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 今日のテーマは、タマシギの繁殖生態でした。山階鳥類研究所保全研究室の米田重玄(こめたしげもと)研究員にお話しいただきました。タマシギは、一般には、雌が産卵する以外、子育てにおける雌雄の役割が逆転した鳥として知られています。
 米田さんは、1979年から1981年にかけて愛媛県と滋賀県のフィールドでタマシギの生態研究を行いました。この時得られた成果は、国際的な鳥類学雑誌のTHE AUK誌にも掲載されています。
 お話の中で、まず、鳥類全体の婚姻形態の概要の説明があり、約90%が一夫一妻である鳥類の中にあって少数派(約6%と)の一妻多夫の鳥として認識されていることが紹介されました。
 次に、営巣・産卵・抱卵期を通じた1日24時間の観察結果が紹介されました。タマシギの雌は、一巣に通常一日一卵ずつ4卵産み込みます。この時、2卵目が産卵されるまでの数日間は一日の90%は雌雄5m以内で行動しており、3卵目が産み落とされると、その割合が58.5%に減り雄が抱卵しはじめ、これ以降メスは最終の4卵目を産卵する時以外は巣を訪れないという観察結果が示されました。これは、一妻多夫といわれるタマシギの番いの結びつきについて、はじめて明らかにされた事実で、タマシギの婚姻システムを知るための大きなヒントとなる発見でした。THE AUK誌に掲載されたのもこの研究成果に基づいた内容です。このほかにも、タマシギの繁殖生態について、興味深いお話をたくさん聞くことができました。
 タマシギは、身近な鳥のわりには見づらく、謎につつまれた鳥のイメージがあります。お話終了後の質疑応答も、活発でした。