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JBFの1日目、アビスタ会場にて第26回鳥学講座を行いました。今回は「コアジサシ保全活動の現場から」と題して、北村亘さん(東京都市大学講師 / NPO法人リトルターン・プロジェクト代表)にお話しいただきました。

コアジサシは、小形のカモメの仲間で、夏になると南太平洋から日本に渡ってきて繁殖します。かつては日本全国で数多く見られましたが、近年では巣を作る裸地の環境が安定していないことなどから個体数が減少し、環境省のレッドリストでは絶滅危惧種に指定されています。北村さんたちのグループでは、2001年に東京都大田区の森ヶ崎水再生センターの屋上でコアジサシが営巣しているのを発見したのをきっかけに、この場所での保全活動を始めました。

森ヶ崎でのコアジサシの個体数を増加させるために、様々な対策が行われました。何もなかったコンクリートの屋上に土を入れ、生えてくる草本を抜いてコアジサシに好まれる環境が作られました。北村さんたちは、白い貝殻を撒くと地表面の温度が下がり、コアジサシに好まれることを実験によって発見しました。コアジサシは大きなコロニーで繁殖するため、内山春雄さん・我孫子市中学校と協力してコアジサシのデコイを作り、誘引を行いました。また、捕食者であるカラスやネコから守るために、シェルターやカゴによる保護活動も展開したそうです。
こうした様々な保全活動により、ここ数年は森ヶ崎のコアジサシの個体数は1000羽を越え、安定した生息地となりました。現在の日本では最大の繁殖地だろうということです。

こうした保全活動は、市民のボランティアによる協力と、森ヶ崎水再生センター、大田区との協働によって行われています。リトルターンプロジェクトでは、こうした市民科学の取り組みの成功例として、他の団体にもそのノウハウを広めていきたいとのことでした。今後、日本のあちこちで繁殖するコアジサシを保全していくためのネットワークができることを楽しみにしています。

講演会には89名の方に来場いただきました。参加いただいたみなさま、講演を引き受けていただいた北村さん、ありがとうございました。