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△知床半島で調査のために許可を得て捕獲されたオオムシクイ。

3月16日に、2024年3月の鳥のサイエンストークを実施しました。これまでと同様にYoutube liveを用いたライブ配信で行いました。今回は、山階鳥類研究所研究員の齋藤武馬さんに「独立種となったオオムシクイは北海道のどこで繁殖するのか?」と題してお話しいただきました。

オオムシクイは、スズメ目ムシクイ科に属する小鳥で、最近までメボソムシクイと同種であると考えられていました。齋藤さんたちが2010年に出版した研究により、ユーラシア大陸から日本にかけて分布しているメボソムシクイ上種は、ユーラシア大陸に広く分布するコムシクイ、ロシアのカムチャッカ半島から千島列島およびサハリンに分布するオオムシクイ、本州から九州に分布するメボソムシクイの3種に分けられました。

この3種は形態にわずかな違いがみられるものの、その外見から見分けるのは非常に困難です。しかし、鳴き声は大きく異なっており、コムシクイは「ジジジ…」と単調な声で、オオムシクイは「ジジロジジロ…」と聞こえるリズミカルな声で、メボソムシクイは「ジジジュリ、ジジジュリ…」と「銭取り、銭取り」と聞きなされる声でさえずります。

オオムシクイは、カムチャッカ半島、千島列島、サハリンが主な分布域であると考えられてきましたが、北海道でも繁殖期に見つかっています。本種は春の渡りの時期が他の多くの小鳥よりも遅く、5月下旬から6月中旬ごろまで中継地である平地の林で見られます。そのため、繁殖地かどうかの判別が他の鳥より難しいと考えられています。加えて、森林限界の山地で繁殖するために調査が難しいことから、正確な繁殖分布は長らく明らかになっていませんでした。

齋藤さんは、環境省レッドリストの見直しに伴う調査のため、北海道において過去の文献に繁殖期の記録のある地域を絞り込み、現地調査を行いました。まず、これまでにも繁殖期に多く記録されてきた知床半島では、2019年と2020年に、知床連山、斜里岳、藻琴山、海別岳、知床沼の5つの地域で計20羽を観察し、3羽の成鳥を捕獲しました。さらに、餌運び中の成鳥を確認できたとのことで、これらの地域では繁殖していると考えられました。確認地点のは900〜1500m付近の森林限界より少し高い標高で、ダケカンバやハイマツなどが生育する高山帯の植生だったとのことでした。密度は全体的に低く、正確な個体数は不明であるものの、分布域全体でも1,000羽に満たないと思われるとのことです。

もう1地域、繁殖期の目撃情報のあった日高山系のペテガリ岳、芽室岳、バンケヌーシ岳の3か所では、2023年に行った現地調査では確認できなかったとのことでした。今後は、知床半島内で十分に調査できていない地域での生息確認調査を行うことや、別の年に繁殖期の目撃情報のある日高山系の芽室岳での再調査を行うことなどが課題だそうです。

講演のあとに、知床半島での低い生息密度や、知床半島だけに分布している原因、オオムシクイの繁殖地間での鳴き声や形態の違いなどについてご質問をいただき、齋藤さんにわかりやすくお答えいただきました。

今回のオンライン講演は、最大同時に72人の方に視聴いただきました。ご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。今回のお話しは、3月30日(土)まで見逃し配信を行います。配信したURLと同一の以下のリンクよりご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=CRr8nGZsqqc

次回、4月の鳥のサイエンストークは、山階鳥類研究所の千田さんに、標識調査に用いられる足環と、その解読にまつわるエピソードなどをお話しいただきます。配信方法などについては、山階鳥類研究所・我孫子市鳥の博物館ウェブサイトで改めてご案内します。次回もぜひご視聴ください。

参考資料:
メボソムシクイの分類に関する齋藤さんの論文
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjo/61/1/61_1_46/_article/-char/ja/
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△サギの仲間のダイサギ。

2月17日に、2024年2月の鳥のサイエンストークを実施しました。これまでと同様にYoutube liveを用いたライブ配信で行いました。今回は、山階鳥類研究所研究員の岩見恭子さんに「鳥の学術標本作り・中級編2」と題してお話しいただき、学術標本の製作の実演もしていただきました。このようなライブ配信は、2021年7月、2022年12月に行った試みに続いて3回目となりました。

まず、鳥の標本を集める目的や保管方法などについてお話しいただきました。標本は、ある時代の実物の資料を保存することで、タイムカプセルの機能を果たします。そのため、時代ごとにできるだけ多くの標本を作って保存していくことが望まれます。標本を博物館で保存することで、より多くの人が利用できるようになります。また、利用の可能性を高めるため、採集場所や日時などの標本に関連した情報も併せて保存することが重要です。

このお話のあと、さっそく実際の製作を見せていただきました。今回は、首の長い水鳥であるダイサギを材料に、皮むきから縫い合わせるまでの一連の流れを見せていただきました。手元を写したカメラを使って、作業上のポイントを見せていただきながら解説していただいたので、どのように標本が作られているのかがよくわかりました。

