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2020年12月12日(土)に、令和2年度の鳥博セミナーをオンライン配信にて開催しました。今回は「日本列島の鳥の起源と進化ーDNAの研究でわかった鳥たちの歴史ー」と題して、国立科学博物館動物研究部の西海 功さんにお話しいただきました。

日本鳥類目録に記載されている日本産の鳥は633種です。また、世界で日本にしかいない鳥の種数は、分類の扱いによって異なりますが、13種から21種くらいです。これらの数は多いのでしょうか?それとも少ないのでしょうか?
日本と同様の面積・緯度の島国であるイギリスとニュージーランドと比較してみると、固有種はニュージーランドよりも少ないものの、温帯の島国としては日本の鳥の種数や固有種数はそこそこ多いといえるようです。

西海さんたちがかかわって進められているDNAバーコーディングのプロジェクトでは、これまでに日本の繁殖種の93%のDNA情報の登録が進められてきました。このデータを用いて解析すると、種内の遺伝的な変異が通常よりも大きい種がいくつも見つかり、アカヒゲ、ヒヨドリ、カワラヒワなどでこれまで亜種とされてきた日本固有種の存在が示唆されています。今後、形態や生態、鳴き声などの違いが確認されれば、これらは種として認められ、日本固有種があと10種程度増える可能性があるとのことです。

DNAバーコーディングのデータからは、鳥たちの進化の歴史を推定することもできます。たとえばヤマガラでは、集団ごとにDNAの配列を比べてみると、台湾→八重山→九州→本州と分布を拡大してきたことがわかりました。同様に、カケス類でこのような歴史をたどってみると、ルリカケス(奄美諸島)→カケス(九州〜本州)→タカサゴカケス群(中国南部)→ミヤマカケス(大陸東部・北海道)という順に分岐していることがわかりました。すなわち、日本の鳥は大陸から分散して定着しただけでなく、日本列島で種分化が起こり、その集団が再び大陸に分散して分布を拡大したものがあることが示唆されたとのことです。このような現象を逆移入(Reverse Colonization)といい、日本を起源地とする鳥は考えられたよりも多いかもしれない、とのことでした。

講演のあとには、種や亜種の境界はどのように決めるのか、日本固有種とはどのような種なのかなどについて、多くの質問やコメントが寄せられ、西海さんにわかりやすくお答えいただきました。
今回の鳥学講座は、最大同時に122人の方にご視聴いただきました。お話しいただいた西海さん、ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。

今回の講演は12月26日(土)まで、鳥の博物館のYoutubeチャンネルにて見逃し配信を行っています。ご興味があるけれど見逃した方や、もう一度見たい方は以下のページにあるリンクからご覧ください。
https://www.youtube.com/channel/UCCkBys4vs-AvNOMll8MCkSw

開館30周年記念特別展示「日本の鳥」は、今回ご紹介いただいた様々な固有種を含む日本産鳥類の標本351点を展示しています。1月31日までの開催ですので、ぜひ鳥の博物館にもお越しください。