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6月19日に、2021年6月のテーマトークを実施しました。これまでと同様にYoutube liveを用いたライブ配信で行いました。今回は、山階鳥類研究所保全研究室研究員の仲村 昇さんに、「冬眠に似た体温低下、鳥のトーパーとは?」と題して、主に海外で行われた研究の内容をお話しいただきました。

鳥や哺乳類は、体の温度を一定に保つ仕組みを持っている恒温動物です。特に気温の低い時期には体の温度を保つために大量のエネルギーを消費するため、哺乳類には冬眠を行うものが多く含まれています。冬眠と同様に、体のエネルギー消費を抑えて数時間〜数日の休眠を行うことを「トーパー」といいます。鳥類では普通の体温よりも5〜20℃ほど体温を下げ、エネルギーの消費を抑えるそうです。

トーパーを行うことが鳥類で最初に知られたのはアメリカに分布するプアーウィルヨタカでした。この鳥は、冬眠を行う唯一の鳥として知られていますが、実際に確実な冬眠が確認された例はそれほど多くないそうです。他にもヨタカのなかまでは、体の大きいオーストラリアガマグチヨタカを含む複数の種で、低温時にトーパーを行うことが知られています。他にも、ハチドリ類、アマツバメ類の多くの種でトーパーを行うことが知られており、ウズラ、ハト、フクロウ、ツバメ、シジュウカラなどの多様な鳥で実験室や野外での確認の報告があるそうです。

日本産鳥類ではほとんど研究が進んでいないトーパーですが、厳冬期に氷点下になるような環境にいる体の小さい小鳥であるキクイタダキ、ヒガラ、エナガなどの小鳥もトーパーを行っている可能性があるのではないか?とのことでした。

講演の後に、猛禽類でトーパーを行うものはいるのかについてや、低温で弱った鳥とトーパー状態の違いなどついて質疑応答が交わされました。

今回のオンライン講演は、最大同時に66人の方に視聴いただきました。ご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。今回のライブ配信は、以下の同じURLから7月3日(土)までご視聴いただけます。
https://youtu.be/QI2Gg6YuIj4

次回、7月のテーマトークは、山階鳥類研究所の岩見恭子さんに、標本製作の様子を実際にライブ中継しながらお話しいただく予定です。視聴方法などについては、山階鳥類研究所・我孫子市鳥の博物館ウェブサイトで改めてご案内します。次回もぜひご視聴ください。