今日のテーマは、「ルリビタキの茶色い雄と青い雄は争い方が同じなのか」でした。山階鳥類研究所保全研究室支援研究員の森本元さんにお話いただきました。
 ルリビタキのオスは、上面が瑠璃色の美しい羽毛を持つバードウオッチャーに人気の鳥です。一方、メスは地味な茶色です。本州では亜高山帯繁殖しますが、冬になると平地で見かけるようになります。
 ルリビタキの若いオスは、繁殖可能であるにもかかわらずメスのような茶色い羽衣です。このように成鳥の羽衣を獲得するのが遅れる現象のことを羽衣成熟遅延(Delayed Plumage Maturation)と言い、いろいろな鳥の仲間で見られるそうです。
 では、なぜ羽衣成熟遅延が起こるのか?
 今日の話し手の森本さんは、富士山で繁殖するルリビタキが、なわばりを確立するためのオス同士の争いを詳しく観察しました。上面が完全に青くなったオス(青いオス)と繁殖可能だが若いオス(茶色いオス)の争いが、相手の組み合わせでどのように変化するのか調査し、その結果、相手の色のちがいによる争いの頻度には差が無いが、争いのパターンに差があることが分かったそうです。
 つまり、青と青、茶と茶という同じ色同志の組み合わせでは、はげしい直接闘争に発展するのに比べ、青と茶という色の異なるもの同志では、間接闘争の追いかけまでで終わる場合が多いという結果が得られました。
 この結果から、森本さんは、ルリビタキのオスは、なわばり闘争する際に、①実力が分からないあるいは拮抗しているときは、本気を出して争うのに対し、②実力差が事前に予測される場合は、儀式的な緩やかな闘争で済まされていることが分かり、お互いに、怪我等のリスクを避けてなわばりを保持・獲得できるという利益を得ているらしいと考察しています。
 最後にメーテルリンクの青い鳥のお話を例に挙げ、チルチルとミチルが探しあてた青い鳥は、旅立つ前には茶色だった身近な鳥が青くなったものなので、羽衣成熟遅延のルリビタキがよくあてはまるというオチまで付けてくれました。