December10日Saturday: 友の会展スタート

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投稿者: someya
 12月10日本日より「第91回企画展第18回友の会展」が始まりました。友の会の同好会には鳥凧同好会・鳥絵同好会・デジカメ同好会・みて歩こう会・万葉集同好会・しちじゅうにこうの会があり、それぞれの活動を楽しまれています。
 今回のテーマ展示ではマンホール蓋に描かれた鳥を紹介しています。担当したのは鳥絵同好会です。何ヶ月も前から打ち合わせを繰り返し、頑張って準備されていました。友の会の活動の成果を紹介する友の会展は来年の1月29日まで開催しています。お見逃しなく。
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▲テーマ展示「マンホール上の鳥たち」
 展示室内を見上げると鳥凧同好会の作品が
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▲デジカメ同好会
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▲鳥絵同好会
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▲鳥凧同好会
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▲万葉集同好会
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▲しちじゅうにこうの会
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▲みて歩こう会
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投稿者: odaya
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11日5日(土)に、第32回JBF鳥学講座を開催しました。今回は、我孫子駅南口にあるアビ―ホールで実施しました。「江戸の鳥の美食学―環境破壊や乱獲がもたらした野鳥食文化の衰退」と題して、東京大学東洋文化研究所教授の菅 豊さんにお話しいただきました。オンラインではない対面での開催は2019年ぶりとなります。

菅さんは、日本と中国をフィールドに、民俗学の視点から、地域社会における自然資源や文化資源の利用や管理のあり方について研究されています。今回は、2021年に出版された「鷹将軍と鶴の味噌汁 江戸の鳥の美食学」(講談社選書メチエ)の内容から、江戸における鳥食文化を中心にお話しいただきました。

日本の伝統的な食といえば刺身や寿司に代表される魚食の文化という印象がありますが、野生の鳥を食べる文化は、縄文時代から続いてきたことが、歴史資料や考古学的な調査からわかっています。特に、江戸時代にはその最盛期を迎え、社会的・政治的に重要な役割を担ったほか、大衆を含めた多くの人々に食べられていました。たとえば、江戸時代初期に著された「江戸料理物語」には、18種の野生の鳥の97以上のレシピが記述されています。
今回は、このような野鳥食文化を復活させようという主張ではなく、このような食文化がかつて社会や政治においてどのような役割を果たしていたのか、なぜ衰退してしまったのかについてご講演いただきました。

鷹狩りは、古代より天皇・貴族のたしなみとして行われており、中世からは武士の社会的な権威を示すための行事として行われてきました。江戸幕府を開いた徳川家康は、その重要性をよく理解しており、鷹狩りの獲物を贈答品として朝廷に献上したり、各地の大名に下賜したりして、政治的な道具として利用してきたそうです。江戸時代の江戸周辺には、将軍家やその分家である御三家が鷹狩りを行う「御拳場(おこぶしば)」や「御借場(おかりば)」があり、この鷹狩りの狩場を守るため、江戸周辺での狩猟や市中への野生の鳥の持ち込みは厳しく管理されていました。

第5代将軍徳川綱吉の時代になると、「生類憐みの令」によって鷹狩りや野生の鳥の取引は禁止されました。しかし、これは逆効果で、密猟が横行することによってかえって鳥の数が減る事態を招いたそうです。その後、徳川吉宗が第8代将軍の座に就くと、かつての鷹場の管理制度が復活し、鷹場の管理と流通の制限が復活しました。幕府に認められた10軒の鳥問屋が、野生の鳥の肉の取引を管理し、一般大衆の食卓にも野鳥の肉料理が上っていました。しかし、幕末期になると、江戸幕府が弱体化するとともに鷹狩りの分化は衰退し、1863年に行われたのを最後に、将軍家による鷹狩りは行われなくなってしまいました。

では、江戸時代にこれだけ栄えた野鳥食分化は、なぜ衰退したのでしょうか? 戦後導入された欧米の養鶏技術によってニワトリの肉の生産量が大きく伸びたこともその理由の一つですが、菅さんは、野生の鳥の数の減少が大きな理由だと指摘されています。開発による生息環境の破壊、明治以降普及して無秩序に行われた狩猟などが減少の原因といえるでしょう。食文化が衰退すると、それを守る人もいなくなるという負のスパイラルに陥り、野鳥の食文化は現在ではごく一部の地域にしか見られなくなってしまいました。このように、資源の適切な管理を怠ったために食文化が消滅の危機に瀕していることは、現代におけるウナギなどの魚にも同じことが言えるでしょう。古くからある一皿の料理を失わないために、野鳥食文化の衰退の歴史を教訓とする必要があるだろう、というお話で講演を締めくくられていました。

