null

2月20日に、2021年2月のテーマトークを実施しました。これまでと同様にYoutube liveを用いたライブ配信で行いました。

今回は、山階鳥類研究所自然誌研究室研究員の浅井芝樹さんに、「性別が4つある?! 〜ノドジロシトドの繁殖生態〜」と題して、アメリカの鳥類学者であるElaina Tuttleさんたちによって行われた研究の紹介をしていただきました。

ノドジロシトドは北米に生息するホオジロ科の小鳥です。この鳥には羽色に「白色型」と「褐色型」の2タイプがあることが知られており(羽色型といいます)、これは雌雄に関係がないものです。雄の繁殖行動は、羽色型によって異なることが知られており、白色型の雄はヒナの世話をせずによく囀り、周辺のなわばりの雌とつがい外交尾を試みようとする一方で、褐色型の雄は雌と協力してヒナの世話をし、つがい相手の雌を他の雄からよく防衛します。さらに興味深いことに、ノドジロシトドの雌雄は、互いに異なる羽色型の相手としか番いにならないそうです(異系交配といいます)。すなわち、白色型の雄は褐色型の雌と、褐色型の雄は白色型の雌としかつがいになりません。羽色型のタイプの個体とつがいになったケースはほとんどなく、このような場合には育つ子の数が少なくなると予想されるとのことです。
このような不思議な社会は、どのように維持されているのでしょうか?

このカギは、ノドジロシトドの2番染色体の一部に「逆位(ある1つの染色体に2か所の切断が起こりその断片が反対向きに再構成されてしまうこと)」が起こったことでした。これによって、この染色体では減数分裂の際に組換えが起こらなくなりました。そのため、この部分にある羽色型と繁殖行動をつかさどる遺伝子は、そのまま子に伝わることになります。これは、性染色体のふるまいとよく似ています。そのため、ノドジロシトドでは、羽色型(2つ)×性別(2つ)=4つの性別があるように見えるということなのです。
このような特殊な性別を持つ生物はほとんど知られておらず、生物においてどのように性決定が進化したかを探るうえで重要な発見であるということでした。

講演の後には、ノドジロシトドに見られる羽色型が地理的に偏りがあるかどうかや、なぜ同類交配で適応度が下がるのかなどについて質疑応答が交わされました。

今回のオンライン講演は、最大同時に82人の方に視聴いただきました。ご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。今回のライブ配信は、以下の同じURLから3月6日までご視聴いただけます。https://www.youtube.com/watch?v=dMvynSffk5U&feature=youtu.be

3月のテーマトークは、山階鳥類研究所の小林さやかさんに、山階鳥類研究所に保管されている標本のうち、明治時代にアメリカのスミソニアン博物館から日本にやってきた標本ついてのご研究を紹介していただきます。視聴方法などについては、山階鳥類研究所・我孫子市鳥の博物館ウェブサイトで改めてご案内します。次回もぜひご視聴ください。

参考資料:
今回ご紹介いただいた論文は以下の通りです。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26804558/

この論文の解説記事(英語)はこちらから読めます。
https://www.nature.com/news/the-sparrow-with-four-sexes-1.21018