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▲日本で最も身近な鳥の一つのキジバト

3月19日に、2022年3月のテーマトークを実施しました。これまでと同様にYoutube liveを用いたライブ配信を用いています。今回は、我孫子市鳥の博物館学芸員の望月が「DNAから明らかになったキジバトの進化史」と題してお話ししました。

DNAは生物の設計図であり、鳥類は核DNAとミトコンドリアDNA(以下mtDNA)の2種類を持ちます。この2つのDNAは親からの遺伝の仕方が異なり、核DNAは両親から半分ずつ、mtDNAは雌親から遺伝することが分かっています。またDNAには変異の起こりやすい場所や逆に変異が起こりにくい場所など様々な機能がわかっており、それらの特性を利用して進化の歴史を推定することが可能です。近年行われた進化史の研究の例として、小笠原諸島のヒヨドリの研究やメボソムシクイの分類について簡単に紹介をしました。

キジバトはユーラシア大陸の中央から東側に広く分布する種で、2015年に行われたmtDNAの調査によって遺伝的に大きく異なる2タイプがいることが分かっており、隠蔽種の候補として挙げられていました。しかしmtDNAの2タイプが本当に隠蔽種であるか明らかにするためには核DNAの解析をする必要があります。そこで、国内外のキジバトのDNAサンプルを収集しDNA解析を行いました。サンプルは、本州、南西諸島、北海道、ロシア、台湾、中国、ミャンマーと広い地域から収集を行いました。
その結果、キジバトのmtDNAの2タイプは広い地域で確認されること、核DNAとmtDNAの系統は一致しないこと、キジバトの亜種間には核DNAのマイクロサテライト領域に殆ど遺伝的な差がないことなどが明らかになりました。

この結果から、キジバトは約100万年前に2タイプに分かれたのち、比較的最近(約1万年前)になってからこの2タイプが交雑し、さらに現在の亜種に分かれていったという進化史を推定することができました。
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講演のあとに、隠蔽種が見つかる頻度についての質問や、mtDNAの2タイプを持つ個体間で生態的な違いがあるかどうか、過去に2タイプに分かれた要因についてなどの質疑応答を行いました。

今回のオンライン講演は、最大同時に146人の方に視聴いただきました。ご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。今回のライブ配信は、4月2日(土)まで以下のURLより見逃し配信を行います。
https://www.youtube.com/watch?v=xphFsQPMNkk

次回、2022年4月のテーマトークは、山階鳥類研究所の水田拓さんに、奄美大島のオオトラツグミの生態に関する話題をご紹介頂きます。
配信方法などについては、山階鳥類研究所・我孫子市鳥の博物館ウェブサイトで改めてご案内します。次回もぜひご視聴ください。