September27日Wednesday: 渡る鳥たち
秋は鳥たちの渡りの季節。繁殖を終えた鳥、あるいは今年生まれた鳥たちが越冬地に向かって移動を始めています。多くの鳥が渡りをするのは夜間です。昼間に比べて気流が安定することや、渡りの方向を定位するための星が見えることなどが理由ではないかといわれています。
先月8月30日のプロ野球パ・リーグの西武×楽天戦で、鳥の群れがナイターの球場に飛び込んできて、試合が中断されたというニュースは記憶に新しいところです。なぜ夜間に鳥が野球場に飛び込んで来たのでしょうか?
この時の画像をネットニュースで確認すると、この鳥の群れはアカエリヒレアシシギというシギの仲間ということが分かりました。
▲海上で観察された夏羽のアカエリヒレアシシギ。5月 神奈川県。手前が雌で奥の3羽が雄。タマシギと同様に、雌が雄に求愛し、抱卵と子育ては全て雄が行います。
▲内陸の農地に飛来した幼羽のアカエリヒレアシシギ。9月 茨城県。背に金色の筋が入るのが幼鳥の特徴。仙台の球場に飛び込んだのも多くはこの幼鳥でした。
アカエリヒレアシシギは普通は海上で生活する種で、ふつう内陸にはあまり飛来しません。繁殖地は北極圏のツンドラで、東南アジアからオセアニアまで長い距離の渡りをします。今回見られたのは、夜間に渡っている群れが渡りの途中に野球場の照明に引き寄せられて飛来したものと考えられます。
この出来ごとは、毎晩多くの鳥たちが夜空を南へ渡っていることを感じさせるものです。我孫子市をはじめ関東平野の低地でも、夜間に動いている鳥の声を聞くことができます。たとえばツグミの仲間は「ツィー」という声で鳴きながら渡るので、耳にする機会が多いです。私も21日夜にマミチャジナイと思われる地鳴きを聞きました。
少数派ですが、昼にわたる鳥たちもいます。ヒヨドリやツバメがその代表格ですが、これらの種の渡りは比較的容易に観察することが出来ます。10月のてがたんでは、ヒヨドリの渡りにスポットをあて、渡りの定点観測をしてみたいと思います。10月14日の10時に博物館の玄関前にぜひお集まりください。
先月8月30日のプロ野球パ・リーグの西武×楽天戦で、鳥の群れがナイターの球場に飛び込んできて、試合が中断されたというニュースは記憶に新しいところです。なぜ夜間に鳥が野球場に飛び込んで来たのでしょうか?
この時の画像をネットニュースで確認すると、この鳥の群れはアカエリヒレアシシギというシギの仲間ということが分かりました。
▲海上で観察された夏羽のアカエリヒレアシシギ。5月 神奈川県。手前が雌で奥の3羽が雄。タマシギと同様に、雌が雄に求愛し、抱卵と子育ては全て雄が行います。
▲内陸の農地に飛来した幼羽のアカエリヒレアシシギ。9月 茨城県。背に金色の筋が入るのが幼鳥の特徴。仙台の球場に飛び込んだのも多くはこの幼鳥でした。
アカエリヒレアシシギは普通は海上で生活する種で、ふつう内陸にはあまり飛来しません。繁殖地は北極圏のツンドラで、東南アジアからオセアニアまで長い距離の渡りをします。今回見られたのは、夜間に渡っている群れが渡りの途中に野球場の照明に引き寄せられて飛来したものと考えられます。
この出来ごとは、毎晩多くの鳥たちが夜空を南へ渡っていることを感じさせるものです。我孫子市をはじめ関東平野の低地でも、夜間に動いている鳥の声を聞くことができます。たとえばツグミの仲間は「ツィー」という声で鳴きながら渡るので、耳にする機会が多いです。私も21日夜にマミチャジナイと思われる地鳴きを聞きました。
少数派ですが、昼にわたる鳥たちもいます。ヒヨドリやツバメがその代表格ですが、これらの種の渡りは比較的容易に観察することが出来ます。10月のてがたんでは、ヒヨドリの渡りにスポットをあて、渡りの定点観測をしてみたいと思います。10月14日の10時に博物館の玄関前にぜひお集まりください。
September20日Wednesday: ヘビーな出会い
先月、稲穂も色づき始めた谷津ミュージアムへ行った時のことです。
歩いていると、散歩をされていた女性の方から「何を探しているのですか」と声をかけられました。その方の話によると、ここでは最近、ヘビを見かけなくなったとのこと。確かに、アオダイショウやシマヘビ、さらにはその餌となるトノサマガエルやトウキョウダルマガエルの姿も見かけませんでした。
けれども、それも悪くはないとのお話でした。女性の方からすれば、ヘビに会わなくて済む方が有難いのかもしれません。しかし、私は寂しさも感じました。皆さんは、いかがでしょうか?