基本的な手順はこれまでに配信したアカショウビンやウミネコと大きく変わりませんが、首の長い鳥では皮を剥く手順や芯の作り方に工夫が必要です。頭部を内側から返せない鳥では後頭部を切開して頭部の処理を行う必要があります(今回のダイサギではそのままひっくり返せました)。
通常の鳥では、首をまっすぐに伸ばし、芯になる1本の棒を頭骨から脚まで貫通させて形を整えます。しかし、サギのような首の長い鳥の場合、首を伸ばして標本の形を作ってしまうと収納スペースがかさんだり、破損しやすくなってしまいます。そのため、首を緩やかに体に反って曲げた形に作られます。このためには首の芯に針金を入れるか、ひもを頭骨から胴体の芯まで通し、固めに綿を巻き付けて柔らかく曲げる方法をとります。今回は、後者の方法での実演を見せていただきました。

講演のあとに、視聴者のみなさんとチャット機能を用いて質疑応答が交わされました。最後に標本に巻く紙の印刷面の向き、防腐剤の種類や塗り方、鳥の皮膚が乾燥してしまった場合の対処方法などについて、岩見さんにわかりやすくお答えいただきました。

今回のオンライン講演は、最大同時に122人の方に視聴いただきました。ご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。今回のライブ配信の見逃し配信は行いませんので、ご了承ください。

次回、2024年3月のテーマトークは、3月16日(土)に、山階鳥類研究所の齋藤武馬さんに、近年メボソムシクイから別種に分割されたオオムシクイの国内の繁殖地についてお話しいただきます。配信方法などについては、山階鳥類研究所・我孫子市鳥の博物館ウェブサイトで改めてご案内します。次回もぜひご視聴ください。
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▲伊豆諸島の鳥島から小笠原諸島の聟島に移送されたアホウドリのヒナ

1月20日に、2024年1月の「鳥のサイエンストーク」を実施しました。これまでと同様にYoutube liveを用いたライブ配信で行いました。今回は、山階鳥類研究所の平岡 考さんに、「北西太平洋の美しい海鳥アホウドリの歴史と未来」と題してお話しいただきました。

アホウドリは、ミズナギドリ目アホウドリ科に属する北太平洋で最大の海鳥で、翼を広げた大きさは2m以上に達します。かつては北西太平洋に数多く生息していましたが、人間による乱獲によって減少してしまいました。現在では国指定の特別天然記念物や、種の保存法などの指定を受けて保護されています。今回は、アホウドリと人間の関わりの歴史を振り返り、今後必要な取り組みについてお話しいただきました。

現在のアホウドリの繁殖地は、伊豆諸島の鳥島、沖縄県の尖閣諸島、再導入が行われている小笠原諸島の聟島の3か所のみですが、かつては小笠原諸島や大東諸島、台湾周辺の島々などにより広く分布しており、その個体数は数百万羽に及んでいたと考えられています。

全国各地の縄文時代から近代の遺跡からもアホウドリ類の骨が出土しており、礼文島の遺跡からはアホウドリ類の上腕の骨を加工して作られた針入れも出土しています。江戸時代には、漂流した漁師が鳥島にたどり着き、島を埋め尽くすように生息していたアホウドリについての記録も残っています。また、1840年頃に編纂された「梅園禽譜」には、江戸の市中に迷行したアホウドリの巣立ち直後の幼鳥の記録も残されています。

時代は進み、明治時代になると、資源を求めて海洋島の開発が進みました。簡単に捕獲でき、大きな体から大量の羽毛が手に入るアホウドリは、羽毛布団の原料として乱獲され、1903年までに5,000,000羽ほどが殺されたと推定されています。山階鳥類研究所の創設者である山階芳麿博士は、1929年に鳥島を訪れ、約2000羽が生息していたことを映像とともに記録に残しています。山階博士の調査結果を受けて1933年に鳥島は禁猟区に指定されましたが、その直前に駆け込み的な大量の捕殺があったとされています。

第二次世界大戦に入ると詳細な生息状況は不明になってしまいましたが、戦後になって1949年3月から4月にGHQのオリバー・オースチン氏が海上から調査を行いました。この時、繁殖期であるにも関わらずアホウドリの姿が見られないことから、「絶滅した可能性が高い」という主旨の報告を行いました。しかし、その2年後の1951年、鳥島に駐在していた気象庁の職員によって、約10羽が鳥島南端の燕崎にいるのが発見されました。この再発見を受けて、山階鳥類研究所の研究者が気象庁の船に便乗して鳥島に渡航し、標識調査が開始され、測候所が廃止になる1965年まで継続されました。

1970年代後半からは、長谷川博氏による調査活動が始まり、繁殖成功率などのデータを取られるようになりました。その結果、燕崎の急斜面で崩れた土に卵やヒナが埋まってしまうために巣立ち率が低いことが明らかになり、ハチジョウススキの移植などの環境整備が行われました。しかし、この取り組みはあまりうまくいかず、島内の別の場所に繁殖地を移す試みの重要性が高まっていきました。

