秋は鳥たちの渡りの季節。繁殖を終えた鳥、あるいは今年生まれた鳥たちが越冬地に向かって移動を始めています。多くの鳥が渡りをするのは夜間です。昼間に比べて気流が安定することや、渡りの方向を定位するための星が見えることなどが理由ではないかといわれています。

先月8月30日のプロ野球パ・リーグの西武×楽天戦で、鳥の群れがナイターの球場に飛び込んできて、試合が中断されたというニュースは記憶に新しいところです。なぜ夜間に鳥が野球場に飛び込んで来たのでしょうか?

この時の画像をネットニュースで確認すると、この鳥の群れはアカエリヒレアシシギというシギの仲間ということが分かりました。


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▲海上で観察された夏羽のアカエリヒレアシシギ。5月 神奈川県。手前が雌で奥の3羽が雄。タマシギと同様に、雌が雄に求愛し、抱卵と子育ては全て雄が行います。

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▲内陸の農地に飛来した幼羽のアカエリヒレアシシギ。9月 茨城県。背に金色の筋が入るのが幼鳥の特徴。仙台の球場に飛び込んだのも多くはこの幼鳥でした。

アカエリヒレアシシギは普通は海上で生活する種で、ふつう内陸にはあまり飛来しません。繁殖地は北極圏のツンドラで、東南アジアからオセアニアまで長い距離の渡りをします。今回見られたのは、夜間に渡っている群れが渡りの途中に野球場の照明に引き寄せられて飛来したものと考えられます。


この出来ごとは、毎晩多くの鳥たちが夜空を南へ渡っていることを感じさせるものです。我孫子市をはじめ関東平野の低地でも、夜間に動いている鳥の声を聞くことができます。たとえばツグミの仲間は「ツィー」という声で鳴きながら渡るので、耳にする機会が多いです。私も21日夜にマミチャジナイと思われる地鳴きを聞きました。

少数派ですが、昼にわたる鳥たちもいます。ヒヨドリやツバメがその代表格ですが、これらの種の渡りは比較的容易に観察することが出来ます。10月のてがたんでは、ヒヨドリの渡りにスポットをあて、渡りの定点観測をしてみたいと思います。10月14日の10時に博物館の玄関前にぜひお集まりください。