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12日14日(土)に、公開シンポジウム「バンディングでわかること−鳥類標識調査の成果と未来」を我孫子南近隣センターの9階ホールにて開催しました。このシンポジウムは、我孫子市で行われた日本鳥類標識協会の2019年度全国大会の一部として行われたものです。また、来年2月1日から鳥の博物館で開催される企画展「バンディング展 ―足環でわかる鳥の渡り―」の連携企画です。

野外で鳥類の研究を行う際には、標識によって個体識別を行うことが重要となります。標識によって、鳥の渡り、回帰性、寿命、繁殖率、個体群の動態など、多くの情報を得ることができます。日本における鳥類標識調査(以下、バンディング)は、1924年に開始されてから、これまでに累計500万羽以上が放鳥されており、さまざまな鳥類の生態が明らかになっています。一方で、標識鳥の回収にあたっては、一般の市民やバードウオッチャーの方々の協力が欠かせないものとなっていますので、バンディングの成果や今後の発展についての理解を深めていただきたいと考え、このシンポジウムを企画しました。

まず最初に、環境省生物多様性センターの𠮷川さんから、バンディングの概要や、成果の公表方法についてお話しいただきました。環境省の行っている生物調査の中で、バンディングが重要な位置を占めていることをお話しいただきました。続いて山階鳥類研究所副所長の尾崎清明さんに、これまで日本におけるバンディングの成果を総括していただきました。カシラダカの減少やアオジの移動など、再捕獲だけでなく、新放鳥のデータからもさまざまな興味深いデータを得ることをご紹介いただきました。

シンポジウムの後半では、バンディングが持つようになった新しい役割である、モニタリングと保全について、それぞれお話しいただきました。山階鳥類研究所保全研究室の仲村昇さんには、標識調査が鳥の個体数の変化を捕える手法としてどのように役立つのかを、ヨーロッパや北米の事例をもとに紹介していただきました。最後に、バードライフ・インターナショナル東京の澤祐介さんからは、絶滅危惧種であるコクガンの渡り研究を通じて、標識調査を保全につなげるかについて、ご自身の調査研究・教育普及活動のご経験をもとにお話しいただきました。

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△質疑応答・総合討論のようす

4つの発表のあとに、会場のみなさんから提出していただいた質問カードをもとに、演者の皆さんに回答いただきました。バンディングに対して持たれていた疑問を解決する良い機会になったと思います。
最後に、それぞれの演者の方から、今後の標識調査の課題や期待することについてお話しいただきました。生物多様性センターの曽宮さんからは、膨大な標識データの解析の強化や後継者の育成が課題であることを、尾崎さんからは、リアルな鳥から情報を得る調査を継続していく努力をすべきであるとのコメントをいただきました。また、仲村さんからは、バンディングの対象種をかすみ網以外の方法で捕獲する鳥に広げること、澤さんからは、環境保全のためにバンディングのデータをどのように活用できるか、各バンダーが考えて実践することが重要であることをお話しいただきました。

当日は、標識大会の参加者78名に加えて、一般の方42名にもご来場いただき、合わせて120名の方に参加いただきました。バンディングのこれまでの成果について知っていただき、これからの発展について期待を持っていただけたものと思います。ご登壇いただいたみなさま、ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。