長谷川氏は、デコイと音声を用いて海鳥の繁殖地を移動させた先行研究がアホウドリにも応用できると考えて日本に紹介しました。日本のバードカービングの草分けである内山春雄氏は、長谷川博氏のアイディアを聞いて、アホウドリのデコイの木型を作成し、山階鳥類研究所と協力して1991年から鳥島への設置が始まりました。この取り組みもなかなか成功しませんでしたが、2000年代後半になってようやく新繁殖地での繁殖が軌道に乗るようになって、島全体の巣立ち率の向上につながりました。

これまでの取り組みによって鳥島の中で2つの繁殖地ができ、個体数も安定してきました。しかし、鳥島は火山島であり、近年でもたびたび大規模な噴火が起こっており、噴火の時期によっては繁殖個体の全滅などのリスクもあります。また、尖閣諸島は政治的に不安定であり、モニタリングなどの調査を行うことができません。このような理由から、安定した第3の生息地への再導入の必要性が高まっていました。

そこで、かつての生息地であり、上記のような問題のない、小笠原諸島の聟島が移転先として選ばれました。2008年から2012年までの5年間に鳥島からヒナを移送し、巣立ち場所を覚えたヒナが同じ場所に戻る習性を利用して、この場所に繁殖地を形成しようという取り組みです。その結果、2016年に最初のヒナが巣立ち、それ以降も2023年までに11羽のヒナが巣立ちました。聟島への繁殖地の形成はまだ道半ばで、今後時間をかけて取り組みを継続していくとのことです。

鳥島では2022-23年の繁殖期には1088羽のひなが確認され、総個体数は7900羽以上まで回復しました。しかし、この増加を受けて、公的な調査の予算は削減される傾向にあるそうです。個体数は回復傾向にあるものの、近年の研究によりアホウドリは2種が含まれることが判明したことによる様々な新たな課題の解決に向けた調査や、人間活動による悪影響の調査を行うため、鳥島でのアホウドリを毎年調査する必要性は失われていません。

そこで、山階鳥類研究所では、アホウドリの保全活動とモニタリングを継続するためのマンスリーサポーター(500円/月)の募集を始められました。詳しくは、以下のウェブサイトからご確認ください。
https://www.yamashina.or.jp/albatross/kifu.html

講演のあとに、小笠原に導入された集団に2つの系統が含まれることの問題についてご質問をいただき、平岡さんにわかりやすくお答えいただきました。

今回のオンライン講演は、最大同時に62人の方に視聴いただきました。ご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。今回のお話しは、2月3日(土)まで見逃し配信を行います。配信したURLと同一の以下のリンクよりご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=JP_gCzFX0zI

次回、2月の鳥のサイエンストークは、山階鳥類研究所の岩見さんに、標本製作の実演をしながらお話しいただく予定です。配信方法などについては、山階鳥類研究所・我孫子市鳥の博物館ウェブサイトで改めてご案内します。次回もぜひご視聴ください。
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▲夜の道路上に現れたアマミヤマシギ。

12月16日に、2023年12月の「鳥のサイエンストーク」を実施しました。これまでと同様にYoutube liveを用いたライブ配信で行いました。今回は、山階鳥類研究所の水田 拓さんに、「アマミヤマシギはどれくらい生きるか、どれくらい移動するか」と題してお話しいただきました。

鳥に足環などの目印を付けて寿命や渡りを調べる「鳥類標識調査」は、19世紀の終わりにデンマークで始まり、日本でも1924年に東京都でゴイサギに足環を付けられたことで開始されました。現在では、山階鳥類研究所が環境省から委託を受けて実施しています。1961年から2020年までに500種以上、620万羽以上の鳥に足環が付けて放されました。

鳥類標識調査では、生きていた期間や動いた距離だけではなく、鳥類のモニタリングに重要な個体数の推定や、絶滅危惧種の保全のために重要な生態の解明、鳥インフルエンザなどの動物由来の感染症の対策に必要な伝播経路の調査など、さまざまな情報を得ることができます。これらの情報は、生物多様性の損失を食い止める目標である「ネイチャー・ポジティブ」や、人間・家畜・野生動物の健康を一体として目指す「ワンヘルス・アプローチ」にも寄与するものです。

水田さんが活動されていた奄美大島では、アマミヤマシギを含むさまざまな固有種が生息しており、その保全に向けた様々な取り組みが行われています。アマミヤマシギは森林に生息するシギの仲間で、世界で奄美群島でのみ繁殖します。過去の森林伐採、マングースなどの外来の哺乳類による捕食、交通事故などが脅威であると考えられており、国内希少野生動植物種に指定されています。その保全のために、標識調査を含む個体群のモニタリング調査が2002年から行われています。

