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投稿者: odaya
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本日2月18日に、鳥博セミナー「日本の鳥の今を描く 全国鳥類繁殖分布調査」を開催しました。NPO法人バードリサーチの植田睦之さんにお話しいただき、32名のみなさまにご参加いただきました。

全国繁殖分布調査は、過去に2回(1970年代後半と90年代〜2000年代)環境省によって実施されていますが、2016年から現地調査が始まった今回はバードリサーチなどのNGOが主体となって実施されます。これまでの調査でも、チゴモズやシロチドリなど、減少している鳥を発見し、これらの種をレッドリストに掲載することにつながってきました。今後の調査でも、過去と比べて分布が縮小した鳥、逆に拡大した鳥について重要なデータが得られることが期待されます。

2016年の調査では、全国の約2300地点のうち約500箇所で現地調査が行われました。この調査をもとにして、分かってきた傾向についてお話しいただきました。
前回の調査に引き続き、アオサギやカワウなどの魚食性の鳥や、ガビチョウやソウシチョウなどの外来チメドリ科の鳥は分布の拡大が続いているとのことです。さらに、90年代後半の調査で減少が心配されていたアカショウビンやサンショウクイなどの夏鳥も、新たに出現した地点が多く記録されました。ただし、まだ全地点での調査が終わっていないので、より正確な結果については今後はっきりしてくるだろうとのことです。

調査に参加するには、調査員として登録する必要がありますが、ご自分のフィールドを任意定点として登録できますし、特別な調査を行わなくても、日頃のバードウオッチングの結果をアンケートとして報告することもできるそうです。ご興味のある方は、まずはホームページから調査員として登録してみましょう。
http://bird-atlas.jp/

この調査に加えて、東京都と茨城県ではさらに細かい調査メッシュを設定して精度の高い調査を行う予定で、越冬期の分布情報の収集も今後行われていくとのことです。繁殖分布調査を通じて作ったネットワークを今後も活用して市民調査の環を広げていきたいという夢のあるお話でした。

質疑応答の時間では、「結果をまとめるときに調査員間のスキルの差をどうやって考慮するか」、「調査のまとめの際に希少種の生息状況をどのように考慮して公開するか」などについて活発な質問が出たり、調査に実際に参加したいけどどのように協力できるかなどの協力の申し出がありました。
有意義なセミナーになったと思います。ご参加いただいたみなさま、講演いただいた植田さん、ありがとうございました。
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投稿者: odaya
2月12日(日)に、手賀の丘少年自然の家との共催で、あびこ自然観察隊「オーイ!冬鳥くん」を実施しました。林、農地に沼と、手賀沼周辺で冬鳥が見られる環境を歩いて多くの冬鳥を観察しようという企画です。

林の中では、ルリビタキ、ウソなどに加え、今年数の多いアトリも観察できました。耳を澄まして小鳥の地鳴きを聞くと、小さな鳥でも見つけられたと思います。池ではカワセミも全員でじっくり見られました。

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暗い林を好むルリビタキ。雄は鮮やかな青い羽色ですが、雌や若い雄は全身ほぼ褐色です。(下見の時の画像です)

農地に出ると、一気に強風が吹きつけます。それでも、ツグミやカワラヒワなど、林の中とは鳥の種が違うことに気づけたと思います。

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強風に耐えて歩く参加者のみなさん。手前に三脚の先が写りこんでいてスミマセン…。

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キジの翼だけが道路に落ちていました。羽は散らばっていなかったので、どうしてここに落ちていたのかは不明です。この周辺で見られる他の大形の鳥に比べてつばさが丸く、全体の湾曲が大きいのが特徴的です。

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沼の中央のマガモの群れ。どの個体も風に向かって頭を向けているのは、その方が飛び立つときに上昇する力を得られやすいからです。(下見の時の画像です)

沼ではマガモやオオバンなどの水鳥を観察できました。沼岸のヨシ原ではモズやオオジュリンなども見られました。

冷たい風が吹き寒かったですが、鳥が厳しい冬をどのように乗り切っているのか、実際に観察できたと思います。ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。鳥の博物館の他の自然観察会にもぜひまたご参加ください。
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投稿者: saito
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 鳥の博物館の空調設備の工事も無事終了し、4ヶ月ぶりにテーマトークを実施しました。
 小笠原諸島で80年ぶりにアホウドリが繁殖に成功し、ヒナが誕生したことはご存知の方も多いはず。このプロジェクトの中心メンバーの出口智広さん(山階鳥類研究所保全研究室研究員)が、「小笠原での繁殖成功が意味するもの」をテーマにお話くださいました。
 このプロジェクトは、70羽のヒナを伊豆鳥島から小笠原諸島の聟島に移送し、人工飼育で巣立たせ、かつての小笠原繁殖地を復活させようというものです。ここ数年の間に小笠原諸島の媒島、聟島、嫁島で繁殖が確認されました。
 これまでの成果を、出口さんが、DNA分析の専門家や地元の関係者、日米共同プロジェクトチームのアメリカのメンバー、プロジェクトチームの統括者とともに、共著でアニマル・コンサベーション(ロンドン動物学会の学術雑誌)に発表しました。今日は、その内容について分かりやすく解説してくださいました。
 これまで鳥島産まれ、聟島育ちのヒナの一定数が聟島に戻り繁殖をはじめています。また、同じ小笠原諸島の媒島や嫁島でも繁殖が確認され、確実に繁殖個体数は増えています。今では安定した大きなコロニーとなった鳥島の初寝崎コロニーの復活プロジェクトでは、最初の10年間は繁殖個体数が大きく増えませんでした。10年以上経て、やっと指数関数的に個体数が増えています。小笠原諸島の場合もこれになぞらえると、あと数年経て、ぐんと繁殖個体数が増えることが期待できそうです。
 プロジェクトの最新情報と出口さんらの論文の詳細は、山階鳥類研究のHPから次のURLを参照ください。
http://yamashina.or.jp/blog/2016/11/albatross_paper_anim_conserv/
 出口さんは、これまで、さまざまな生き物の保全・復元に対して、再導入という方法が多くの場合盲目的に行われてきた事を挙げられ、さらに活動の半分くらいは、プロジェクトのその後の評価が成されておらず、成否が不明であることを指摘されました。
 小笠原のアホウドリ再導入のプロジェクトを今回報告したことは、今後のモデルケースとなる意味でも大切であることが分かりました。
 なお、こうした論文の評価について、従来の引用数を指標としたインパクト・ファクトを重要視する方法から、近年ではSNSで話題に取り上げられる頻度やマスコミ報道の頻度なども加えたさまざまな要素を統合したオルトメトリクスという新評価の方法もあるということが紹介されました。そして、この評価方法では、今回発表した論文が上位1%にランクづけられ、各方面でいかに重要視されているかが分かりました。
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