過去ログ

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投稿者: odaya
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10月16日に、2021年10月のテーマトークを実施しました。これまでと同様にYoutube liveを用いたライブ配信で行いました。今回は、鳥の博物館の小田谷が「ヤマシギの越冬期の暮らし」と題してお話ししました。

水鳥のシギの仲間は主に水辺にすみ、歩いて水の中に入って餌をとることの多い鳥です。しかし、ヤマシギは森林や草地を主な住みかとするちょっと変わった鳥で、夜行性の暮らしに適応した様々な特徴を持っています。秋になると越冬地の関東地方に渡ってきますが、夜行性であるために国内におけるその生態はあまりよく知られていませんでした。

2012年秋から2021年春までに2か所の利根川下流域の調査地を中心に336羽に足環を付けて放鳥し、のべ106羽を再び捕獲しました。それらの捕獲データから、ヤマシギは同じ場所に比較的戻ってくること、12月〜2月が主要な越冬期であること、幼鳥の渡来時期や割合は年によってばらつきがあることなどがわかりました。また、放鳥した個体のうち2羽がサハリンで繁殖期に回収されたことから、関東地方で越冬する個体の繁殖地の一つであることが示唆されました。
これらの基礎的な情報をもとに、さらにヤマシギの越冬期の生活史に関する研究を進めたいと思っています。

講演のあとに、視聴者のみなさんとチャット機能を用いて質疑応答が交わされました。「ダンス」を行うのはアメリカヤマシギだけか、狩猟鳥として十分な個体数がいるのか、成鳥と幼鳥で嘴の長さに違いがあるかなどについて質疑応答が交わされました。

今回のオンライン講演は、最大同時に135人の方に視聴いただきました。ご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。今回のライブ配信は、10月30日(土)まで以下のURLより見逃し配信を行います。
https://youtu.be/elPIuqJb1gI

11月のテーマトークはお休みです。次回、12月のテーマトークは、山階鳥類研究所コレクションディレクターの鶴見みや古さんに、山階芳麿博士の著書「日本の鳥類と其の生態」の関連資料についての調査結果をお話しいただきます。配信方法などについては、山階鳥類研究所・我孫子市鳥の博物館ウェブサイトで改めてご案内します。次回もぜひご視聴ください。
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投稿者: odaya
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写真:移動記録装置を装着されたハリオアマツバメ(撮影:今野怜さん)

2021年10月2日(土)に、令和3年度の鳥博セミナーをオンライン配信にて開催しました。今回は「ハリオアマツバメの繁殖生態と渡り研究の最前線」と題して、酪農学園大学准教授の森 さやかさんにお話しいただきました。

ハリオアマツバメは大型のアマツバメの仲間で、日本では夏鳥として北海道や本州の高地に渡来します。空中で昆虫をとらえて食べる生態や長い鎌形の翼などの形態はツバメによく似ていますが、実はスズメ目のツバメとは類縁が遠く、ヨタカやハチドリに近い仲間です。
本種は世界で最も早い速度で水平飛行ができる鳥といわれており、その飛行速度は時速170kmに達するとされることもあるようです。しかし、その計測方法などは公表されておらず、実際にどのくらいの速度で飛ぶのかは、実はまだはっきりとわかっていないそうです。

日本におけるハリオアマツバメの生態については、森さんの共同研究者である米川さんが1980年代から長年研究を続けてこられ、本種が木の洞を好んで利用すること、体のわりに非常に大きな木の洞を利用することが明らかになってきました。森さんたちは、生態研究をさらに進めるために、さまざまな条件で巣箱の利用率や繁殖の成功率を調査され、試行錯誤しながら改良を重ねているそうです。

十勝平野にかけた巣箱で繁殖しているハリオアマツバメに移動記録装置を装着して調べたところ、高い飛翔能力を活かして、最大で50平方キロメートルほどの範囲で餌を取りに行っていることが明らかになりました。餌生物は主にハチ目の昆虫で、そのほとんどは結婚飛行中のケアリ属だそうです。羽アリの出す性フェロモンを嗅覚で感知している可能性が、野外実験によって示唆されたそうです。

渡りを調べるための小型の機器であるジオロケ―タを2020年までに25個体に取り付け、そのうち5個体から渡り経路のデータを得ることができたそうです。北海道から越冬地のオーストラリアまでを往復し、大きく8の字を描くルートで春と秋で異なる経路を通って渡りをしていることが明らかになりました。
今後は、繁殖、採食、渡りなどのさまざまな謎を明らかにし、空の生活者としてハリオアマツバメがどのように暮らしているのかを明らかにしていきたいとのことです。

講演のあとには、ハリオアマツバメの尾羽の“針”の機能、巣箱の利用率を高め、捕食率を下げるにはどうしたらよいか、渡りの時に飛ぶ速さなどについて、多くの質問が寄せられ、森さんにお答えいただきました。
今回の鳥学講座は、最大同時に175人の方にご視聴いただきました。お話しいただいた森さん、ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。

今回の講演は10月9日(土)まで、鳥の博物館のYoutubeチャンネルにて見逃し配信を行っています。ご興味があるけれど見逃した方や、もう一度見たい方は以下のリンクからご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=hVMz4EGcQyg

企画展「鳥のチャンピオン」では、今回ご紹介いただいたハリオアマツバメを含む様々な鳥たちのすごい能力についてご紹介しています。11月28日(日)までの開催ですので、ぜひ鳥の博物館にもお越しください。


★参考資料
・今回の講演のレジュメ(PDF直リンク)
http://www.city.abiko.chiba.jp/bird-mus/gyoji/event/index.files/torihaku_seminar202109.pdf

・米川さんによるハリオアマツバメの動画
https://www.youtube.com/watch?v=1SPpRKoVViA&t=1s

・ハリオアマツバメの渡り経路の研究のプレスリリース
https://www.rakuno.ac.jp/archives/14797.html
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