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△首に発信機を装着されたコクガン

5月20日に、2023年5月の「鳥のサイエンストーク」を実施しました。これまでと同様にYoutube liveを用いたライブ配信で行いました。今回は、山階鳥類研究所の澤 祐介さんに、「ガン類はどんな環境を使っているか 〜発信器でわかること〜」と題してお話しいただきました。

澤さんたちのグループでは、日本に渡ってくるガン類の渡りルートの解明のため、発信機を装着して個体の追跡を行っています。2017年からコクガンの追跡を開始され、2023年現在は日本に渡来する6種の追跡プロジェクトを進められています。

これらの追跡プロジェクトでは、国をまたぐようなダイナミックな渡りの動きだけではなく、いつ、どのような環境を利用したのか?という詳細なデータを分析することもできます。今回は、コクガンの追跡データを用いて明らかになったことについてお話しいただきました。

コクガンは、小型のガンの仲間で、日本国内では唯一、沿岸域を主な生活の場とする種類です。これまで澤さんたちが行ってきた調査で、日本で越冬するコクガンは、春にはオホーツク海を縦断してオホーツク海北岸の中継地で短期間過ごしたあと、陸地の上を一気に飛んで北極海沿岸の繁殖地まで渡ることが分かりました。また、秋には沿岸沿いに東側に移動したのち、カムチャッカ半島の東側を少しずつ移動して日本に戻ってくることが分かり、中国まで渡っているものがいることが分かりました。

これらの渡り経路のうち、いくつかの渡来地はこれまで知られていない、または情報が非常に乏しいものでした。そこで、澤さんたちは現地の研究者と協力して、ロシアのノボシビルスク諸島が14000羽ほどが利用する換羽地であること、オホーツク海北岸の湿地が春の中継地であること、中国の山東半島先端部の沿岸域が越冬地であることを突き止められました。中国の越冬地は1990年代に一度確認されただけで、それ以来の再発見となりました。

春と秋の重要な中継地として利用されている野付半島の位置する道東地域では、季節的な環境利用の違いや周辺の渡来地との行き来などを解析されました。秋の渡り時期には捕獲場所である野付半島を中心に風連湖や国後島と行き来する個体が多い一方、春には風連湖をあまり利用せず、野付半島と国後島を行き来する個体が多いこと、遅い時期ほど国後島側を利用する個体の割合が高くなることが分かりました。

さらに、野付半島では、基本的に春・秋ともに昼間は浅い場所を、夜には深い場所を利用する傾向がありましたが、秋には夜に干潮になった場合に浅い場所を利用することが多いことが分かりました。これは、秋には渡りのエネルギー蓄積の為に短時間にたくさん採食する必要があることと関連していそうだとのことでした。

野付湾の鳥獣保護区は、コクガンが秋の渡り時期に使っていた範囲の74%(日中は84%、夜間は64%)をカバーしていました。現状の保護区に3劼離丱奪侫,鮴澆韻襪函△海離バー率は95%に向上するそうです。このような生息地の利用環境範囲の情報を、今後の保全に証拠として活用していきたいとのことでした。

このように渡りルートを解明し、重要生息地を洗い出し、その生息地の利用状況を詳しく解析することで、渡り鳥の適切な保全を進めていきたいとのお話で、講演を締めくくられました。

講演のあとに、コクガンの春と秋の渡り経路が違う理由や、アジアと北米の越冬地間での分散があるかどうかなどについて、視聴者の皆さんからのご質問をいただき、澤さんにお答えいただきました。

今回のオンライン講演は、最大同時に48人の方に視聴いただきました。ご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。今回は、6月3日(土)まで見逃し配信を行います。配信したURLと同一の以下のリンクよりご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=7Cealax4hkM

次回、6月の鳥のサイエンストークは、山階鳥類研究所の仲村さんに、埼玉鴨場におけるカモ類の標識調査からわかったことについてお話しいただきます。配信方法などについては、山階鳥類研究所・我孫子市鳥の博物館ウェブサイトで改めてご案内します。次回もぜひご視聴ください。

参考情報:
東アジアのガン類の最新情報については、2023年1月に行われた国際シンポジウムの講演をyoutubeでご視聴いただけます。
https://www.youtube.com/watch?v=x0A9V3W369E