ところが、その方と別れてからさらに先へ進むと…。
いました!駄洒落ではありませんが、ホッとしました(…発戸…)。この夏は子どもが咬まれてニュースになりましたが、マムシやヤマカガシではないことを確認すると、さらに細部についても証拠写真を撮るために、手で掴みました。ちなみにここではヘビは合計7種の記録があり、セミより種類が多いことになります。
鳥類は羽毛、哺乳類は毛が体表を覆っていますが、爬虫類は「鱗(ウロコ)」に覆われています。このため保温効果はなく、冬は冬眠します。同じウロコでも、魚類は「ヌルヌル」という擬態語が使われるのに対し、爬虫類は乾燥しているので「スベスベ」です。その感触を現代風に言えば、「超、気持ちいい」という言葉がピッタリです(北島康介さんではありませんが)。ヘビは木に巻き付いてスルスルと上り、鳥の巣を襲います。ヒナたちにとっては一番の天敵かもしれません。しかし、人間にとってはこの「巻き付く」という習性が、時には有難いのだと思います。ヘビは人間の手にもからまり、指の間を滑り抜けるときには独特な感触があります。つまり、ペットと触れ合いたい人には最高なのです。ヘビには根強い飼育ファンがいて、ペットショップでは餌用の冷凍マウスも売っています(レンジでチンして与えます)。
ちなみに、今回見つかったのはヒバカリという種類でした。上の写真にもあるように、頭の後ろにある白い線が特徴です。咬まれるとその日ばかりの命だということで、この名が付いたそうなのですが、実際には毒はなく、それどころかむしろおとなしく、掴んでもあまり咬まれることはありません。このため、ハンズオンの格好の教材になります。当館でも以前、別の場所で見つかった個体を少しの間保管し、てがたんの際に、子どもに触らせてあげたことがありました。しかし現代の小学生は、全員がまだヘビを触った経験が無かったと言っていました。
そのときのヒバカリは、生きたまま保管し続けることが難しそうだったので、結局、元の場所に戻しました。ヒバカリは一種類の餌だけだとそのうちに食べなくなりますが、いくつかの餌をバランスよく与えなければならない為、飼育は難しいといわれます。もし、あれだけおとなしくて、しかも餌も簡単に食べてくれたのなら、今頃はとっくに絶滅危惧種になっていたことでしょう。たとえば「ヒバカリ」「販売」と入れてgoogle検索すると、野生個体を採集して販売している業者のホームページも出てきます(一匹数千円…)。別に絶滅危惧種ではなく、違法でもありませんが、やはり商売をする人もいるくらいですので、うまく飼えるかどうかは別として、好きな人はいるのだと思います。確かに、よく見てみると、顔もどこか愛嬌があります。
私も飼ってみたいという誘惑にかられましたが、生き物を持ち出してはいけない場所でしたので、逃がしてあげました。いつまでもこの姿が見られることを願いながら。
わざわざ強調することでもないかもしれないのですが、このような場所では決して持ち出してはいけません。たとえば、珍しい鳥を見つけると、ついつい停めてはいけない場所に車を停めてしまうバードウォッチャーも中にはいますが、珍しい生き物に出会うと、人は我を忘れてしまうこともあります。しかし、このような場所では、保全のために地道な作業を続けられている方々がいらっしゃることを決して忘れてはいけません。思い出だけを、心の中に大事にしまって帰るべきなのです。
それにしても、握ったときの、指の隙間をすり抜けるあの独特な感触は、今でも手の中に残っています。
歩いていると、散歩をされていた女性の方から「何を探しているのですか」と声をかけられました。その方の話によると、ここでは最近、ヘビを見かけなくなったとのこと。確かに、アオダイショウやシマヘビ、さらにはその餌となるトノサマガエルやトウキョウダルマガエルの姿も見かけませんでした。
けれども、それも悪くはないとのお話でした。女性の方からすれば、ヘビに会わなくて済む方が有難いのかもしれません。しかし、私は寂しさも感じました。皆さんは、いかがでしょうか?