講演のあとには、国内の鳥食文化の地域差や、宗教と鳥猟の関係などについて来場者からの質問をいただき、菅さんにわかりやすくお答えいただきました。今回の鳥学講座は、118人の方にご参加いただきました。お話しいただいた菅さん、ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。

今回の講演のレジュメは以下の山階鳥類研究所のウェブサイトに掲載されているリンクよりダウンロードできます。
https://www.yamashina.or.jp/hp/event/event.html#chogakukoza2022

今回のお話の内容が含まれる菅さんの著書
「鷹将軍と鶴の味噌汁 江戸の鳥の美食学」
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000354725
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投稿者: odaya
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10月15日に、2022年10月の鳥のサイエンストークを実施しました。これまでと同様にYoutube liveを用いたライブ配信で行いました。今回は、鳥の博物館の小田谷が「手賀沼の鳥を調べる ―個体数モニタリングと鳥類相―」と題してお話ししました。

鳥の博物館では、開館以来、様々な形で地域の鳥類の調査を続けてきました。今回は、手賀沼とその周辺で行っている個体数のモニタリングと鳥類相の調査についてお話ししました。

鳥の博物館の調査活動の軸となるのは、手賀沼内の鳥類の数を毎月カウントしている手賀沼鳥類センサスです。この調査は、1988年から現在に至るまで(途中5年間の中断をはさんで)継続されています。調査を開始してから現在までの間に減少した種としてカイツブリ・ハシビロガモ・ミコアイサ・コアジサシ、増加した種としてカワウ、ミサゴ、コブハクチョウを紹介し、その推定される原因についてお話ししました。

この調査のほかに、手賀沼のヨシ原の環境を代表する鳥類であるオオバンとオオヨシキリについては、それぞれ毎年4月下旬と5月下旬に、その個体数と分布を記録する調査を行っています。その結果、両種ともに繁殖個体数は減少傾向にあることが示唆されています。

センサス調査に加え、様々な方法を用いて地域の鳥類相の把握に努めています。今回は、標本収集と捕獲・標識調査によって明らかになった鳥類の記録についてご紹介しました。我孫子市で拾得されたオオマシコやニュウナイスズメの鳥の博物館所蔵の標本は地域の貴重な記録であり、標識調査によってマキノセンニュウやオガワコマドリなどのこれまで記録されていなかった鳥類の分布記録も得られました。
今後も、地域の鳥類の情報センターとしての役割を担っていくため、現在行っている調査を継続していきたいと考えています。

講演のあとに、「魚食性の鳥のうち小型の種が減り、大型の種の個体数が回復しているように見えるのはなぜか」「外来植物のナガエツルノゲイトウが鳥類に与える影響はわかっているか」などの視聴者のみなさんからのご質問にお答えしました。

今回のオンライン講演は、最大同時に46人の方に視聴いただきました。ご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。今回のライブ配信は、10月29日(土)まで以下のURLより見逃し配信を行います。
https://youtu.be/aIJn_tp4o98

11月のテーマトークはお休みです。次回、12月のテーマトークは、12月24日(土)に、山階鳥類研究所の岩見恭子さんに、鳥類標本の作製方法について、海鳥類を材料に解説していただきます。実施の日付は、今回に限り、従来の第3土曜日から変更となりますのでご注意ください。配信方法などについては、山階鳥類研究所・我孫子市鳥の博物館ウェブサイトで改めてご案内します。次回もぜひご視聴ください。

参考資料:
手賀沼鳥類センサスの結果
https://www.city.abiko.chiba.jp/bird-mus/info2/tyousakenkyu/teganumatyousa.html

我孫子市・手賀沼鳥類リスト(PDF直リンク)
https://www.city.abiko.chiba.jp/bird-mus/info1/kako.files/abiko_checklist.pdf

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投稿者: odaya
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2022年10月1日(土)に、令和4年度の鳥博セミナーをオンライン配信にて開催しました。今回は「カモとハクチョウの冬の暮らし」と題して、公益財団法人宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団の嶋田哲郎さんにお話しいただきました。

