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 10月19日に、2019年10月のテーマトークを実施しました。今回は、我孫子市鳥の博物館学芸員の岩本二郎が、「我孫子駅前でのイソヒヨドリの繁殖調査」と題して話をさせて頂きました。
 イソヒヨドリは、かつて日本では海岸沿いで見られていましたが、最近は内陸部でも見られるようになってきており、JR我孫子駅前でも繁殖が確認されるようになりました。この鳥の内陸進出の理由を解明するため、2017年から我孫子市において、営巣場所と食性についての調査を実施しました。
 イソヒヨドリの営巣場所はいずれもJR我孫子駅前で、2017年に2巣、2018年に3巣、2019年に2巣を確認しました。営巣に利用されていたのは、換気扇の覆いの中、大型量販店の立体駐車場、金属屋根の中、排煙管の裏といった、コンクリートの建物にある人工物でした。いずれも垂直な壁の上にあり、また、周囲をコンクリートや金属のような固いものに囲まれた隙間で、イソヒヨドリが海岸で営巣する際に利用する岸壁の岩の隙間と共通点がありました。このような構造物が増えたことが、イソヒヨドリの内陸進出を促進した可能性があると考えられました。
 食性調査では、2年続けて営巣した同じ巣で、2017年と2018年にヒナに運んできた餌の種類を記録しました。そこからは都市部で繁殖するイソヒヨドリが雑食性で、いろいろな種類の動植物を幅広く食べていることが分かりました。どちらの年も、よく運ばれてきた餌は、昆虫の成虫(アリ、ハサミムシ、甲虫、ユスリカ、ガやチョウ)、昆虫の幼虫(ガやチョウ、甲虫等)、ムカデ、木の実などでした。この中で、ムカデについては、イソヒヨドリが人工的な環境である線路に降りて、ムカデを捕食する様子を観察することができました。そして、イソヒヨドリの都市部での採餌には、人工物も役立っていると考えられました。
 今回の調査では、建物の所有者の方に調査を許可して頂いたり、情報を提供して頂くなど、我孫子市民の皆様には大変お世話になりました。皆様のご協力のお陰で、調査の難しい市街地でのイソヒヨドリの生態について、貴重な知見を得ることができました。この場をお借りし、厚く御礼申し上げます。
 また、今回は31名の方にお集まりいただきました。ご参加下さいました皆様、有難うございました。