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 今日は、山階鳥類研究所コレクションディレクターの鶴見みや古さんに「3種のカワセミの謎〜山階鳥研のステンドグラス〜」をテーマにお話いただきました。
 山階鳥類研究所の前身の山階家鳥類標本館は、渋谷の南平台に1932年に建設され、その玄関には山階芳麿博士が研究対象と考えた動物地理区を現した3種のカワセミの仲間がデザインされたステンドグラスがはめ込まれました。そのデザインをよりどころに描かれたとされる小林重三(こばやししげかず)のイラストが、山階鳥類研究所報告の第1巻の表紙に使われ、それぞれの鳥の名前が記載されています。旧北区のアカショウビン、東洋区のヤマショウビン、オーストラリア区のシロガシラショウビンです。
 鶴見さんは、ステンドグラスにデザインされたヤマショウビンとシロガシラショウビンは、その種の特徴と異なることに気がつきました。これがなぜなのか調べてみた結果についてお話してくださいました。
 ヤマショウビンについては、単にデザイン上の問題で本来の特徴が省略されたとしか考えられなかったそうですが、シロガシラショウビンは現在のナンヨウショウビンの一亜種シロガシラナンウショウビンの姿でした。実は、ステンドグラスがつくられる前に、鳥類研究者の籾山徳太郎氏がサイパン島で採集した鳥をシロガシラショウビンという和名で記載し、これがステンドグラスに使われ、その名前がそのまま記載されたのだそうです。その後ニューギニア等周辺に生息する別の種をシラガシラショウビンと呼び、籾山徳太郎が記載した種をナンヨウショウビンと呼ぶようになったために、このような混乱が起こったとのことでした。
 和名は、学名とちがって使い方に統一されたルールがないため、しばしば混乱を招きます。しかし日本人にとっては便利なので、多くの人が共通した名前を使えるように、例えば日本鳥学会では日本鳥類目録に和名を記載しています。多くの人がこの名前を使い、これが標準和名となっています。
 また、鶴見さんは、ステンドグラスの原画を誰が描いたのか、またステンドグラスをよりどころに描いたとされる小林重三の絵がなぜ左右反転されているのかなど、このステンドグラスにまつわる未解決の疑問も示されました。
 日本の鳥類学の黎明期の頃の時代背景や山階鳥類研究所が創設された頃の様子もイメージできるお話でした。
 ご来場の皆様、お話してくださった鶴見さん、ありがとうございました。