February19日Tuesday: あびこ自然観察隊「オーイ!冬鳥くん」を実施しました
2月17日に、あびこ自然観察隊「オーイ!冬鳥くん」を実施しました。29名の方にご参加いただきました。
まず、2グループに分かれて、手賀の丘の林の鳥の観察からスタートしました。鳥影は少なめでしたが、開始してすぐ、林の中を移動するカラ類の混群に出会うことができ、木の上の方を移動するシジュウカラやヤマガラ、それに混じるキクイタダキやコゲラも見られました。カラ類の警戒声がした後、林の上をかすめていくオオタカの姿も見ることができました。林の出口では、藪の中を移動するアオジや、草地の獲物を狙うモズなどを観察しました。
▲大きい後羽(こうう)があるキジのメスの体羽を拾いました。
林を出ると、北西の風がかなり強く、厳しい観察条件となりました。そんな状況の中でも、ヨシ原に身を隠すマガモやカルガモなどのカモ類や沖に浮かぶカンムリカイツブリなどを観察しました。ヨシ原の小鳥は観察には厳しい条件でしたが、オオジュリンやアオジなどを少数観察できました。私たちに驚いて、キジの雄が飛び出してくる一幕もありました。
▲ヨシ原から飛び出すマガモの群れ(下見時に撮影したもの)。
▲ヨシ原の中で休息するアオサギ(下見時に撮影したもの)。
▲水路の縁にカワセミのペリット(消化できない魚の骨などをまとめて吐き出したもの)を見つけました。
田んぼの中の道では、耕起された農地で餌をとるカワラヒワやヒバリを観察しました。ヒバリの中には、強風の中を舞いあがって囀る個体もいて、春の訪れを感じることができました。再び林に戻ると、桜の林の周辺でジョウビタキやエナガが見られました。
2グループ合わせて、45種の鳥を観察することができました。ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。また鳥の博物館の自然観察会にご参加ください。
February16日Saturday: 2月のテーマトークを実施しました(2019.2.16)
今日は、山階鳥類研究所コレクションディレクターの鶴見みや古さんに「3種のカワセミの謎〜山階鳥研のステンドグラス〜」をテーマにお話いただきました。
山階鳥類研究所の前身の山階家鳥類標本館は、渋谷の南平台に1932年に建設され、その玄関には山階芳麿博士が研究対象と考えた動物地理区を現した3種のカワセミの仲間がデザインされたステンドグラスがはめ込まれました。そのデザインをよりどころに描かれたとされる小林重三(こばやししげかず)のイラストが、山階鳥類研究所報告の第1巻の表紙に使われ、それぞれの鳥の名前が記載されています。旧北区のアカショウビン、東洋区のヤマショウビン、オーストラリア区のシロガシラショウビンです。
鶴見さんは、ステンドグラスにデザインされたヤマショウビンとシロガシラショウビンは、その種の特徴と異なることに気がつきました。これがなぜなのか調べてみた結果についてお話してくださいました。
ヤマショウビンについては、単にデザイン上の問題で本来の特徴が省略されたとしか考えられなかったそうですが、シロガシラショウビンは現在のナンヨウショウビンの一亜種シロガシラナンウショウビンの姿でした。実は、ステンドグラスがつくられる前に、鳥類研究者の籾山徳太郎氏がサイパン島で採集した鳥をシロガシラショウビンという和名で記載し、これがステンドグラスに使われ、その名前がそのまま記載されたのだそうです。その後ニューギニア等周辺に生息する別の種をシラガシラショウビンと呼び、籾山徳太郎が記載した種をナンヨウショウビンと呼ぶようになったために、このような混乱が起こったとのことでした。
和名は、学名とちがって使い方に統一されたルールがないため、しばしば混乱を招きます。しかし日本人にとっては便利なので、多くの人が共通した名前を使えるように、例えば日本鳥学会では日本鳥類目録に和名を記載しています。多くの人がこの名前を使い、これが標準和名となっています。
また、鶴見さんは、ステンドグラスの原画を誰が描いたのか、またステンドグラスをよりどころに描いたとされる小林重三の絵がなぜ左右反転されているのかなど、このステンドグラスにまつわる未解決の疑問も示されました。
日本の鳥類学の黎明期の頃の時代背景や山階鳥類研究所が創設された頃の様子もイメージできるお話でした。
ご来場の皆様、お話してくださった鶴見さん、ありがとうございました。