスの生態を利用し、たくさんのウミガラスのデコイ(模型)と動いている個体がいるように見せかけるための鏡を設置し、さらに近隣のコロニーで録音された音声が岩の上から流されました。すると、誘引を開始した年から少数のウミガラスが戻ってきて、繁殖をはじめました。これらの取り組みのあとでウミガラスの数は急速に回復し、現在では年によって変動はあるものの、おおむね元の個体数と同程度まで戻すことに成功しました。この成功の要因としては、当初の誘引のデザインが良かったこと、近くに10万羽ほどが繁殖する大きなコロニーがあること、捕食者がもともと少なく、同所で繁殖するアオノドヒメウによって繁殖地が防衛されていることがあげられるそうです。
パーカーさんのお話しのあと、アメリカでどのように刺し網漁が禁止されたのかや、ウミガラスでの成功例をどのようにカンムリウミスズメをはじめとするウミスズメ類の保全に応用できるかについて、質問や議論が交わされました。
今回は38名の方にご参加いただきました。お話しいただいた大槻さん、パーカーさん、ご来場いただいたみなさま、ありがとうございました。
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