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1月19日に、1月のテーマトークを開催しました。今回は、山階鳥類研究所自然誌研究室専門員でコミュニケーションディレクターの平岡考さんに、「小型ツグミはどこへ行った?〜変化した昔の『ヒタキ科』の分類〜」と題してお話しいただきました。

平岡さんは、日本鳥学会の目録編集委員として日本鳥類目録改訂第7版の編集に携わられました。目録改訂第7版では、DNAの塩基配列による系統関係の研究成果を踏まえた分類が取り入れられ、鳥の分類の単位の大きな見直しが行われました。今回の話題の「小型ツグミ類」もそのひとつです。

かつては、形や生態を元に生物のグループ分けが行われていました。似た形をしている種どうしは、近縁であるだろうという推論に基づくものです。目録6版までの分類体系では、「ヒタキ」と名の付く鳥には、大きく分けて2つあり、ジョウビタキやノビタキなどの地上で餌を採るグループは、アカハラやトラツグミと同じツグミ科に含まれ、キビタキやコサメビタキなどの空中で飛びながら餌を採るグループはヒタキ科に含められていました。前者は長く丈夫な脚を持っているのに対し、後者は短く地上を歩くのには適さない形をしています。前者の地上で餌を採るグループは、「小型ツグミ」と呼ばれていました。

近年になって、DNA配列による系統解析が行われると、意外なことが分かりました。かつて形が似ているので同じだと思われていたツグミ科とヒタキ科の鳥は、それぞれ互いに近いわけではなかったのです。たとえば、キビタキを含むグループは、コサメビタキよりも、ノビタキを含むグループに近いことが分かりました。そのため、かつてはツグミ科とヒタキ科に分かれていた「ヒタキ」と名の付く鳥は、新しい分類体系では新しい「ヒタキ科」として一つにまとめられることになりました。

こうして、地上性のヒタキの仲間も、「小型ツグミ」として区別しなくてもよいようになりました。しかし、地上で餌を採るヒタキの仲間をまとめて扱うのは便利ですので、何か新しい言葉がほしいところです。英語ではヨーロッパコマドリをさす「Robin」やノビタキ類をさす「Chat」などの単語があるのですが、日本語では何かよい名前は無いだろうか、と問いかけられて、このお話を締めくくられていました。

今回は、45名の方にお集まりいただきました。ご参加いただいたみなさま、お話しいただいた平岡さん、ありがとうございました。