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△通常の亜種エナガ(左)と、眉斑の薄いエナガ(右)

3月18日に、2023年3月の「鳥のサイエンストーク」を実施しました。これまでと同様にYoutube liveを用いたライブ配信で行いました。今回は、我孫子市鳥の博物館の望月みずきが、「眉の薄いエナガはどこにいる?」と題してお話ししました。

エナガは尾の長い小鳥で、ユーラシア大陸の温帯〜亜寒帯の地域に広く分布しています。日本では、南西諸島などを除く各地の森林や、里山や公園などの身近な環境にも生息しています。日本国内に分布するエナガは4つの亜種(地理的な羽色や大きさの変異)に分けられており、北海道には亜種シマエナガ、本州には亜種エナガ、四国と九州には亜種キュウシュウエナガ、対馬には亜種チョウセンエナガが分布しています。このうち、北海道に分布する亜種シマエナガは頭部に斑がなく、一様に白いのが特徴ですが、亜種エナガを含む他の3亜種は濃い眉のような模様(以下、眉とします)があるのが普通です。

ところが、2010年ごろから、千葉県北西部をはじめとする関東地方の一部の地域で、眉が薄かったり、時には亜種シマエナガのようになかったりするエナガが見つかるようになりました。このエナガは、シマエナガよりも全体的に羽色が濃く、体の羽毛の地色の白さがシマエナガに比べて乏しいことから、迷ってやってきたシマエナガではないと考えられました。また、眉の薄さには個体変異が大きいこともわかりました。しかし、このエナガがどのくらいの範囲に分布しているのか、なぜこのような羽色の個体が一部の地域だけに分布するのかはわかっていません。

そこで、千葉県とその周辺地域において、眉の薄いエナガがどこに分布しているのかをアンケート調査や文献、インターネット上に掲載された情報をもとに調べました。その結果、2006年から2022年の間に、眉の薄いエナガが35地点、通常のエナガが32地点で観察された情報が集まりました。眉の薄いエナガは、千葉県の中では北西部だけではなく全域に分布しており、東端の銚子市や南端の館山市でも見つかりました。また、渡良瀬遊水地や茨城県石岡市などの北部の地域、西側は埼玉県でも数例の目撃情報が得られたそうです。一方で、神奈川県や東京都の西部からは目撃情報が得られず、これらの地域には眉の薄いエナガは分布していない可能性が示唆されました。また、どの観察情報も、通常の濃い眉の個体の中に薄い眉の個体が混ざっているという状況で、眉の薄い個体のみの群れは記録されませんでした。

今後は、亜種シマエナガとの交雑の可能性を検証するための遺伝的な調査や、他の地域との形態や羽色の比較を行っていきたいとのことでした。

講演のあとに、眉の薄さに地理的な変異がみられるかどうかや、声の違い、頭部以外の羽色の違いがあるかどうかなどについて、視聴者の皆さんからのご質問をいただき、望月からお答えしました。

今回のオンライン講演は、最大同時に85人の方に視聴いただきました。ご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。今回は、4月1日(土)まで見逃し配信を行います。配信したURLと同一の以下のリンクよりご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=i-QhLiDK-tQ

次回、4月の鳥のサイエンストークは、山階鳥類研究所の浅井さんに、鳥類に見られる白い羽毛の羽色異常についてお話しいただきます。配信方法などについては、山階鳥類研究所・我孫子市鳥の博物館ウェブサイトで改めてご案内します。次回もぜひご視聴ください。