この調査は、夜間に林道上でアマミヤマシギを捕獲し、金属リングと色足環を使って標識した後、その個体を再び確認するという方法で行われました。調査は2003年から2018年まで主に5か所の調査地で行われ、5年程度で調査地を移動して行われました。704羽のアマミヤマシギに対して標識が行われ、そのうち258羽(37%)の個体が1回以上再確認されました。2回以上確認された個体は9%程度でした。

標識から再確認までの期間については、再確認された258羽のうち、69%にあたる178羽は1年未満での確認例でした。3年を越える再確認は14羽(5%)ほどで、最も長い放鳥から再確認までの期間は7年強でした。再確認までの期間には性別による違いはありませんでしたが、成鳥で放鳥した個体は幼鳥で放鳥した個体よりも再確認までの期間が長いという結果になりました。

標識場所から再確認した地点までの移動距離は、119個体でデータが得られました。これらのうち、84%が1,000m以内の移動であり、最も長い距離の移動例は3,112mでした。再確認までの時間と移動距離には顕著な関係は認められず、移動距離は性別によって大きな違いは見られませんでしたが、放鳥時に幼鳥だった個体は成鳥になるまでにより長距離を移動する傾向がありました。

再確認される個体の割合がそれほど高くないことからは、アマミヤマシギは同じ個体がいつも林道を繰り返し利用するわけではないらしいということが示唆されました。また、幼鳥は成鳥よりも再確認までの期間が短いことから、幼鳥は成鳥より死亡率が高い、もしくは、より遠くに分散していて再確認されづらいのではないかと考えられます。さらに、成鳥と幼鳥の移動性の違いからは、一度定着したらあまり移動しない、ということが示唆されました。

アマミヤマシギの標識調査のデータからは、再確認される鳥の割合を用いた個体数の推定や、より詳細な生存期間の推定を行うことができます。また、林道への出現傾向から交通事故の対策を行う、捕獲時の糞などの採取から食性を把握するなど、様々な発展が見込まれるとのことです。今後、保全に役立つこのような取り組みを視野に入れて標識調査を実施していきたいとのことです。

講演のあとには、アマミヤマシギの成鳥と幼鳥の形態的な違いや、なぜ夜間に道路に出てくるか、奄美大島以外の奄美群島での生息状況などについて、多くの質問やコメントが寄せられ、水田さんにわかりやすくお答えいただきました。

今回のオンライン講演は、最大同時に61人の方に視聴いただきました。ご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。今回のお話しは、12月30日(土)まで見逃し配信を行います。配信したURLと同一の以下のリンクよりご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=zpN1WsmqBjs

次回、1月の鳥のサイエンストークは、山階鳥類研究所の平岡 考さんに、アホウドリのたどった歴史とこれからの保全についてお話しいただく予定です。配信方法などについては、山階鳥類研究所・我孫子市鳥の博物館ウェブサイトで改めてご案内します。次回もぜひご視聴ください。
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 11月4日(土)と5日(日)の2日間、我孫子市でジャパンバードフェスティバル2023が開催されました。コロナ禍ではリモート開催や会場の規模を縮小して行ってきました。4年ぶりにコロナ禍以前の状態に戻しての開催となりました。
 2019年以来のフル開催、再開するイベントの準備をしながら、来場者の方をお待ちしました。会場の1つである鳥の博物館も、開館と同時に多くの来館者で賑わいました。その様子の一部をご紹介します。来年も多くの来場者で賑わうことを楽しみにしています。
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▲外のテントブース
 鳥に関係する団体や食べ物のテントブースがたくさん
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▲鳥の博物館友の会のテントブース ワークショップが行われていました
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▲こちらも友の会のテントブース オリジナルカレンダーが販売されましたが完売しました
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▲鳥の博物館内 ミュージアムショップも混雑していました
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▲午前の館内イベントはハシビロコウの帽子づくり 満員御礼
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▲午後の館内イベントは鳥博クイズ 満員御礼
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▲展示をみながら答えるクイズです
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▲鳥博クイズの全問正解者にはオリジナルポストカードをプレゼントしました
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 11日4日(土)に、我孫子市生涯学習センター「アビスタ」のホールで第33回JBF鳥学講座を開催しました。今回は、「小笠原諸島の海鳥は、増えたり、減ったり、海を越えたり、越えなかったり」と題して、森林総合研究所鳥獣生態研究室長の川上和人さんにお話しいただきました。

 川上さんは、小笠原諸島をフィールドに、島の鳥の生態系の中での機能や保全管理について研究されています。今回は、長年取り組んでいらっしゃる小笠原諸島の海鳥を題材に、その進化から保全にいたるまでの様々な研究成果を中心にお話しいただきました。