カモ科の鳥の仲間は体の大きさの異なる3つのグループにおおまかに分けることができます。小さいカモ類、中型のガン類、大型のハクチョウ類です。国内ではカモ類とハクチョウ類は比較的広い地域に渡来しますが、ガン類の飛来する地域は限定されます。今回は、カモ類とハクチョウ類の渡り、冬の暮らし、人とのかかわりについてお話しいただきました。

カモ科の鳥は公園の池などの身近なところにも飛来し、採食の行動をじっくり観察することができます。また、カモ類はカルガモを除き雌雄で羽の色が大きく異なり、冬につがいを形成することから求愛行動なども観察しやすいグループです。

冬に日本に渡来するハクチョウ類やカモ類は、どこからどのように日本にやってくるのでしょうか? 嶋田さんたちは、国内の越冬地で捕獲した鳥に発信機を装着し、彼らの繁殖地や渡りの経路を調査しました。その結果、オオハクチョウとコハクチョウでは繁殖地の緯度が異なり、前者はタイガ地帯の川の中流域、後者は北極海沿岸のツンドラ地帯で繁殖すること、両種の中継地や渡り経路はよく似ていることを発見されました。また、オナガガモやヒドリガモはマガモに比べて高緯度の地域まで渡りを行うことも確かめられました。

越冬期の生活についても、宮城県北部のフィールドで発信機を装着して調査を行われました。マガモやカルガモは昼間は沼で休息し、夜間になると周辺の水田や水路に飛んで行って採食すること、オナガガモでは年によっては給餌場所に夜も留まるものがいることがわかりました。オオハクチョウはハスの地下茎(レンコン)を好むため、一日中沼の中で採食していますが、水位が高くなってレンコンを採食しづらくなると、周囲の水田で落穂を食べることがわかりました。沼の水位が低く、多くのオオハクチョウがレンコンを食べた翌年夏には、ハスの群落が衰退し、沼の水質が改善したこともあったそうです。

湖沼の中に水草や魚などの餌があるかどうかが、その場所にいるカモ類の種構成を決めているため、沼のカモ類は環境の指標となります。伊豆沼では、カモ類のほとんどが沼の外で採食するマガモなどの種類で、沼の中で水草を食べるヒドリガモ、魚を食べるミコアイサの数は少ない状況が続いています。後者の個体数の減少には、外来生物であるオオクチバスによる小魚の捕食を通じた餌の減少が影響していると考えられており、実際に駆除によってオオクチバスが減ると、ミコアイサの個体数は回復に転じたそうです。

国内でも鳥インフルエンザへの対策のために、2000年代から感染リスクを増大させる野生の鳥への餌づけが制限されるようになりました。嶋田さんたちは、科学的な対策のために、餌づけが鳥たちにとってどのような影響を与えるのかを調査されました。給餌される餌のエネルギーと、鳥の個体数と体重から算出した代謝エネルギーの量を比較すると、厳冬期には餌づけだけでは消費カロリーをまかなえていないことがわかりました。このデータをもとに、餌づけの量をおよそ8割削減して餌場からの分散を促し、消毒などの措置を併せて実施することで、鳥インフルエンザの対策を行っているとのことです。

講演のあとには、カモがハクチョウの糞を食べる際の周辺の状況や、コロナ禍における観光客の減少による餌づけ量の変化、農耕の歴史とカモ類の個体数の変化などについて質問が寄せられ、嶋田さんにお答えいただきました。
今回の鳥学講座は、最大同時に88人の方にご視聴いただきました。お話しいただいた嶋田さん、ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。

今回の講演は10月15日(土)まで、鳥の博物館のYoutubeチャンネルにて見逃し配信を行っています。ご興味があるけれど見逃した方や、もう一度見たい方は以下のリンクからご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=o5glB9aM1Q8

企画展「手賀沼の鳥 ―環境と水鳥 いま・むかし―」では、今回ご紹介いただいたカモ科の鳥を含む手賀沼の水鳥たちの個体数の移り変わりについて展示しています。11月27日(日)までの開催ですので、ぜひ鳥の博物館にもお越しください。


参考資料
・今回の講演のレジュメ(PDF直リンク)
https://www.city.abiko.chiba.jp/bird-mus/gyoji/event/index.files/torihaku_seminar202210.pdf

