20140917-themetalk40.jpg

 今日のテーマは、「日本産鳥類の固有種が大幅に増えるかも?〜日本繁殖鳥類234種のDNAバーコーディングの成果について〜」で、齋藤武馬研究員(山階鳥類研究所自然誌研究室)のお話でした。
 齋藤さんは、はじめに、現在世界中の科学者が協力して行っている生物のバーコーディングプロジェクト(特定の遺伝子のDNAの塩基配列から種を同定する試みでミトコンドリアDNAのCO鵯領域を比較する)の日本での取り組みを中心に紹介してくれました。
 あらゆる生物群でこのプロジェクトが進みつつあり、日本で鳥類を担当しているのが国立科学博物館と山階鳥類研究所だそうです。
 このプロジェクトが進むと、例えば、①外見が同じに見えても実際には種分化が進んでいる「隠ぺい種」の同定、②羽1枚あるいは種の特徴が未分化なヒナからの種の同定、粉砕されて血液しか残っていないバードストライクを引き起こした鳥の種の同定、③猛禽類の消化管を調べることによる餌動物の同定、など、これまで解明できなかったことを明らかにする技術を新たに手に入れることができます。
 次に、日本の鳥についてこのプロジェクトを進めていく中で、見つかった日本の鳥の分類上の新事実を紹介してくれました。
 日本の鳥の中には形態的な差があり、種として識別しているが、遺伝子配列上の差が種レベル以下の鳥がいること。マガモとカルガモ、アカコッコとアカハラ、カッコウとツツドリなどです。
 一方、外見はよく似ているが、遺伝子の塩基配列の差が種レベルを超えているものもいること。アカヒゲの亜種、カケスの亜種、トラツグミの亜種、キビタキの亜種、ヒヨドリの亜種、カワラヒワの亜種、リュウキュコノハズクの亜種、ヤマガラの亜種、フクロウの亜種などです。
 こうした、分子系統学的な研究が進むにつれて、短時間に形態が分化した種や、逆に同じように見えている鳥たちの中に、遺伝的に隔離されたグループがどんどん見つかり、鳥の種数も増えて行くこともありそうです。