 小笠原諸島はこれまでに一度も日本本土とつながったことのない海洋島で、在来の陸上の捕食者がいませんでした。そのため、海鳥の高密度のコロニーが形成され、21種の海鳥の繁殖記録があります。
 海鳥は高密度でたくさん繁殖します。そのため、島の中を歩き回ることによって森林の下層の植生の発達が妨げられること、地面に巣を作るためのトンネルを掘り、鳥の巣を好む昆虫に生息場所を提供すること、海で餌を食べて島で糞をすることによって窒素やリンを島の陸上に運ぶこと、植物の種を体に付けて島の間を運ぶことなどのさまざまな生態的な機能があることが分かってきました。

 小笠原で繁殖する海鳥の中には、世界でもここだけで繁殖するものがいます。それは、クロウミツバメ、オガサワラミズナギドリ、オガサワラヒメミズナギドリの3種です。クロウミツバメは世界で南硫黄島の山頂付近でしか繁殖していないウミツバメです。オガサワラミズナギドリは南硫黄島と東島だけで繁殖する鳥で、かつてセグロミズナギドリの1亜種とされていましたが、セグロミズナギドリのグループからは遺伝的にかなり異なっていることが分かり、別種とする提案が受け入れられています。オガサワラヒメミズナギドリは、ハワイで採集されていた標本をもとに2011年に新種として記載されたもので、2000年代にしばしば小笠原で見つかっていた小型の種不明のミズナギドリもこれと同種であることが判明しました。その後、父島列島の東島で営巣しているのが見つかり、現在まで世界でこの場所でしか繁殖地が見つかっていません。

 小笠原諸島に広く分布するアナドリという海鳥は、世界中の海に分布していますが、その個体群の間での系統的な違いなどはよく分かっていませんでした。川上さんは、ポルトガルの研究チームとの共同研究で、大西洋、ハワイ、小笠原の個体のそれぞれのDNA配列を比較し、小笠原の集団は、他のすべての集団から最も早く、約85万年前に分岐したことが分かりました。地理的な距離のより近いハワイの集団は、小笠原の集団よりも大西洋の集団により近縁だったのです。なぜこのような現象が起こっているのかははっきりとはわかっていませんが、小笠原とハワイの間には海鳥の食物の量の指標になる植物プランクトンの量が少ないこと、渡り経路が異なることなどが原因として考えられています。

 小笠原諸島に人間が入植したのは1800年代で、彼らによってネズミ類、ネコ、ノヤギなどの外来の哺乳類が持ち込まれました。島ごとに侵入した哺乳類の種数と現在の海鳥の繁殖種数を比較してみると、これには強い負の相関がありました。外来種の哺乳類は、海鳥の卵やヒナ、親鳥の捕食や、植物を食べて森林を草原に変えてしまったことで、海鳥の個体群の減少を引き起こしたのです。

 その後、小笠原では様々な自然再生事業が展開されるようになり、植生を破壊するノヤギの駆除は父島を除くすべての島で完了しました。その結果、クロアシアホウドリ、カツオドリ、オナガミズナギドリ、アナドリなどの海鳥については増加していることが分かっています。しかし、小笠原の過去の海鳥相はあまりよくわかっておらず、これらの在来種の増加は、回復と言ってよいのかどうかわかりません。

 そこで、川上さんたちは海鳥繁殖地である南島の鍾乳洞から海鳥の骨を発掘し、人間が入植する前の海鳥相を復元しました。その結果、現在は限られた島で少数が繁殖しているだけのシロハラミズナギドリ、オガサワラミズナギドリ、オガサワラヒメミズナギドリの3種の骨が非常に多く出土し、この3種だけで全体の約70%を占めることが分かりました。このうちいくつかの骨を年代測定してみると、いずれも数千年前から数百年前のもので、幼鳥の骨も出てきました。そのため、人間の入植前まではたくさん繁殖していたけれど、外来種の侵入によってこれらの種類は大きく減少したことが分かりました。すなわち、回復しているように見えている海鳥の個体群は、実は分布の狭い小型の固有種から、広域に分布するより大型の種に入れ替わってしまっていたのです。

 では、これまでの保全活動は失敗してしまったのでしょうか? 川上さんは、現在の状況は回復までステップの一つだと説明されました。まず、海鳥の生態系の中での機能が元に戻りつつあるのが現在の状態で、これから小型の固有種を含むかつての海鳥相に近づいていくために多様性の回復を進めていくことが重要とのことです。このように、かつてのあるべき姿がどのようなものであったかを復元し、目指すべき目標を定めていくことは、小笠原の海鳥に限らず、私たちの身近な生物多様性を保全していくために普遍的に重要なことではないか、というお話で講演を締めくくられていました。

 講演のあとには、「なぜ海鳥には保全対策で増える種と増えない種がいるのか」、「海鳥の繁殖場所の好みと分布の広さに関係はあるか」などについて来場者からの質問をいただき、川上さんにわかりやすくお答えいただきました。特に、「何のために希少な海鳥を保全するのか」というご質問に対しての、「生態的な機能や生態系サービスの有無にかかわらず、私たちの知的好奇心を刺激してくれることそのものが、その生物を守る意義ではないか」というお答えは、生物多様性を守っていきたいと考える多くの人を勇気づけるものだと感じました。
 今回の鳥学講座は、同時中継の別会場を合わせて198人の方にご参加いただきました。ご好評をいただいたため、会場の都合で入室をお断りせざるを得なかったみなさまにはお詫びいたします。ご講演いただいた川上さん、ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。