・知って楽しいカモ学講座 −カモ、ガン、ハクチョウのせかい−
https://www.midorishobo.co.jp/SHOP/1598.html
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投稿者: odaya
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△捕獲許可を得て巣から取り出したモズの卵

8月20日に、2022年8月の「鳥のサイエンストーク」を実施しました。これまでと同様にYoutube liveを用いたライブ配信で行いました。今回は、山階鳥類研究所専門員の千田万里子さんに「鳥にまつわる法律のハナシ」と題してお話しいただきました。今回のお話は、2016年7月に対面の催しでお話しした内容の再演です。

落ちている鳥の羽を拾う、けがをしている鳥を保護する、巣を撤去したい、など「この行為はやってもいいのかな?」と迷うような具体的な事例を挙げていただき、その背景となる法律について解説していただきました。

日本で鳥の保護や管理にかかわる法律は大きく分けて3つあります。
(1)鳥獣保護管理法
鳥獣保護法では、野鳥は勝手に捕獲してはいけないこと、巣や卵の捕獲行為には許可申請が必要なことが定められています。狩猟の期間や対象となる鳥獣について定められているのもこの法律です。傷ついた野鳥を保護したりする場合は、まず都道府県等の担当部署に連絡をして許可を得ることが望まれます。

(2)種の保存法
国際的に野生動物の取引を規制するワシントン条約の国内法です。この該当種の羽毛を拾った場合、他の人に譲ったりすると違法となってしまいます。該当する種の死体などを見つけた際には、死因の究明などのため、担当する環境省の地方環境事務所に連絡してほしいとのことでした。

(3)文化財保護法
この法律によって天然記念物または特別天然記念物に指定されている種を捕獲したり、対象種の巣を撤去したりする場合には、文化庁の許可が必要となります。

加えて、各地方自治体などが独自に条例で保護を定めている場合もあるそうです。また、対応の方法が微妙に異なることもあるので、詳しくは該当する市町村や都道府県の担当部署に問い合わせるのが最も確実とのことです。
講演のあとに、防鳥ネットに鳥がかかってしまっている場合の対応方法、狩猟期間に捕獲した鳥獣を飼養することの問題点などについて、視聴者の皆さんからのご質問をいただき、千田さんにお答えいただきました。

今回のオンライン講演は、最大同時に106人の方に視聴いただきました。ご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。今回は、9月3日(土)まで見逃し配信を行います。配信したURLと同一の以下のリンクよりご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=BnTMegXBink&t=6s

9月は鳥のサイエンストークはお休みです。次回、2022年10月の鳥のサイエンストークは、鳥の博物館の小田谷が、鳥の博物館が手賀沼周辺で行っている鳥類調査についてお話しします。配信方法などについては、山階鳥類研究所・我孫子市鳥の博物館ウェブサイトで改めてご案内します。次回もぜひご視聴ください。
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投稿者: someya
 7月30日の土曜日に事前申込制のイベント「手賀沼の魚をみよう」を実施しました。コロナ禍で定員は以前より少なく設定していますが、17名の方にご参加いただきました。夏場のイベントなので、館内であらかじめスケジュールや生き物のお話をしてから外に出ました。
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▲観察できる可能性のある魚と水草の今昔(昔:ガシャモク/今:ナガエツルノゲイトウ、オオバナミズキンバイなど)をお話しました
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▲手賀大橋をバックに釣りスタート
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▲短時間でモツゴ(写真左)、オイカワ(写真右)、タイリクバラタナゴが釣れました。
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▲次はあらかじめ仕掛けておいたもんどりを回収。桟橋の老朽化によりスタッフだけでの回収にしました
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▲もんどりにはたくさんの魚が入っていました
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▲モツゴ大漁。おっと、タモロコも混ざっていますね
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▲仕分けして特徴や見分けるポイントをお話しました。モツゴとタイリクバラタナゴが圧倒的に多く、タモロコ、スジエビなど、他にミニ手賀沼でカダヤシなどを採集しました。
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▲魚と遊んだら元の場所に返しました。また遊ぼうね。
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投稿者: someya
 7月の第4日曜日は「親子の日」です。親子の日に合わせて、今年は我孫子市でイベントが開催されました。鳥の博物館からはミュージアムショップと工作の2つのブースを出店しました。会場のアビスタは来場者で賑わっていました。暑い日で大変な中、鳥博スタッフも力を合わせて頑張りました。
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▲我孫子市では初めて開催された親子の日イベント
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▲鳥博ミュージアムショップのグッズを販売しました
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▲実物大のつばさうちわの工作ブース
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▲スタートと同時にたくさんの方が来てくれました。参加者総数は137名でした。混み合っている時は写真が撮れず、一段落してからの撮影です。
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▲掲示物を貼って鳥博をPR
 暑い中、鳥博ブースをのぞいてくださったみなさま、ありがとうございました。夏休み期間を利用して鳥の博物館にも遊びにきてくださいね。
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投稿者: someya
 鳥の博物館の目の前にある手賀沼親水広場内には手賀沼を模した「ミニ手賀沼」があります。毎年7月、ミニ手賀沼にどんな生き物がいるのか調べることと、手賀沼では絶滅してしまったガシャモクという水草を植えるイベントが開催されています。今年もお手伝いで参加してきました。
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暑い中、いざ生き物採集スタート
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私はみなさんが採集してきた生き物を預かり、種類ごとに仕分けました
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最後はミニ手賀沼内にガシャモクを植えました
 ミニ手賀沼にガシャモクを植えて繁茂することもありますが、いつの間にかなくなってしまいます。ガシャモクは透き通った黄緑色の葉が特徴のキレイな水草です。ガシャモクでいっぱいになったミニ手賀沼を楽しみに待ちたいと思います。
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投稿者: odaya
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△かつて南鳥島で繁殖していたカツオドリ。

