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8月17日に、2019年8月のテーマトークを開催しました。今回は、山階鳥類研究所自然誌研究室研究員の岩見恭子さんに、「鳥類標本の作り方 ―いろんな標本をつくってみよう―」と題してお話しいただきました。

鳥類に関する標本というと、まずは剥製(はくせい)を想像しますが、そのほかにも部分的な翼、羽毛、骨格、卵、巣、胃内容物やヒナなどの液浸標本など、さまざまな種類があります。山階鳥類研究所のこれらを合わせておよそ8万点の鳥類標本が保管されており、アジアではトップクラスの収蔵数を誇っています。その多くが研究用の仮剥製(かりはくせい)です。

山階鳥類研究所では、一般の方から提供される野外で拾われた鳥の死体、動物園や野生動物保護センター等からの提供資料を合わせて年間約800羽ほどの鳥の遺体資料を受け入れて標本を収集されています。

これらの標本は、同じ場所から何点も集められることがありますが、なぜ沢山集める必要があるのでしょうか? その理由のひとつとして、北海道におけるオジロワシの食物を、標本の羽毛の安定同位体比から調べた研究をご紹介いただきました。100年前に採集された標本と現代の標本を比べてみると、昔に比べて食物の内容や採食域が多様になり、シカの狩猟残渣なども食べるようになった可能性があることが分かったそうです。私たちは過去にさかのぼって標本を収集することはできません。この時代を代表する資料は今保存しておかなくてはならないのです。

続いて、ホールの前に集まっていただき、実物の標本を回覧しながらお話しいただきました。オオミズナギドリやコシジロウミツバメなどの独特な羽毛の臭い、ギンザンマシコの嘴に付いた松ヤニの臭いをかいだり、実物の標本から分かることをご紹介いただきました。

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▲ぬいぐるみを用いた剥製標本の作り方の解説

岩見さんが剥製の作り方を説明するために自作されたぬいぐるみ「かけすちゃん」を用いて、剥製標本がどのように作られるかを分かりやすく説明いただきました。続けて、ニワトリの卵を使って、卵標本の作り方を実演していただきました。卵の側面に穴をあけて60℃くらいのぬるま湯に浸けると中身が効率よく取り出せるそうです。最後に、実物のアカショウビンの翼を使って翼標本をどのように作るかについても実演していただきました。

今回は、34名の方にお集まりいただきました。ご参加いただいたみなさま、お話しいただいた岩見さん、ありがとうございました。