参考資料:
今回のお話しのもとになった論文の日本語プレスリリース

・オガサワラヒメミズナギドリの営巣地の発見
https://www.ffpri.affrc.go.jp/press/2015/20150324/index.html

・オガサワラミズナギドリの系統の研究
https://www.ffpri.affrc.go.jp/press/2018/20180125/index.html

・アナドリの系統の研究
https://www.ffpri.affrc.go.jp/press/2023/20230411/index.html

・鍾乳洞で見つかった骨からわかった海鳥相の変化
https://www.ffpri.affrc.go.jp/press/2022/20220720/index.html

今回のお話の内容と関係した川上さんの著書
「無人島、研究と冒険、半分半分。」
https://www.tokyo-shoseki.co.jp/books/81714/
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投稿者: someya
 我孫子市我孫子中学校の生徒さんが職場体験に来館されました。博物館ではどのような人が働いていて、どのような仕事をしているのか、知ってもらえる貴重な機会です。
 博物館での仕事は展示をするだけではありません。職場体験をきっかけに博物館に興味を持ってもらえたらいいなと思いながら取り組み、私にとってはあっという間の一日でした。展示室での作業、標本が収蔵してある収蔵庫での作業、イベントの準備など、様々な業務を体験してもらいました。
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▲本で調べながら分類順に標本をしまいました
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▲ミュージアムショップで販売業務を体験
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▲見やすいパネルって?解説で使うシートや案内表示をつくりました
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▲作品が完成しました
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△チュウジシギ雄成鳥の尾羽(20枚の個体)

10月21日に、2023年10月の「鳥のサイエンストーク」を実施しました。これまでと同様にYoutube liveを用いたライブ配信で行いました。今回は、鳥の博物館の小田谷が「ジシギの尾羽を調べてみたら」と題してお話ししました。

ジシギ類とは、チドリ目シギ科のうち、タシギ属とそれに近縁な数種を含むグループです。鳥の尾羽は12枚のものが多く、10枚や14枚のものもいますが、種の中での尾羽の枚数は比較的安定しています。ところが、ジシギ類は14枚以上の尾羽を持ち、近縁種の間でその枚数が異なること、種の中で様々な枚数を持つものがいることが知られています。しかし、その枚数ごとの頻度などに関する情報は乏しく、種によっては混乱が生じていました。

そこで、ジシギ類の種ごとの尾羽の枚数の変異を整理し、その原因を調べるため、標識調査の際に捕獲した生きた鳥の尾羽の枚数を数え、その形態(長さ、太さ、羽色)を記録する調査を行いました。2012年から2023年まで、4種のジシギ類について合計1241羽の尾羽を調査し、その枚数ごとの頻度を調べました。その結果、種ごとに以下のことが分かりました。

・タシギでは変異の幅は12−16枚で14枚の個体が最も多い
・オオジシギでは変異の幅は14−20枚で、16枚と18枚の個体が多い
・チュウジシギでは変異の幅は16−22枚で、18枚と20枚の個体が多い
・ハリオシギでは変異の幅は22−28枚で、24枚と26枚の個体が多い

チュウジシギでは、多くの文献に「尾羽の枚数は20−22枚」と記載されていますから、このことは実際の頻度の分布と異なっていることが分かりました。このことからは、尾羽が18枚の個体について、オオジシギなのかチュウジシギなのかは、他の特徴も併せて判断する必要があるという事がいえます。

それでは、種内で見られる変異は何によって決まっているのでしょうか?この問いについて、オオジシギとチュウジシギを対象に、詳しく調べてみました。これまでに、この2種では、先行研究によって、性別によって尾羽の枚数が異なることが示されていました。私の研究では、オオジシギについては年齢にかかわらずサンプルを収集し、チュウジシギについてはサンプル数を増やし、枚数以外の形態についても分析を行いました。

オオジシギ、チュウジシギともに、雄のほうが雌よりも尾羽の枚数が多い傾向がありました。特に、チュウジシギの尾羽が18枚の個体は、そのほとんどが雌でした。チュウジシギは2つの個体群で尾羽の枚数の頻度に大きな違いはありませんでしたが、西側の個体群のほうが21−22枚の個体の割合が高い可能性があります。尾羽の長さは、どの種でも成鳥のほうが幼鳥よりも長く、雄のほうが雌よりも長い傾向がありました。また、チュウジシギの個体群の間では、西側の個体群のほうが尾羽が短い傾向がありました。

