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 1月のテーマトークは、山階鳥類研究所保全研究室研究員の富田直樹さんにお話いただきました。テーマは、「なかなか行けない海鳥の繁殖地ってどんなところ?」でした。
 富田さんは、環境省が日本の国土の自然環境の変化を把握するために実施しているモニタリング1000(全国1000箇所程度のサイトでモニタリング調査を100年以上続けるプロジェクト)の中で、小島嶼の海鳥を担当しています。この調査でおとずれた島々の様子や調査の実際について、現地での写真をもとに紹介してくださいました。
 小島嶼の調査サイトは30カ所。富田さんらは、ここを3年から5年に1回おとずれ、繁殖種や巣穴の数、個体数や植生を調査しています。
 日本の小島嶼で繁殖する海鳥は37種程度であり、このうち23種が環境省のレッドデータブックに記載され、個体数の減少が危ぶまれる鳥たちです。これらの鳥の生息状況をモニタリングし、必要に応じて適切な手だてを講じなければ絶滅も危惧されます。野生生物の保全のためには、こうした地道な努力の積み重ねが大切であることがよく分かりました。
 また、調査している島の中から7カ所の島の現況をお話してくれました。取り上げられた島は、ウミガラスの繁殖で有名な天売島、オオミズナギドリの大コロニーのある御蔵島、アジサシ類の繁殖する沖縄本島周辺の島々、ウミネコの繁殖地で有名な蕪島、アホウドリの保護活動で有名な鳥島、カンムリウミスズメの繁殖する沓島、ヒメクロウミツバメの繁殖する八丈小島です。
 島によっては、ネコやネズミによるヒナの補食が海鳥の繁殖に大きな影響を与えているとのこと。いずれも人間活動によって持ち込まれた天敵です。
 モニタリング1000を通じて、より正確なデータを収集し、保全のために有効な対策を提案するのはもちろん、これを成功させるためには地元の人たちの自発的な活動がなければ成り立たないというお話も印象的でした。