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 今回は、公益財団法人山階鳥類研究所保全研究室研究員の佐藤文男さんに、「絶滅危惧種クロコシジロウミツバメの生態と保全」をテーマにお話いただきました。
 佐藤さんがこれまで40年間続けてこられた岩手県の三陸海岸の日出島では、クロコシジロウミツバメとオオミズナギドリが繁殖していますが、いずれも地上に巣穴を掘り、繁殖します。体の大きなオオミズナギドリの繁殖数が増加するにつれ、営巣場所をめぐる競争に負けたクロコシジロウミツバメの繁殖数が減少し続け、このままだと島内の個体群が絶滅してしまうとのこと。日本では、三陸沿岸のわずかな島でしか繁殖していない希少なクロコシジロウミツバメを保護するためには、島内での安定した繁殖巣数を確保しなければいけません。佐藤さんらは、クロコシジロウミツバメだけ通ることができる金網で地表を覆い、また地中に巣箱を設置し、オオミズナギドリとの競合を避けることができるようにして保全しています。
 しかし、これを継続し、目的を達成するためには、文化庁や環境省など繁殖地の管理者が保全計画を立案し、実施するようにならなければ実現しません。そのための、保全の指針づくりと提案を行っているそうです。
 今回お話いただいたクロコシジロウミツバメ以外にも、日本ではクロウミツバメ、ヒメクロウミツバメ、オーストンウミツバメ、コシジロウミツバメ、以上5種類のウミツバメの仲間が繁殖しています。この中で、北海道の島嶼で繁殖しているコシジロウミツバメ以外は、全て絶滅の危機にあり、環境省の絶滅危惧種に指定されています。種類によってそれぞれ絶滅の危機に瀕している主要因は異なりますが、その多くは人が持ち込んだネズミによる被害によるそうです。現在、ネズミ被害に対して、環境省による有効な対応策はとられておらず、すでに繁殖個体が消滅してしまった島もあるそうです。殺鼠剤の散布など、待った無しの早急な対策が必要であり、そのための働きかけと準備も進めているそうです。
 一般的にはあまりなじみの無い海鳥が、人知れず絶滅していくということが無いようにしたいものです。