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11日3日(土)に、第28回JBF鳥学講座をアビスタホールにて開催しました。今回は「スズメ研究のススメ」と題して、北海道教育大学函館校准教授の三上修さんにお話しいただきました。

スズメは私たちに最も身近な鳥ですが、知っていそうで知らないことがたくさんあります。まず、スズメの住んでいる都市の環境についてお話しいただきました。日本の鳥のおよそ600種のうち、カルガモ、ハシブトガラス、ハクセキレイなど、30〜50種が都市にも生息しています。都市環境は、餌は一般に考えられているよりも豊富で、小鳥にとっては天敵が少なく、冬の気温が高くて安全である、などの利点があるそうです。森林など他の生息地と比べると、種数は少ないけれど、個体数は多い、というのが都市の鳥類の特徴と言えるようです。

続いて、スズメの基本的な姿かたちや生態についてお話しいただきました。スズメの成鳥は頬に黒い斑があり、喉が黒いことが特徴ですが、生まれてから数カ月の間はこの黒い部分がはっきりしません。スズメの繁殖期は春から夏で、東京では3月に巣作りがはじまり、4月に産卵、5〜8月に子育てを行います。スズメは、人家の隙間などの人工的な構造物を巣づくりの場所として利用することで、都市を主な生活の場としています。

では、身近な鳥であるスズメの数はどのように変化しているのでしょうか? 三上さんは、各地での個体数調査、農作物の被害面積、標識調査や狩猟での捕獲数など、様々な方法でとられたデータを解析し、その全てがスズメの減少を示唆していることを突き止めました。1990年ごろと比較すると、現在ではおよそ50〜80%ほど減少していると推定されるそうです。

その原因を突き止めるため、巣をつくる場所に注目して調査を行った結果、2000年以降に建てられた新しい住宅地では、古い住宅地に巣の密度が1/2〜1/3になっていることが分かりました。また、NPO法人バードリサーチと協力して「子雀ウォッチ」という調査を展開し、全国でひと家族当たりヒナが何羽いたかを市民調査によって明らかにしました。その結果、403例のデータが集まり、特に都市部で巣立ち後のヒナの数が少ないことが分かりました。これらの結果から、巣を作る場所が少なくなり、1家族あたりのヒナの数が減っていることが、近年のスズメの減少に影響していることが分かってきました。
他にも、巣立った子スズメがうまく育っていない可能性や、親スズメの死亡率が高くなっている可能性も考えられるそうですが、これらの情報はなかなか検証が難しく、スズメの減少の要因については、まだ完全に解明されたわけではありません。今後のご研究が楽しみです。

最後に、スズメと人とのかかわりについてお話しいただきました。鳥が街中にいることは、糞や騒音などのデメリットもありますが、昆虫や雑草を食べてくれる、自然を感じることができるなどのメリットがあります。また、文学、絵画、食からアニメまで、様々な場面にスズメが登場することを紹介いただきました。これらの文化的な価値は、スズメが身近にいるから、私たちがスズメのことを知っているから受けられるものです。知っているからこそ価値を感じ、それが社会全体の中で共有されていくことで、「スズメが身近にいる価値を引き継ぐサイクル」が回っていくとよいのではないか、というお話がとても印象に残りました。

質疑応答の時間では、会場から様々な質問やコメントが飛び交い、多くの方がスズメや身近な鳥に対して持っていた疑問が解け、鳥たちのことをより深く知ることができたのではないかと思います。
今回は、161名の方にご来場いただきました。お話しいただいた三上さん、ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。また、会場の収容人数の上限からお断りせざるを得なかったみなさま、大変申し訳ありませんでした。来年以降の実施方法について再度検討を行いたいと考えております。来年の鳥学講座を楽しみにお待ちください。