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4月20日に、4月のテーマトークを開催しました。今回は、山階鳥類研究所保全研究室専門員の千田万里子さんに、「フラッグ付きシギ・チドリの観察記録〜窓口担当者のよもやま話〜」と題してお話しいただきました。

千田さんは、保全研究室で鳥類標識調査のデータ管理の業務を担当されていますが、昨年からシギ・チドリのフラッグの記録のとりまとめの担当をされています。今回はシギ・チドリの追跡調査の概要や、その業務に関わるさまざまな発見などをお話しいただきました。

ロシアの東部やアラスカで繁殖するシギ・チドリの仲間は、日本を通過して、オーストラリアや東南アジアで越冬します。彼らが渡りの時に通過するルートをフライウェイといい、日本は「東アジア・オーストラリアフライウェイ」の中継地点として、シギ・チドリの保全上重要な位置を占めています。しかし、生息地となる湿地の開発などによって、シギ・チドリの個体数は急激に減少しており、保全する必要が出てきています。

シギ・チドリの渡りルートを調べて保全に役立てるため、各国でシギ・チドリの脚にフラッグと呼ばれるプラスチック製の標識を付けて渡りを調べる調査が行われています。フラッグは脚の色や組み合わせにより、装着した場所が分かるようになっています。最近では、フラッグの中に数字や文字が刻印されたフラッグも使われるようになり、より詳細な個体の移動データが蓄積されています。日本では環境省が山階鳥類研究所に委託して調査を実施しています。

フラッグを付けて放鳥された鳥は、一般のバードウオッチャーによる情報提供によって、その後の追跡がなされています。今回は千田さんが担当したいくつかの事例をご紹介いただきました。

南オーストラリアで放鳥され、その後茨城県と石川県で発見されたミユビシギ、カムチャッカ半島で放鳥され、その後国内で発見されたトウネン、また、同一のフラッグによって北海道から茨城県へ移動したミユビシギの例などをお話しいただきました。また、東京湾で一年中観察報告されるダイゼンの若鳥からは、成鳥と幼鳥で異なる渡りの生態を読みとることができたとのことでした
。また、最近ではウェブページやSNS上での報告もあるそうで、台湾からのアカアシシギの報告や、タイからのトウネンのフラッグの報告について対応したことをお話しいただきました。

こうしたフラッグの報告の件数は渡りのピーク時には月120件を超えることもあったそうで、1つ1つにお返事を出すのはなかなか大変なことだったそうです。季節によって報告されるフラッグの種類が異なるそうで、たとえば、9月になると全国的にカムチャッカ放鳥のフラッグを付けたシギ・チドリが報告されるようになるそうです。こうした変化を一般の方にも感じてもらえるよう、将来的には放鳥時の情報やその後の追跡結果が共有できるようなウェブサイトの立ち上げを目指したい、とのことでした。
(参考:千田さんにご紹介いただいた台湾のシギ・チドリの標識個体が見られるウェブサイトhttp://resights.birdband.org/

今後も、フラッグ付きのシギ・チドリを観察、撮影されましたら、以下のウェブサイトにある案内の通りメールにてご報告をお願いしたいとのことでした。
http://www.yamashina.or.jp/hp/ashiwa/ashiwa_index.html#11

今回は、32名の方にお集まりいただきました。ご参加いただいたみなさま、お話しいただいた千田さん、ありがとうございました。次回のテーマトークは5月18日(土)に実施予定で、山階鳥類研究所客員研究員の茂田さんによるハマシギのお話です。詳細なご案内は近日中に鳥の博物館ウェブサイトに掲載いたします。
また、5月6日(月・祝)には我孫子市内でシギ・チドリの観察会を実施します。こちらもぜひ併せてご参加ください。
http://www.city.abiko.chiba.jp/bird-mus/gyoji/event/index.html