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 今回は、公益財団法人山階鳥類研究所自然誌研究室専門員の小林さやかさんに、「明治期の標本が語るもの−絶滅鳥カロライナインコ−」についてお話いただきました。
 山階鳥類研究所が所蔵するカロライナインコの剥製標本3点の中の1点は、明治期に国立科学博物館が所蔵していた標本で、東京帝室博物館とアメリカのスミソニアン博物館と山階鳥類研究所の3つのラベルが付されています。それぞれのラベルには、標本番号はありますが、採集地や採集日に関する詳細なデータは書かれていませんでした。そこで、小林さんは、ラベルの標本番号をたよりに、国内外の各施設の標本台帳を調べ、この資料が、アメリカのフロリダ州シャーロット・ハーバーでジェームズ・ベルによって採集され、1881年8月11日に登録された標本であることをつきとめました。また、1882年のスミソニアン博物館の年次報告に、ジェームズ・ベルがフロリダで鳥類と爬虫類を採集した記録も見つけたそうです。
 長年かけて集積された標本は、時代の趨勢により保管施設が移り変わり、付帯する情報も消失しがちですが、現時点で可能なかぎりの情報を集約し、標本のデータベースを構築しておくことは、後生に活きる大切な仕事だと思いました。また、標本ラベルの情報から、付加情報を次々にたどっていく作業のお話には、さまざまな情報を整理しながら推理する探偵のような醍醐味を感じました。