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 鳥の博物館の空調設備の工事も無事終了し、4ヶ月ぶりにテーマトークを実施しました。
 小笠原諸島で80年ぶりにアホウドリが繁殖に成功し、ヒナが誕生したことはご存知の方も多いはず。このプロジェクトの中心メンバーの出口智広さん(山階鳥類研究所保全研究室研究員)が、「小笠原での繁殖成功が意味するもの」をテーマにお話くださいました。
 このプロジェクトは、70羽のヒナを伊豆鳥島から小笠原諸島の聟島に移送し、人工飼育で巣立たせ、かつての小笠原繁殖地を復活させようというものです。ここ数年の間に小笠原諸島の媒島、聟島、嫁島で繁殖が確認されました。
 これまでの成果を、出口さんが、DNA分析の専門家や地元の関係者、日米共同プロジェクトチームのアメリカのメンバー、プロジェクトチームの統括者とともに、共著でアニマル・コンサベーション(ロンドン動物学会の学術雑誌)に発表しました。今日は、その内容について分かりやすく解説してくださいました。
 これまで鳥島産まれ、聟島育ちのヒナの一定数が聟島に戻り繁殖をはじめています。また、同じ小笠原諸島の媒島や嫁島でも繁殖が確認され、確実に繁殖個体数は増えています。今では安定した大きなコロニーとなった鳥島の初寝崎コロニーの復活プロジェクトでは、最初の10年間は繁殖個体数が大きく増えませんでした。10年以上経て、やっと指数関数的に個体数が増えています。小笠原諸島の場合もこれになぞらえると、あと数年経て、ぐんと繁殖個体数が増えることが期待できそうです。
 プロジェクトの最新情報と出口さんらの論文の詳細は、山階鳥類研究のHPから次のURLを参照ください。
http://yamashina.or.jp/blog/2016/11/albatross_paper_anim_conserv/
 出口さんは、これまで、さまざまな生き物の保全・復元に対して、再導入という方法が多くの場合盲目的に行われてきた事を挙げられ、さらに活動の半分くらいは、プロジェクトのその後の評価が成されておらず、成否が不明であることを指摘されました。
 小笠原のアホウドリ再導入のプロジェクトを今回報告したことは、今後のモデルケースとなる意味でも大切であることが分かりました。
 なお、こうした論文の評価について、従来の引用数を指標としたインパクト・ファクトを重要視する方法から、近年ではSNSで話題に取り上げられる頻度やマスコミ報道の頻度なども加えたさまざまな要素を統合したオルトメトリクスという新評価の方法もあるということが紹介されました。そして、この評価方法では、今回発表した論文が上位1%にランクづけられ、各方面でいかに重要視されているかが分かりました。