7月16日に、2022年7月の「鳥のサイエンストーク」を実施しました。これまでと同様にYoutube liveを用いたライブ配信で行いました。今回は、山階鳥類研究所研究員の小林さやかさんに「明治期の標本が語る―南鳥島の話」と題してお話しいただきました。

南鳥島は小笠原諸島に属する日本最東端の島で、1896年(明治29年)から人が移住し、グアノ(鳥の糞が堆積してできたもので、リンが多く含まれるため肥料として使われていた)や鳥類の剥製・羽毛の輸出などが行われていました。しかし、1902年(明治35年)7月にアメリカの帆船「ワーレン号」が領有を目的にハワイから南鳥島に向けて出港しました。これを察知した日本政府は軍艦「笠置」を派遣して海軍兵を南鳥島に配置し、ワーレン号を退けました。これを南鳥島事件といいます。

山階鳥類研究所の収蔵庫からは、この時期に南鳥島で採集され、東京帝室博物館(現在の東京国立博物館)に寄贈された標本が合計26点見つかりました。これらは、南鳥島事件で派遣された海軍軍人の秋元秀太郎と、南鳥島で剥製業を営んでいた上滝七五郎が東京帝室博物館へ寄贈したものでした。秋元は「南鳥島事件」で派遣された1902年7月から8月に標本を入手し、上滝は南鳥島で剥製業を開始した1900年から、標本を寄贈する1902年10月までに標本を入手したと推定されます。

再発見されたこれらの標本には、採集地がラベルに記載されていないものが10点含まれていましたが、小林さんは、帝室博物館の台帳と照合することで、標本の採集情報を復元し、学術的な価値を高める研究に取り組まれました。また、種が不明だった9点についても再同定を行われました。

この調査の結果、帝室博物館の南鳥島産の鳥類標本には11種が含まれることがわかりました。この中にはコミズナギドリやシロアジサシなど、現在の日本に繁殖地が知られていない種や、オナガミズナギドリやカツオドリなど、現在は南鳥島では絶滅してしまった種の標本が含まれることもわかりました。これまで知られている他の調査結果と併せて、当時の南鳥島の鳥類相がいかに豊かだったかの証拠となる貴重な標本群であることが分かったそうです。

講演のあとに、鳥類の剥製は現地で製作されていたのかや、南鳥島で行われた他の調査がなかったかどうかなどについて、視聴者の皆さんからのご質問をいただき、小林さんにお答えいただきました。今回のオンライン講演は、最大同時に62人の方に視聴いただきました。ご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。今回は、7月30日(土)まで見逃し配信を行います。配信したURLと同一の以下のリンクよりご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=L0BtBomyb5g

次回、2022年8月の鳥のサイエンストークは、山階鳥類研究所研究員の千田万里子さんに、野生の鳥にまつわる法律についてお話しいただきます。配信方法などについては、山階鳥類研究所・我孫子市鳥の博物館ウェブサイトで改めてご案内します。次回もぜひご視聴ください。

