過去ログ

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投稿者: saito
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 今日の鳥博セミナーは、現在開催中の企画展「我孫子の都市鳥展」に関連して都市鳥研究会副代表の越川重治さんにお話いただきました。
 「とかく嫌われ者のムクドリだが、その生態を知るときっと親しみがわくはず。今日はそんなお話をしたい。」という前置きから始まり、「ムクドリは本当に残念な生き物か?」というテーマでお話されました。
 始めに、小林一茶や野中兼山など江戸時代の句や書に出てくるムクドリや、宮沢賢治の童話「鳥をとるやなぎ」でのムクドリの描写など、昔から人はムクドリをさまざまな形で意識していたことを紹介されました。また、ムクドリの仲間やムクドリの分布域など基本的なことも紹介され、ムクドリについて一般的な情報を皆共有できました。
 また、身近な鳥なのに意外に知られていない日光浴のしぐさなど、ムクドリが思いのほか個性的であることが分かる画像がいくつか紹介され、ムクドリがより身近になりました。
 その上で、ムクドリの繁殖生態について紹介されました。架設した巣箱での観察により、餌条件など繁殖条件が悪くなる繁殖期の後半では、前半に比べて一巣卵数も少なく、孵化時期に差が見られるようになることなど、繁殖時期による繁殖活動のちがいなども紹介されました。このほか、交尾シーンや巣箱をめぐるメス同士の激しい争いのシーンの映像もあり、ムクドリがどのように子育てしているのか、よく分かりました。
 次に、ムクドリの生態系の中での働きについてのお話の中では、農業害虫と言われる昆虫類を食べるほか、樹木の種子散布の役割を担っていることが紹介されました。ムクドリは、果樹の食害や塒(ねぐら)での騒音や糞害で嫌われていますが、生態系の一員として重要な役割を果たしていることが分かりました。
 最後に、ムクドリの塒についてお話され、近年、塒が郊外から都市へ移って来ていること、特に高いビルが立ち、人が多く、明るい駅前を好むことが紹介されました。そして、特に高いビルがあることが、ムクドリが塒を選ぶ重要な要素であることを各地の調査結果をもとに示されました。
 さらに、多くの自治体が行っている駅前のムクドリの追い出しについては、個々に追い出しを行うだけでは、もぐらたたきのように、ほかの自治体へ一時的に追い払うだけであること。解決には自治体の広域的な連携と、ムクドリの塒をそれぞれ少しずつ受け入れることが必要であることを強調されました。
 今後は、ムクドリの生態系サービスへの貢献度も考慮し、塒での騒音や糞害への対応についても、単純に追い払うだけではなく、ある程度許容することも市民のコンセンサスを得て計画に含め、人とムクドリがほどよく関わり合うことができるような方向性を目指すことが必要だと思いました。
 市内・市外からご来館くださった58人の皆様、講師の越川さん、ありがとうございました。
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投稿者: odaya
鳥の博物館3階の常設展「世界の鳥」コーナーにワタリガラスの剥製を展示しました。
ワタリガラスは、日本では北日本の一部でしか見られない鳥ですが、世界的には分布が広く、ヨーロッパやアメリカでは普通種です。古くから人に親しまれ、神話や伝説にも登場する人との関わりが深い鳥です。

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▲ワタリガラスの本剥製標本。この鳥は雌の幼鳥(第一回冬羽)です。

この標本は、スウェーデンで拾われた死体から作られたもので、標本交換によって鳥の博物館にやってきたものです。研究用の剥製の形で受け入れましたが、展示のために剥製師さんによって義眼を入れてもらい、展示用の本剥製の形に作り直してもらったものです。
国内で見られる亜種よりも少し小さいようで、並んで展示されているハシブトガラスと同じくらいの大きさです。逆に考えると、本州のハシブトガラスの大きさに驚かされます。

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▲カラス類3種の展示。上から順に、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ワタリガラス。

ハシブトガラスやハシボソガラスと嘴の形や、羽毛の光沢の違いを比べてみましょう!
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投稿者: saito
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 今日は、山階鳥類研究所客員研究員の園部浩一郎さんに「博物画家・小林重三と日本の三大鳥類図鑑」をテーマにお話いただきました。
 日本の三大鳥類図鑑とは、黒田長禮による鳥類原色大図説(以後略して黒田図鑑)、山階芳麿による日本の鳥類と其の生態(以後略して山階図鑑)、清棲幸保による日本鳥類大図鑑(以後略して清棲図鑑)のことです。これらの日本の鳥類学の発展の上で、欠くことのできない重要な三つの図鑑すべてに小林重三は図版を描いています。
 しかし、図鑑における図版の持つ意味の重要性とは裏腹に、当時は、図版作製者名は図鑑に記載されなかったため、小林重三の名前を知る者は、ほとんどいませんでした。
 1991年に、園部さんが編集する日本野鳥の会の会誌「野鳥」に、児童作家の国松俊英さんが小林重三の生涯について記事を連載し、1996年にはこの成果が「鳥を描き続けた男 鳥類画家小林重三」として出版されました。これに前後して、平塚市博物館・流山市生涯学習センター・町田市立博物館でそれぞれ小林重三の特別展が行われたことで、すぐれた鳥類画家である小林重三の名が知られるようになりました。
 今日のお話では、三大鳥類図鑑の特徴やそれにあわせた図版の作製の過程などが紹介され、三大鳥類図鑑に欠かせぬ小林重三の図版の価値に改めて気づかされました。また、それぞれの図鑑の著者である鳥類学者の細かく厳しい要求に応えることができた小林重三の技術の高さや意気込みも感じることができました。
 また、お話の最後に神奈川県の辻堂で描いた海岸風景の油絵が示され、小林重三自身は、風景画家としての思いが強かったというお話は印象的でした。三大鳥類図鑑の中にも図鑑用の図版と違う風景画家としての構図が見られるものがある理由もよく分かりました。
 講師の園部さん、また暑い中ご来館いただいた皆さま、ありがとうございました。

※お詫びと訂正
 4行目(「以後略して山階図鑑」とすべきところ「以下略して黒田図鑑」と誤記載していましたので訂正いたします)saito2019.6.28
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