ところが、その方と別れてからさらに先へ進むと…。
いました!駄洒落ではありませんが、ホッとしました(…発戸…)。この夏は子どもが咬まれてニュースになりましたが、マムシやヤマカガシではないことを確認すると、さらに細部についても証拠写真を撮るために、手で掴みました。ちなみにここではヘビは合計7種の記録があり、セミより種類が多いことになります。
鳥類は羽毛、哺乳類は毛が体表を覆っていますが、爬虫類は「鱗(ウロコ)」に覆われています。このため保温効果はなく、冬は冬眠します。同じウロコでも、魚類は「ヌルヌル」という擬態語が使われるのに対し、爬虫類は乾燥しているので「スベスベ」です。その感触を現代風に言えば、「超、気持ちいい」という言葉がピッタリです(北島康介さんではありませんが)。ヘビは木に巻き付いてスルスルと上り、鳥の巣を襲います。ヒナたちにとっては一番の天敵かもしれません。しかし、人間にとってはこの「巻き付く」という習性が、時には有難いのだと思います。ヘビは人間の手にもからまり、指の間を滑り抜けるときには独特な感触があります。つまり、ペットと触れ合いたい人には最高なのです。ヘビには根強い飼育ファンがいて、ペットショップでは餌用の冷凍マウスも売っています(レンジでチンして与えます)。
ちなみに、今回見つかったのはヒバカリという種類でした。上の写真にもあるように、頭の後ろにある白い線が特徴です。咬まれるとその日ばかりの命だということで、この名が付いたそうなのですが、実際には毒はなく、それどころかむしろおとなしく、掴んでもあまり咬まれることはありません。このため、ハンズオンの格好の教材になります。当館でも以前、別の場所で見つかった個体を少しの間保管し、てがたんの際に、子どもに触らせてあげたことがありました。しかし現代の小学生は、全員がまだヘビを触った経験が無かったと言っていました。
そのときのヒバカリは、生きたまま保管し続けることが難しそうだったので、結局、元の場所に戻しました。ヒバカリは一種類の餌だけだとそのうちに食べなくなりますが、いくつかの餌をバランスよく与えなければならない為、飼育は難しいといわれます。もし、あれだけおとなしくて、しかも餌も簡単に食べてくれたのなら、今頃はとっくに絶滅危惧種になっていたことでしょう。たとえば「ヒバカリ」「販売」と入れてgoogle検索すると、野生個体を採集して販売している業者のホームページも出てきます(一匹数千円…)。別に絶滅危惧種ではなく、違法でもありませんが、やはり商売をする人もいるくらいですので、うまく飼えるかどうかは別として、好きな人はいるのだと思います。確かに、よく見てみると、顔もどこか愛嬌があります。
私も飼ってみたいという誘惑にかられましたが、生き物を持ち出してはいけない場所でしたので、逃がしてあげました。いつまでもこの姿が見られることを願いながら。
わざわざ強調することでもないかもしれないのですが、このような場所では決して持ち出してはいけません。たとえば、珍しい鳥を見つけると、ついつい停めてはいけない場所に車を停めてしまうバードウォッチャーも中にはいますが、珍しい生き物に出会うと、人は我を忘れてしまうこともあります。しかし、このような場所では、保全のために地道な作業を続けられている方々がいらっしゃることを決して忘れてはいけません。思い出だけを、心の中に大事にしまって帰るべきなのです。
それにしても、握ったときの、指の隙間をすり抜けるあの独特な感触は、今でも手の中に残っています。
September12日Tuesday: 9月の「てがたん」で見た生き物たち
9月9日てがたん日和の中、みんなで博物館周辺を散策しました。
早速、路傍のスミレの中にツマグロヒョウモンの幼虫を見つけました。博物館周辺では、2006年頃から普通に見られるようになった南方系のチョウです。
樹上からビロードハマキの幼虫がぶら下がって来ました。
今日は、イモムシ類がよく見られました。これはホシホウジャク(スズメガ科)の幼虫。
ハチに擬態したカノコガもいました。
エノキの幹にアリの群れが数カ所見られました。よく見ると口吻を突き刺して樹液を吸うアブラムシ(ヤノクチナガアブラムシ)を中心に、アリ(クロクサアリ)が群がっています。アリはアブラムシの出す甘露に集まり、結果的にアブラムシを守っています。
斜面林の下のわずかな湧水にサワガニの幼体(稚ガニ)がいました。
外来種アカボシゴマダラも出現。てがたんコースでは2014年頃からよく見られるようになりました。
ツマグロヒョウモンと同様、南方系のナガサキアゲハも飛んでいました。
博物館周辺のわずか500mの範囲内を散策しただけでも、生き物の季節変化や年変化、関わりあいがいろいろ観察できます。
「てがたん」に参加したい方は、毎月第二土曜日の午前10時までに鳥博玄関前に集合しましょう!