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 今日は、山階鳥類研究所客員研究員の園部浩一郎さんに「博物画家・小林重三と日本の三大鳥類図鑑」をテーマにお話いただきました。
 日本の三大鳥類図鑑とは、黒田長禮による鳥類原色大図説(以後略して黒田図鑑)、山階芳麿による日本の鳥類と其の生態(以後略して山階図鑑)、清棲幸保による日本鳥類大図鑑(以後略して清棲図鑑)のことです。これらの日本の鳥類学の発展の上で、欠くことのできない重要な三つの図鑑すべてに小林重三は図版を描いています。
 しかし、図鑑における図版の持つ意味の重要性とは裏腹に、当時は、図版作製者名は図鑑に記載されなかったため、小林重三の名前を知る者は、ほとんどいませんでした。
 1991年に、園部さんが編集する日本野鳥の会の会誌「野鳥」に、児童作家の国松俊英さんが小林重三の生涯について記事を連載し、1996年にはこの成果が「鳥を描き続けた男 鳥類画家小林重三」として出版されました。これに前後して、平塚市博物館・流山市生涯学習センター・町田市立博物館でそれぞれ小林重三の特別展が行われたことで、すぐれた鳥類画家である小林重三の名が知られるようになりました。
 今日のお話では、三大鳥類図鑑の特徴やそれにあわせた図版の作製の過程などが紹介され、三大鳥類図鑑に欠かせぬ小林重三の図版の価値に改めて気づかされました。また、それぞれの図鑑の著者である鳥類学者の細かく厳しい要求に応えることができた小林重三の技術の高さや意気込みも感じることができました。
 また、お話の最後に神奈川県の辻堂で描いた海岸風景の油絵が示され、小林重三自身は、風景画家としての思いが強かったというお話は印象的でした。三大鳥類図鑑の中にも図鑑用の図版と違う風景画家としての構図が見られるものがある理由もよく分かりました。
 講師の園部さん、また暑い中ご来館いただいた皆さま、ありがとうございました。

※お詫びと訂正
 4行目(「以後略して山階図鑑」とすべきところ「以下略して黒田図鑑」と誤記載していましたので訂正いたします)saito2019.6.28