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▲鳥に装着された発信機によって、一度に長距離を渡ることがわかったオオソリハシシギ。

2月19日に、2022年2月のテーマトークを実施しました。これまでと同様にYoutube liveを用いたライブ配信で行いました。今回は、山階鳥類研究所研究員の森本 元さんに「さまざまな鳥の渡りー鳥の渡り研究の発展とよもやま話ー」と題してお話しいただきました。

鳥の渡りは、古くから多くの人の注目を集め、多くの研究者によって調べられてきました。その伝統的な手法の一つが、鳥類標識調査です。鳥類標識調査は、鳥に個体識別のための足環などを装着して放鳥し、再捕獲や観察によって情報を収集することによって、鳥の移動や寿命を調べる調査です。日本では、1924年に始まってから、90年以上にわたって続けられており、現在では環境省が山階鳥類研究所に委託して事業が継続されています。

30年ほど前からは、GPS発信機や記録計を鳥そのものに取り付けることにより、より詳細な移動の調査が行われるようになりました。これによって、渡り研究は飛躍的に進展し、既存の標識調査のデータと組み合わせることで、多くの鳥の渡り経路や渡りの戦略が明らかになっています。しかし、これらの情報は一般のバードウオッチャーや愛好家の人にとって、ひとつひとつもとになった論文にアクセスするのは難しいでしょう。そこで、鳥の渡りについて近年出版された、森本さんおすすめの日本語書籍をいくつかご紹介いただきました。

「鳥の渡り生態学」(2021年、東京大学出版会)は、鳥の渡りについて様々な分類群や観点からまとめられた総合的な学術書で、鳥の渡りを総合的に深く学びたいという人に向いているそうです。「世界の渡り鳥図鑑」(2021年、緑書房)は、世界の様々な鳥の渡りが魅力的な写真とともに紹介されており、世界の鳥の渡りの多様性を知るのに向いているそうです。「日本の渡り鳥ガイド」(2019年、文一総合出版)は、渡り鳥を観察するためのコツが紹介されており、実際に野外で観察したい人に役立つ情報が含まれているそうです。他にも、渡り鳥に関する魅力的な書籍をご紹介いただきました。

講演のあとに、標識調査の放鳥地と回収地を結ぶ線の意味や、渡り鳥への餌づけの是非などについて質問をいただき、森本さんにお答えいただきました。

今回のオンライン講演は、最大同時に138人の方に視聴いただきました。ご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。今回のライブ配信は、2月26日(土)まで以下のURLより見逃し配信を行います。
https://www.youtube.com/watch?v=n4JU1b4KpKc

次回、2022年3月のテーマトークは、我孫子市鳥の博物館の望月が、DNAを用いた研究によって明らかになったキジバトの進化史についてお話しします。
配信方法などについては、山階鳥類研究所・我孫子市鳥の博物館ウェブサイトで改めてご案内します。次回もぜひご視聴ください。

参考資料:

鳥類標識調査について
https://www.biodic.go.jp/banding/search.html

鳥類アトラス
https://www.biodic.go.jp/banding/atlas.html

鳥の渡り生態学
http://www.utp.or.jp/book/b577415.html

世界の渡り鳥大図鑑
https://www.midorishobo.co.jp/SHOP/1584.html

日本の渡り鳥観察ガイド
https://www.bun-ichi.co.jp/tabid/57/pdid/978-4-8299-7508-4/Default.aspx