尾羽の幅は、中央から5番目の尾羽で、オオジシギのほうがチュウジシギよりも顕著に太いことが分かりました。羽色の点では、両種ともに幼鳥のほうが成鳥よりも外側尾羽の地色の暗色部が淡く、白色斑が多い傾向にありました。尾羽の形状や羽色の性差についてはまだ詳しく調査できていませんが、雄のほうが雌よりも外側尾羽の湾曲が大きく、羽色が暗い傾向があるようです。

以上の事から、尾羽の枚数には性別による違い、尾羽の形状には性別と年齢による違いがあることが分かりました。チュウジシギの地域によるこれらの違いについては、これから調査を進めていきたいと考えています。
これらの様々な種内の変異を踏まえることで、より正確な種の識別や生息分布域の把握につながっていくことが期待されます。

講演のあとには、尾羽の計測の方法や、ジシギ類の外側尾羽の形状の生態的な意味などについて質問が寄せられ、小田谷からお答えしました。

今回のオンライン講演は、最大同時に133人の方に視聴いただきました。ご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。今回のお話しは、11月4日(土)まで見逃し配信を行います。配信したURLと同一の以下のリンクよりご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=jnrWvyla7no

11月は鳥のサイエンストークはお休みです。次回、12月の鳥のサイエンストークは、山階鳥類研究所の水田さんに、アマミヤマシギの移動や寿命についての研究結果をお話しいただきます。配信方法などについては、山階鳥類研究所・我孫子市鳥の博物館ウェブサイトで改めてご案内します。次回もぜひご視聴ください。
カテゴリ: General
投稿者: mochizuki
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9月3日に鳥博セミナーをオンライン配信にて実施しました。
今回は北九州市⽴⾃然史・歴史博物館(いのちのたび博物館)学芸員の中原亨さんに「越冬地から切り拓くノスリ研究の新境地」と題してお話いただきました。

ノスリはカラスくらいの大きさの猛禽で、ネズミやモグラ、小鳥や昆虫などの小動物を食べます。日本にいるノスリ(学名Buteo japonicus)はかつてヨーロッパノスリ(Buteo buteo)の亜種とされていましたが、現在は別種扱いとなっています。日本には渡りをするものと渡りをしないものがいて、北日本にいるノスリは秋になると南に渡って越冬します。西日本で見られるノスリはほとんどが越冬個体です。

西日本で越冬するノスリはどのような環境で暮らしているのでしょうか?
中原さんたちの研究グループは、ノスリにGPSロガーを装着して、行動圏の広さや環境を調べてみました。行動圏の広さは地域や個体によってばらつきがあり、長崎の個体は福岡よりも狭い範囲を行動圏としていること、利用している環境は地域によって大きく異なることが分かりました。

また越冬地では、時々茶色いノスリが見られることがあります。普通のノスリは喉から腹にかけて白い色をしていますが、この部分が茶色いノスリの正体は一体何でしょうか。中原さんはこの茶色いノスリがユーラシア大陸の亜種(学名B. j. burmanicus)である可能性を考え、DNAの解析や繁殖地を探す追跡調査をはじめました。

九州で28個体のノスリを捕まえDNA配列を調べたところ、白い見た目のノスリ24個体は日本の亜種と一致し、茶色い見た目のノスリ 4個体は大陸亜種と一致する結果となりました。またGPSロガーの追跡調査では、茶色いノスリは全て朝鮮半島を渡ってロシアの方まで渡って行ったほか、白いノスリは北日本の方に渡っていったことが明らかになりました。
DNA解析とGPSロガーの結果から、茶色いノスリはユーラシア大陸の亜種であると言えるでしょう。
中原さんは、ノスリが上昇気流や追い風を利用して渡りをすることから、上昇気流の発生しない日本海を避けて渡りを行っている可能性を指摘し、大陸と日本の2亜種に分かれたのではないかと考察しています。

その他に、九州で越冬するノスリは基本的に1羽ずつの縄張りを持つことが多いのですが、まれに2羽が同じ縄張り内にいることを中原さんの研究グループは発見しました。一年中同じ場所にいる留鳥の地域では、つがいの2羽が冬も一緒にいる例はありますが、越冬地で2羽一緒にいることはとても珍しく、この2羽がつがいであるのか、どんな関係性なのかはよく分かっていませんでした。そこで、中原さんたちがこの”2羽どまり”を捕まえて追跡調査を行ったところ、この2羽は雌雄の組み合わせであったものの、繁殖期にはそれぞれ別の場所に渡って行ったことが分かりました。
2羽どまりのノスリは繁殖地が異なることから、おそらくつがいでは無いと考えられますが、兄弟などの血縁関係があるのか、浮気相手であるのか、冬だけの共同関係なのか、今後の調査で明らかにしていきたいそうです。

講演の後には、雌雄での行動圏の違いや調査方法についての質問が多く寄せられ、中原さんにお答えいただきました。
今回の鳥博セミナーは最大同時に252人にご視聴いただきました。ご視聴いただいた皆様ありがとうございました。

