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▲キンバトの雄(撮影:仲地邦博氏)

1月15日に、2022年1月のテーマトークを実施しました。これまでと同様にYoutube liveを用いたライブ配信で行いました。今回は、山階鳥類研究所広報ディレクターの平岡 考さんに「標本から鳥の換羽を調べるー先島諸島産のキンバトの調査」と題してお話しいただきました。

換羽とは、周期的な羽毛の更新のことをいい、1年に1回の基本的な更新スケジュールに加え、成長段階や季節によって様々な生え替わりの方式があります。換羽は繁殖、渡りとならぶ鳥にとっての大イベントであるため、鳥がどのように暮らしているのかの研究をする上で重要です。また、換羽の方式を理解する事で、鳥の年齢を識別する事が出来る場合が多く、様々な生態研究に役立つ基礎的な情報となります。

キンバトは東南アジアから南アジア、オーストラリアに分布する小形のハトの仲間で、日本では沖縄県南部の先島諸島にのみ生息しています。日本産の亜種は分布が狭く希少なため、国内希少野生動植物種や天然記念物に指定されています。

平岡さんは、この地域で窓ガラスにぶつかって死んでしまったあと山階鳥類研究所に寄贈されたキンバト22羽の初列風切の換羽を調べました。その結果、成鳥・幼鳥ともに夏から秋にかけて最も内側の初列風切から換羽が始まること、その換羽は繁殖期までに完了している場合と、外側数枚を残して繁殖期に中断する場合があることがわかりました。残された外側数枚の風切羽の換羽は、中断した後に再開されるようです。このとき、次の換羽のサイクルが再び始まるので、一時的に翼に3世代の羽毛が見られる事があるということでした。このような換羽サイクルは、渡りをしない亜熱帯の鳥や、あるいはハト科の鳥に特徴的であるかもしれないとのことでした。

このような羽衣の変化や生殖器の確認の結果から得られる基本的な情報をもとに図鑑が作られること、今後も情報を蓄積していくために、鳥類の死体の寄贈を引き続きお願いしたいということをお話しされ、お話を締めくくられていました。

講演のあとに、生殖器の確認によって年齢を識別する事は可能かどうか、キンバトのような天然記念物の鳥の死体を拾ったときはどのような届出が必要なのか、温帯の鳥と亜熱帯の鳥の換羽はどのように異なるのかなどについて質疑応答が交わされました。

今回のオンライン講演は、最大同時に80人の方に視聴いただきました。ご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。今回のライブ配信は、1月22日(土)まで以下のURLより見逃し配信を行います。
https://www.youtube.com/watch?v=rNAKOmPp9PE

次回、2022年2月のテーマトークは、山階鳥類研究所の森本 元さんに、鳥類標識調査や最近の追跡機器によって明らかになった様々な鳥の渡りに関する話題をご紹介頂きます。
配信方法などについては、山階鳥類研究所・我孫子市鳥の博物館ウェブサイトで改めてご案内します。次回もぜひご視聴ください。