20180818-themetalk20180818.jpg

 8月のテーマトークは、山階鳥類研究所自然誌研究室研究員の浅井芝樹さんにお話いただきました。今日のテーマは、「白い羽色異常はどういう仕組みで起きる?」でした。
 野外で白化した鳥が見つかると、しばしばニュースに取り上げられ、例えば「アルビノのツバメ発見!」などの見出しがつけられます。しかし、これはまちがった用語の使い方であったということがよく分かるお話でした。
 アルビノの定義は、メラニンを体内で生成する時に必要なチロシナーゼという酵素を全く持たない色素異常であり、したがってアルビノ個体はメラニン色素を全く持ちません。羽色の白化に少し知識のある方ならば、アルビノは、虹彩にもメラニン色素が無いため、赤目であることをご存知かも知れません。虹彩にメラニン色素を持たない目は、絞りの無いカメラのようなもので、焦点が合わず、視覚をたよりに生きる鳥にとっては致死的異常だそうです。こうした理由から、野外でアルビノの個体が生き残ることは困難だろうとのことでした(アルビノではないがInoというメラニン色素が大きく変形する色素異常個体では、視力は保ったまま赤目になる場合があるため、アルビノと誤認されがちなので要注意とのこと)。
 なお、野外で見られる白化について、次の6つの要因を紹介してくれました。
 ①Leucism(発生段階でのメラニン色素の体全体への配分異常)、②Progressive greying(年齢や病気による進行性灰色化)、③Brown(ユーメラニンの変形による褐色変異)、④Dilution-pastel(フェオメラニンとユーメラニンの減少による淡色化)、⑤Dilution-isabel(ユーメラニンの減少による淡色化)、⑥Ino(フェオメラニンとユーメランが大きく変形することによる色素異常)、以上です。
 今日のお話を聞いた人は、これからは野外で白化個体を見つけたとき、原因が何かとても気になることでしょう。
 今日のお話の基となったのは、イギリスの雑誌British Birdsに掲載されたHein van GrouwさんのWhat Colour is that bird?という記事だそうです。より詳しく知りたい方は、Google Scolarで入手可能ですのでぜひご覧ください。