企画展「猛禽 −タカ・フクロウ・ハヤブサ−」では今回ご紹介いただいたノスリの他、様々な猛禽類の生態やからだの仕組みをご紹介しています。企画展は11月5日までの開催となっておりますので、ぜひ期間中にご来館ください。

今回の講演のレジュメはこちら

カテゴリ: General
投稿者: odaya
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8月19日に、2023年8月の「鳥のサイエンストーク」を実施しました。これまでと同様にYoutube liveを用いたライブ配信で行いました。今回は、山階鳥類研究所の山崎剛史さんに、「実は2種いたアホウドリ、名前はどうなる?」と題してお話しいただきました。

アホウドリは、北太平洋で最大の海鳥で、かつては伊豆諸島から台湾周辺の島々まで広く繁殖分布していました。アホウドリは繁殖地ではすぐに飛び立てず、人を恐れないため、羽毛の採取の為に乱獲され、絶滅の危機に瀕してしまいました。その後の保護活動によって個体数は回復していますが、現在の主な生息地は伊豆諸島の鳥島と尖閣諸島の2か所に限られ、小笠原諸島の聟島列島では再導入された個体群が少数繁殖しています。

山階鳥類研究所が継続してきた鳥島での標識調査と保全活動の際に、尖閣諸島生まれと考えられる足環のない個体がしばしば確認されてきました(鳥島生まれの個体は基本的にすべて足環が付けられているため)。こうした個体(以下、「尖閣系」)は体の大きさが小さく、嘴が細長い形態が鳥島で繁殖しているアホウドリ(以下、「鳥島系」)とは異なっていることが知られていました。何年もの間、保全活動の為に設置されたデコイに対して求愛行動を行った「デコちゃん」と名付けられた個体も尖閣系でした。

これとは別に、北海道大学の江田さんたちは、遺跡から出土した骨の形態やDNAの分析により、アホウドリの種内に2つのグループが存在することを明らかにしました。これらの違いは、「鳥島系」と「尖閣系」の違いと一致し、両者には生殖隔離が見られることも明らかになったため、現在のアホウドリには、種レベルの違いに相当する2つのグループが存在することが明らかになりました(これらの研究については第31回鳥学講座「センカクアホウドリ発見記」の報告で詳しく紹介しています)。

これらの研究によってアホウドリが2種に分かれることになりましたが、それぞれの学名をどうするのかは議論が必要です。山崎さんたちは、動物の学名の国際的なルールを定めた「国際動物命名規約」に基づき、この2つのグループにそれぞれどのような学名を付ければよいかを検討しました。種を記載するときに規準になる標本は、「タイプ標本」と呼ばれます。現在使われているアホウドリの学名であるPhoebastria albatrusのタイプ標本は、探検家のステラ―によって現在のオホーツク海で採集され、ドイツ人の博物学者であるパラスによって記載されました。しかし、この標本は、19世紀に廃棄されてしまっていたことがわかったのです。

そのため、山崎さんたちは、本来のタイプ標本と同じオホーツク海で採集され、サンクトペテルブルグ博物館に保存されていた標本を「ネオタイプ」に指定し、このネオタイプの嘴の形態を調べて「尖閣系」に該当することを明らかにしました。これらのことから、現在のPhoebastria albatrusという学名は尖閣系のアホウドリに引き継がれることになります。

それでは、「鳥島系」の学名はどのようになるのでしょうか? 実は、アホウドリには4つの異名が存在します。今後、これらに対応するタイプ標本を探し、「鳥島系」と「尖閣系」のどちらに一致するのかを検討していく必要があります。これらについて記載の年が古い順から確認をすすめ、タイプ標本が「鳥島系」の種であれば、その学名を鳥島系のアホウドリに用い、一致する標本が見つからなければ新しい名前を付けることになります。それぞれにどのような学名が適用されるのか、今後の研究で明らかになる事に期待しましょう。

講演のあとには、両種の交雑個体の有無と雑種の繁殖可能性、ネオタイプを1点に絞る理由などについて、多くの質問やコメントが寄せられ、山崎さんにわかりやすくお答えいただきました。

今回のオンライン講演は、最大同時に87人の方に視聴いただきました。ご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。今回のお話しは、9月2日(土)まで見逃し配信を行います。配信したURLと同一の以下のリンクよりご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=F4W_JGPKLY0

9月は鳥のサイエンストークはお休みです。次回、10月の鳥のサイエンストークは、鳥の博物館の小田谷が、ジシギ類の尾羽の枚数や形態についての研究結果をお話しします。配信方法などについては、山階鳥類研究所・我孫子市鳥の博物館ウェブサイトで改めてご案内します。次回もぜひご視聴ください。

今回のお話の元になった論文(英文):
Yamasaki T, Eda M, Schodde R & Loskot V (2022) Neotype designation of the Short-tailed Albatross Phoebastria albatrus (Pallas, 1769) (Aves: Procellariiformes: Diomedeidae). Zootaxa 5124(1): 081-087.
https://www.biotaxa.org/Zootaxa/article/view/zootaxa.5124.1.6
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