参考資料:
小林さやか・加藤 克 (2022) 明治期の南鳥島産鳥類標本の情報復元.山階鳥類学雑誌 54(1): 103-139.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jyio/54/1/54_103/_article/-char/ja

*7/21に内容の修正を行いました。
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投稿者: odaya
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△標識足環を装着されるハマシギ(許可を得て捕獲されたものです)。

6月18日に、2022年6月の「鳥のサイエンストーク」を実施しました。これまでと同様にYoutube liveを用いたライブ配信で行いました。今回は、山階鳥類研究所研究員の齋藤武馬さんに「日本に渡ってくるハマシギはどこから来るのか?―DNA分析から繁殖集団を推定する―」と題してお話しいただきました。

ハマシギはチドリ目シギ科のうち小型の鳥で、日本では繁殖しておらず、渡りの途中で立ち寄ったり、越冬のためにやってくる渡り鳥です。国内で越冬しているシギ・チドリの中では最も数が多く、国内で3万羽程度が越冬していますが、その個体数は減少しているといわれています。ハマシギは北半球に広く繁殖分布し、10ほどの亜種に分けられています。そのため、それぞれの亜種がどこからどこに渡っているのかを調べることが、保全上の重要な課題となっています。

山階鳥類研究所では、環境省の委託を受けてシギ・チドリ類の渡り経路の追跡調査を進めています。これまでの研究で、日本国内で越冬するハマシギの多くはアラスカで繁殖する亜種キタアラスカハマシギであることがわかっています(参考資料の2019年5月のテーマトークの報告をご覧ください)。さらに、分布域からはユーラシア大陸で繁殖する別の3亜種(亜種ハマシギ、亜種カムチャッカハマシギ、亜種カラフトハマシギ)が渡来している可能性があることが指摘されています。しかし、ハマシギの亜種による羽色の違いは夏羽でしか明瞭ではないため、越冬期の国内での亜種の識別は容易ではなく、DNAを用いた解析が待たれていました。

国内や周辺地域で捕獲されたハマシギから採集されたサンプルについて、ミトコンドリアDNAのD-loop領域の配列を比較してみると、大きく分けて3つのグループに分けられました。(1)亜種キタアラスカハマシギのグループ、(2)亜種カラフトハマシギと亜種カムチャッカハマシギからなるグループ、(3)亜種カムチャッカハマシギと亜種ハマシギからなるグループです。このうち、国内で越冬していた多くの個体は(1)のグループに含まれましたが、渡り時期には(3)のグループに含まれる個体も見つかりました。(2)のグループに含まれる個体は、今回の解析では見つかりませんでした。

以上のことから、フラッグによる調査で分かっていた結果と同様に、国内で越冬するハマシギの多くは亜種キタアラスカハマシギである可能性が高いことが確認されました。また、亜種ハマシギや亜種カムチャッカハマシギも渡来の可能性があることがDNAによる解析結果からも示唆されました。しかし、今回調べた領域では、そもそも繁殖地で採取された同じ亜種のサンプルの中にも複数の遺伝子のタイプが見つかっているため、亜種についてははっきりとした結論を出すことができなかったとのことです。今後、さらに詳細な遺伝的な解析が進められれば、はっきりしたことがわかるかもしれません。

講演のあとに、遺伝的な解析手法や、亜種キタアラスカハマシギ以外の亜種の越冬する場所などについて、視聴者の皆さんからのご質問をいただき、齋藤さんにお答えいただきました。今回のオンライン講演は、最大同時に87人の方に視聴いただきました。ご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。今回は、主催者側の都合により見逃し配信は行いません。見られなかった方には申し訳ありませんが、ご理解いただけますよう、よろしくお願いいたします。

次回、2022年7月の鳥のサイエンストークは、山階鳥類研究所研究員の小林さやかさんに、日本最東端の島である南鳥島で採集された鳥類標本についてお話しいただきます。配信方法などについては、山階鳥類研究所・我孫子市鳥の博物館ウェブサイトで改めてご案内します。次回もぜひご視聴ください。

参考資料:
2019年5月のテーマトーク「日本に渡ってくるハマシギの亜種はどれ?」
http://strix.in/blog/index.php?itemid=685

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