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5月18日に、5月のテーマトークを開催しました。今回は、山階鳥類研究所客員研究員の茂田良光さんに、「日本に渡ってくるハマシギの亜種はどれ?」と題してお話しいただきました。

茂田さんは、これまでに繁殖地のアラスカ、マガダン、サハリンなどのハマシギの繁殖地で調査をされてこられました。今回はその繁殖地での調査のご経験をもとに、国内に渡来するハマシギの亜種についてお話しをいただきました。

ハマシギCalidris alpinaは、小型のシギの仲間で、ユーラシア大陸と北アメリカ大陸の両方に広い繁殖分布をもっています。地域ごとに羽の色や体の大きさなどが異なる場合、種はいくつかの亜種に分けられることがありますが、ハマシギの場合、10亜種ほどに分けられています。これは世界のシギ科の鳥の中でも一番亜種の多い種のひとつです。日本国内ではハマシギは旅鳥または冬鳥ですが、いったいどの亜種が渡来するのでしょうか?

先月の千田さんのお話しでも紹介いただいたように、シギ・チドリのような渡り鳥の渡る道は、フライウェイと呼ばれ、カラーフラッグや衛星発信器など、様々な追跡手法によって調査が行われています。日本に渡来するハマシギについても、カラーリングやフラッグの調査によって調査が行われてきました。

日本鳥類目録第7版では、亜種ハマシギC. a. sakhalinaと亜種キタアラスカハマシギC. a. arcticolaの2亜種が記録されていることになっています。しかし、これには注意が必要です。実は、標識によって繁殖地からの渡来が確認されているのは、これまでのところアラスカの北西部で繁殖する亜種キタアラスカハマシギのみなのです。

亜種ハマシギと亜種キタアラスカハマシギはよく似ており、特に冬羽や幼羽では見分けることは困難です。そのため、亜種ハマシギは分布域からは渡来していると推測されるものの、確実な記録はありません。そのため、どのくらい日本に来ているのかについてはまだ謎のままです。亜種ハマシギの西側に繁殖分布する亜種C. a. centralisの渡来の可能性についても良くわかっていません。

これらの他にも、北アジアの比較的低緯度で繁殖する亜種が2つあります。亜種カムチャッカハマシギC. a. kistchinskiと亜種カラフトハマシギC. a. actitesです。これらは日本鳥類目録改訂第7版では検討中の種・亜種に含められていますが、日本は分布域に近いことから渡来している可能性が高いと考えられています。両亜種ともに国内でそれらしい観察例や捕獲例があるそうで、学術報告が待たれます。

まとめると、今のところ国内で確実な記録があるのは亜種キタアラスカハマシギのみ、そのほかにも3〜4亜種の渡来可能性がありそうだということでした。今後さらなる調査が進むことで、国内に渡来するハマシギの亜種がはっきりと分かることが期待されます。

今回は、26名の方にお集まりいただきました。ご参加いただいたみなさま、お話しいただいた茂田さん、ありがとうございました。

(5/23内容の修正を行いました。)