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 今日は、山階鳥類研究所自然誌研究室専門員・広報室主任の平岡考さんに、「毎日運行する漁船で営巣したツバメ」というテーマでお話いただきました。
 おりしも今日3月11日は、東日本大震災から6年目にあたります。地震とそれに伴う津波と原発事故により、東日本を中心に甚大な被害を被りました。この時、山階鳥類研究所が文部科学省と環境省に対して提言した、陸鳥・海鳥への影響調査や被災地の標本レスキューの必要性の紹介からお話は始まりました。
 さて、本題の「漁船で営巣したツバメ」の舞台は、静岡県の伊豆半島の東部の富戸岬にある漁港です。
 2014年から2016年までの3年連続で、毎日漁に出る漁船にツバメが営巣し、ヒナを巣立たせることに成功した事例を紹介してくださいました。船のオーナーの石井船長が映像とともに数日おきに記録をとってくれたお陰で、繁殖の詳しい様子が明らかになったそうです。
 紹介されたビデオには、ツバメの親鳥が船が出発して沖合500m以上離れるまでは、ヒナへの給餌に訪れ、逆に沖合から船が帰って来て、やはり沖合500mまで近づくと、再び給餌のために飛来するシーンが映し出されました。
 繁殖データから、このツバメは、陸地で繁殖するツバメより抱卵日数が長く、抱卵時間長く取れないなどのハンディーを負っているらしいとのことでした。何故あえて繁殖に一見不利な動く船に3年連続して営巣したのか謎は深まります。また、港の中を動き回る数ある船の中から、親鳥がどうやって営巣した船を認識しているのかも現時点では謎とのことでした。
 国内外での船に営巣した鳥の他の例も紹介され、日本ではツバメが船に営巣した11例が、海外ではミドリツバメ、ツバメ、タイランチョウ、コマツグミなどが船に営巣した例が示されました。
 人工構造物にだけ営巣するツバメですが、今後の人とツバメとの関係にひょっとしたら新たな展開があるかもしれないことを予感させるお話でした。