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3月20日に、2021年3月のテーマトークを実施しました。これまでと同様にYoutube liveを用いたライブ配信で行いました。

今回は、山階鳥類研究所自然誌研究室専門員の小林さやかさんに、「古い標本が語るもの ―明治に米国スミソニアン博物館から送られた鳥類標本―」と題して、古い標本の歴史にまつわる研究のお話しをしていただきました。

山階鳥類研究所には約80,000点におよぶ日本最大の鳥類の標本コレクションが所蔵されており、100年以上前に製作された古い時代の標本も多く含まれています。そのうち、東京帝室博物館(現在の東京国立博物館)から学習院を経て寄贈されたものが3,300点以上も含まれています。

古い文書の記録をさかのぼると、東京帝室博物館と東京教育博物館(現在の国立科学博物館)は1877年と1887年の2回にわたってアメリカのスミソニアン博物館から合計1300点以上の鳥類標本の寄贈を受けていることがわかりました。そして、日米双方に保管されている台帳の照合から、それらの標本の大部分は山階鳥類研究所に現存していることが明らかになりました。

資料や台帳などの照合を行うことで、失われたり誤ってラベルに記入されていた情報を復元することができたとのことです。たとえば、山階鳥類研究所で最も古い標本と思われていた1779年に採集されたとラベルに記されていたアメリカオグロシギの採集年は、正しくは1879年だったことがわかりました。

これらの標本群には、カロライナインコなどの絶滅種や、リュウキュウヒヨドリ、リュキュウカラスバトなど日本産鳥類のタイプ標本(種や亜種の記載のもとになる学術的に重要な標本)が含まれています。これらは、日本側から分類学的に重要な標本を送った対価として贈られたものではないかとのことです。また、著名な人物が採集した標本として、第26代アメリカ大統領のセオドア・ルーズベルトや作家のW.H.ハドソン、鳥類図譜の制作者であるジョン・グールドが採集・収集した標本などが見つかったとのことでした。

講演の後には、標本をやり取りしていた日本側の担当者は誰だったのか、当時の交換にあたっての標本の収集方針などはあったのかなどについて質疑応答が交わされました。

今回のオンライン講演は、最大同時に42人の方に視聴いただきました。ご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。今回のライブ配信は、以下の同じURLから4月3日までご視聴いただけます。
https://www.youtube.com/watch?v=tppgNOFvBSA

次回、4月のテーマトークは、山階鳥類研究所の千田万里子さんに、標識調査で明らかになった鳥の寿命についてのお話をしていただきます。視聴者のみなさんが寿命を知りたい鳥の種類をチャットでリクエストしていただき、それにお答えする形式でのお話も予定しています。視聴方法などについては、山階鳥類研究所・我孫子市鳥の博物館ウェブサイトで改めてご案内します。次回もぜひご視聴ください。

参考資料:
小林さやか・加藤 克 (2017) 明治・大正期に収集された国立博物館の鳥類標本コレクションの検証―山階鳥類研究所所蔵の帝室博物館旧蔵鳥類標本の歴史的背景とその評価―.日本動物分類学会誌 43: 42-61.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/taxa/43/0/43_42/_article/-char/ja/

小林さやか・加藤 克 (2020) 東京帝室博物館旧蔵鳥類標本コレクションの歴史―スミソニアン米国立博物館に由来する標本に注目して―.日本動物分類学会誌 49: 45-55.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/taxa/49/0/49_45/_article/-char/ja/

山階鳥類研究所標本データベース
https://decochan.net/